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アジア首脳外交に隠された米中主導権争い(英フィナンシャル・タイムズ紙)
http://www.asyura2.com/09/senkyo74/msg/292.html
投稿者 Orion星人 日時 2009 年 11 月 01 日 10:08:17: ccPhv3kJVUPSc
 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2042

(2009年10月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

タイ・フアヒンで開かれた東アジアサミットでアジア地域機構の構築が議論された〔AFPBB News〕

 アジア地域で毎年開催される首脳会議が、出席者の血を沸き立たせるために用意されることはめったにない。

 だが今年は、いまひとつ冴えないコミュニケに覆い隠されているものの、中国と米国が自らの影響力拡大を目指した争いを繰り広げている。その展開次第では、アジア地域の大部分で、人権や民主主義の面での進歩が妨げられる恐れがある。

 問題は、米国とアジアの友好国が、この地域の多国間の枠組みにどの程度直接的に参加できるか、である。アジアにはそうした枠組みがいくつもあるが、本当に重要なのは2つだけだ。

 1つは、10カ国が参加する東南アジア諸国連合(ASEAN)である。ASEANは中国、日本、韓国を加えたサミット(いわゆるASEAN+3)や、そこにインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた計16カ国の東アジアサミットを毎年開催している。

 もう1つは、アジア太平洋経済協力会議(APEC)だ。こちらは20の国と香港が参加する、比較的緩やかな枠組みである。

 これらのサミットは大した業績を残していない。確かに、ASEANは貿易の自由化で一定の成果を上げてきたし、APECが生み出した「ビジネス・トラベル・カード」は、ビジネスパーソンが空港の入国審査で待たされる時間を短縮するのに役立っている。

【アジア地域機構から締め出されそうになる米国】

 しかし、首脳会議の大半はほとんど茶番に等しい。例えばミャンマーの軍事政権、ベトナムとラオスの共産党政権、絶対君主制のブルネイが、基本的自由や人権の促進、民主主義の強化なども謳ったASEAN憲章に喜んでサインをしたのは、実施を強制されることはないと分かっていたからだ。

 米国の関与が強まれば、民主化で後れを取っているアジア諸国がこうした問題を直視せざるを得なくなる可能性がある。しかし米国は今、中国の策略により、アジア地域の統合を拡大・深化しようという計画から締め出されそうになっている。

米国には主たる選択肢が2つある。まず、日本が東アジアサミットを「東アジア共同体」に変える構想を提案している。

 共同体と言っても、欧州連合(EU)と比較するのは無理がある。アジア諸国の政治的な統合は、もし可能だとしても、あと数十年間は実現し得ない。

 当の日本も、通貨統合を目指すという案を静かに引っ込めている。ただ、東アジア共同体を創設すれば、金融・財政政策の調整が可能になり、参加国の顔ぶれにもよるが20億〜30億の人口を擁する自由貿易圏が誕生するとの主張は続けている。

 この共同体も人権擁護の面で前進する原動力になり得るが、そのためには恐らく、首脳会談に米国が参加して後ろ盾になることが必須条件になるだろう。

 鳩山由紀夫首相は先週、ASEAN関連の一連の首脳会談で自らの構想を積極的に売り込んだ。しかし、ここが肝心なところだが、米国も参加すべきだという提案は引っ込めた。

 一方、オーストラリアのケビン・ラッド首相は「アジア太平洋共同体」の構想を提唱した。こちらはAPECをベースにしたものらしく、米国も参加できる。サミット会場にいた各国首脳によれば、中国の温家宝首相は対案を示さず、日本の構想とオーストラリアの構想のどちらを支持するでもなく、両方を議論することに賛成だと語るにとどめたという。

【中国は米国やオーストラリアを排除する共同体構想を推す?】

温家宝首相は、態度を明確にはしなかったが・・・〔AFPBB News〕

 しかし外交筋の話によれば、中国は内々に、ASEAN+3をベースにした共同体構想を推しているという。こちらの構想では、米国はもとより、民主主義を標榜するインドや、オーストラリア、ニュージーランドも排除されるという。

 中国とて、状況を完全に掌握しているわけではない。そもそも、1967年のASEAN設立には、中国の台頭に怯えた比較的小さな国々が身を寄せ合うという意味合いもあった。

 インドネシアやフィリピン、シンガポールは、中国の経済成長がもたらす副次的な問題と折り合いをつけながら、米国との友好関係を維持している。日本も、中国がアジアの共同体を牛耳る事態を看過するとは考えにくい。

 とはいえ、中国にはいくつか強みがある。ほかのアジア諸国からモノを大量に輸入して地域経済の回復に貢献しているのは、米国ではなく中国だ。

 年率8%の経済成長を遂げているのも中国であり、チェンマイ・イニシアチブ(CMI)による域内通貨スワップ協定や各種インフラ整備計画といったASEANのプロジェクトに多額の資金を提供しているのも中国である。

 中国は既に、ASEANと貿易協定を結ぶ交渉を完了させている。さらに、日本や韓国を含んだ形の、同様の協定を結ぶ議論も行われている。それが実現すれば、中国が主導したいと願うような、固く結びついた東アジア共同体の基盤になるだろう。

【米国抜きの構想が根づく前に行動を】

11月のアジア歴訪で、支援を取りつけられるか?〔AFPBB News〕

 従って米国としては、米国抜きの地域共同体をつくる構想がアジアに根づく前に行動を起こさねばならない。バラク・オバマ大統領は11月にアジアを歴訪する際、シンガポールでASEAN首脳と会談したいと申し入れている。

 これは東南アジアの重要性を遅まきながら認識したという意思表示だと見られているが、この会談は大統領にとって、アジア諸国の共同体への米国参加に支援を取りつけ、中国による米国排除の試みを阻止するまたとない機会となる。

 長期的には、このアジアの共同体への参加は、幾多の貿易イニシアチブにも優る大きな意味を持つことになるだろう。

By Kevin Brown
 

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