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法と常識の狭間で考えよう by ビートニクス
http://beatniks.cocolog-nifty.com/cruising/2009/11/post-d21e.html
2009.11.01
刑事事件における最高裁判所の役割について考える
2009年10月19日、最高裁判所第二小法廷(中川了滋裁判長)は、大阪市内のホテルで警護役の組員二人に拳銃を所持させていたとして、銃刀法違反(共同所持)の罪に問われた山口組の元若頭補佐の被告人について、被告人を無罪としていた第一審、第二審の判決を破棄し、審理を大阪地裁に差し戻す判決を言い渡した(共同通信の記事)。
最高裁判所の先例としては、山口組の六代目組長が銃刀法違反(共同所持)の罪に問われた事件で、東京地裁、東京高裁で有罪判決が出され、2003年5月1日、最高裁判所が、弁護人の上告を棄却して確定した事件(スワット事件)が有名である。
この事件では、暴力団組長である被告人が、自己のボディガードらのけん銃等の所持について直接指示を下さなくても、これを確定的に認識しながら認容し、ボディガードらと行動を共にしていたことなどの事情の下においては、被告人は拳銃所持の共謀共同正犯の罪責を負うと判断したものであり、共謀共同正犯の成立する範囲を拡張するものであるとして批判の的となった判例である。
ところが、今回の事件は、大阪地裁及び大阪高裁の審理において、この最高裁判決の枠組みを前提としても、認定される事実関係の下では、およそ共謀共同正犯は成立しないと判断されていたのである。
ところが、検察官の上告を受けて、最高裁判所第二小法廷は、「(敵対的な団体から)拳銃によって襲撃されると十分認識し、その対応のために警護させていた。二人が拳銃を持っていることを知っていた上で当然のことと受け入れていたと推認するのが相当」であると指摘して、共謀を否定した第一、二審の判決には「重大な事実誤認がある」と判断した。
すなわち、最高裁は、既に控訴審までの審理を通じて確定していた事実を、何ら新たな証拠調べもしないで覆して、その新たな事実認定を前提として、共謀共同正犯の成立を認めたのである。
これによって、スワット事件で拡張された共謀共同正犯の範囲はさらに一層拡張され、いかなる場合に共謀が認定されるかについての基準は曖昧となり、捜査機関による恣意的な検挙を容認するものと言わなければならない。
最高裁判所は基本的には法律審であり、著しく正義に反する重大な事実誤認がある場合に限り、職権により原判決を破棄することを認めている。
これは、あくまでも、最高裁判所が、被告人に対する後見的な立場から、無辜の冤罪を救うような場合に発動されるべきものであって(防衛大学教授の被告人に対する強制わいせつ被告事件についての2009年4月14日最高裁第三小法廷判決の無罪判決はまさにそのような事案であったと言える)、今回のように無罪になった被告人については発動されるべきではない。
今回、検察官は、上告理由として、暴力団というのは特別の組織であることを大きく掲げていた。これは、一部の組織に対する法律の適用を特別視するものであり、法律適用上の差別を認める考え方である。最高裁の今回の判決は、表向きはそのような論理を展開していないが、実質的には、法律適用上、一部の団体を特別視し差別することを認めたに等しいものである。
今回の判決が、第一、二審の判決を破棄して、そのような差別を認める判決を出したことは極めて憂慮すべき事態と言わなければならない。「法の番人」たる最高裁の役割や機能という観点から見て、最高裁が法の解釈を大きく超えて、立法活動しているに等しいものであり、その役割や権限を逸脱しており、今回の判決は大変に問題があるものである。
私たちは、改めて、最高裁判所のあり方についての議論を深め、現在のような最高裁のあり方について異議を唱える必要がある。