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[Compliance Communication] (09年10月27日号)
郷原センター長、総務省顧問に就任
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このたび総務省顧問に就任した郷原センター長からのメッセージをお送りします。
なお、同メッセージ中でも触れている、当センターの機関誌「コーポレートコンプラ
イアンス」の最新号「メディアの倫理を問う」(講談社)の発刊は10月30日ですが、
以下のアマゾンのサイトでもご購入できますのでご覧下さい。
【郷原センター長メッセージ】
http://www.comp-c.co.jp/pdf/soumusyo20091027.pdf
【Corporate Compliance 第19号〜メディアの倫理を問う〜】
http://www.amazon.co.jp/dp/4063793893/
総務省顧問への就任について
名城大学総合研究所教授・コンプライアンス研究センター長
郷 原 信 郎
10月23日付けで、総務省顧問を拝命しました。
コンプライアンスを、「法令遵守」ではなく、「社会的要請への適応」ととらえる考え方に基づいて独自の活動を行ってきた当センターの活動の成果を、総務省の担当領域の中で活用することが求められているのだと思います。
総務省の所管業務は広範囲にわたりますが、従来の当センターの活動と特に関係が深い問題として、次のようなものがあります。
第一に、放送事業者のコンプライアンスに関する問題です。マス・メディアによる報道の「歪み」が、法令等の「遵守」による「思考停止」と相まって、日本社会で発生している様々な問題について誤解を生じさせていることは、拙著「思考停止社会」(講談社現代新書)でも詳細に述べたとおりですが、それが特に顕著に表れるのが企業不祥事に関する報道です。その典型事例である不二家問題に関するTBS「朝ズバッ!」のチョコレート再利用疑惑報道をめぐる問題については、不二家信頼回復対策会議報告書の中で捏造の疑いを指摘し、BPO放送倫理検証委員会への審理要請、衆議院総務委員会での放送法改正の審議における参考人意見陳述など、放送事業者のコンプライアンスの在り方を追及してきました。その経験を活かし、原口総務大臣が創設の方針を明らかにしている「通信・放送委員会(日本版FCC)」の構想の中で、放送事業者のコンプライアンスの確立のための施策をどう位置づけていくか、などについて助言していきたいと思います。
なお、申すまでもないことですが、私は、放送メディアに対する公的規制の強化論者では決してありません。放送法の理念である「放送事業者の自主独立」を確保しつつ、誤った放送、歪んだ放送による権利侵害や社会的弊害を防止していくために、放送事業者としての自主的コンプライアンスが不可欠だということです。放送をめぐる不祥事が公権力の介入に結びつかないようにするためにこそ、放送事業者の自主的コンプライアンスが求められるのです。
この問題については、今月30日発刊予定の当センターの機関誌コーポレート・コンプライアンス最新号「メディアの倫理を問う」(講談社)で取り上げています。
第二に、地方自治体の公共調達に関するコンプライアンスの問題です。私は、検事時代の経済犯罪捜査の経験も活用して、日本の公共調達に蔓延してきた談合を個別の違法行為、犯罪ではなく「非公式システム」ととらえる観点から脱談合システムの構築について様々な分析を行ってきました。そして、2006年ころからゼネコンを中心に談合構造が解消され、公共工事受注をめぐる価格競争が激化する中で、脱談合システムの構築に関して、和歌山県公共調達検討委員会、山形県公共調達改善委員会、そして、先週、報告書を公表した東京都の入札契約制度研究会(本年中には京都府公共調達検討委員会
の報告書も公表の予定です。)など、多くの地方自治体での入札契約制度とその運用についての検討に関わってきました。その中で、一貫して強調してきたのが、入札契約制度の中に、「社会の要請に応える」という意味でのコンプライアンスの視点を導入すること、そして、調達制度の構築・運用に関する発注者側のコンプライアンス・スキルを向上させていくための人材を活用し育成することの重要性を訴えてきました。
民主党政権において、地方分権、地方自治体の自立をめざす政策が指向される中で、自治体の公共調達の在り方についても抜本的な改革が求められています。地方自治体が公正で信頼性の高い公共調達制度の構築・運用できるようにすることは、地方自治体に関する問題を所管する総務省にとっても重要な政策課題だと思います。
そして、第三に、政治資金規正法をめぐる問題です。
今年3月初め以降、小沢氏秘書の政治資金規正法違反事件に関して、検察捜査を批判してきましたが、そもそも、このような問題が発生する根本的な原因は、政治資金規正法に関する制度的な枠組みが整備されていないことにあります。政治団体や政党には政治資金収支報告書の提出が義務づけられていますが、この法律を所管する総務省や都道府県選挙管理委員会の側には、報告書については形式的な審査権しかなく、内容面の真実性の確保はすべて報告書作成者側に委ねられています。そして、その内容に虚偽があることが判明した場合のサンクション(制裁)は、罰則を適用して刑罰を科すという、極端な手段しかなく、その適用がすべて検察当局の現場の裁量に委ねられているというのが現状です。
このような政治資金規正法の法執行の制度に大きな問題があることは、政治資金問題第三者委員会報告書でも指摘しました。日本の政治資金に関するルールを機能させ、政治とカネの問題についての国民の不信を払拭するためにも、政治資金規正法の法執行の在り方について抜本的な検討が必要だと思います。
ただ、鳩山首相の政治資金規正法違反事件についての東京地検の捜査が継続中で、小沢氏秘書の政治資金規正法違反事件の公判審理も今年12月に始まる予定だと報じられています、これら捜査・公判への影響という面から考えると、政治資金規正法問題についての制度の在り方の検討を現時点でただちに始めるのは適切ではないように思います。捜査・公判の推移を考慮し、時期を見て検討を始めることになるのではないかと思います。
企業で言えば総務部に当たる総務省は、コンプライアンスを所管する組織と言ってもよいと思います。その所管業務には、これら以外にもコンプライアンスに関連する様々なものがあります。
政権交代の一つの大きな要因ともなった日本郵政の問題も、いかなる社会的要請に、いかに応えていくのか、そのための組織の構築をどうしていくのかという明確なビジョンもないまま、「郵政民営化」という漠然としたスローガンだけで進められてきた、これまでの同社の活動を、コンプライアンスの面から検証し、今後の日本社会の要請に最もバランス良く応えられる組織として再出発することが求められているのだろうと思います。
「法令遵守」から脱却して真のコンプライアンスをめざしてきた当センターの取組みを、「国家のコンプライアンス」の確立に向けての総務省の取組みに活用できるよう頑張りたいと思います。
皆様の一層のご指導・ご支援をよろしくお願い致します。