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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2005
(英エコノミスト誌 2009年10月24日号)
米国は最大のライバルである中国との交渉に、今よりずっと自信に満ちた態度で臨むべきである。
バラク・オバマ米大統領は7月にワシントンで開催された「米中戦略・経済対話」の開会式で、孟子の言葉を引用した〔AFPBB News〕
西側の人間が中国を相手にする時に、中国の古典から引いた箴言をスピーチに盛り込むというつまらない伝統がある。
バラク・オバマ米大統領は今年7月、中国と米国の指導者らを前に、孟子のありきたりな言葉を引用しただけでなく、中国人バスケットボール選手、姚明(ヤオ・ミン)のもっとパンチの効いた言葉まで引っ張り出した。「チームの中の新人であれ古参であれ、互いに適応するには時間が必要だ」というものだ。
中国共産党の政権奪取によって断たれた米中の国交が回復してから既に30年が経つが、両国はまだまだ適応を必要としている。
問題の核心は、米中関係がどこに向かうかについて、双方に根強い疑念が存在しているところにある。米中は多くの点で寝床をともにしている。両国の経済は次第に絡み合うようになり、特に過去10年間はその傾向が強まっている。米国は世界一の債務国であり、その米国に最も多く貸し付けている債権国が中国だ。
気候変動から景気回復に至るまで、世界が直面する多くの問題を解決するには、中国と米国の協調が欠かせない。
【プルシアン・ブルーとチャイニーズ・レッド】
それにもかかわらず、両国の関係には新たな冷戦、さらには武力行使を伴う戦争の懸念がつきまとう。ワシントンで政治にかかわる米国人の中には、中国を「新たなプロイセン」と呼ぶ人もいる。
中国は急激に軍事力を増強しており、アジアの平和(および台湾の主権)を守る擁護者としての米国の地位に挑む可能性さえある。中国は予告なしで同国初の空母を建造しようとしているが、中国軍司令官はしばしば、米軍司令官と話をすることさえ拒む。
戦略的な競争の根底にあるのが、中国の経済的な台頭である。中国企業は西側諸国が敬遠するアフリカや中南米の政権にすり寄り、これらの地域で「植民地化」を進めている。中国は巨額の外貨を保有し、格安な取引を嗅ぎ回っている。これはつまり、今後数年で中国による西側への投資が急拡大するということだ。
そして何より、中国は米国債を8000億ドルも保有しており、米国経済に対する生殺与奪の権を握っているに等
2つの理由から、両国間の緊張は今後数年でさらに高まっていくだろう。第1の理由は、2012年に台湾と米国、そして中国共産党の全国人民代表大会で選挙という政治的に重要な転機が訪れることだ。これは避けて通れない問題である。
そして第2の、もっと一般的な理由は、国力の認識に対する見直しが進んでいることだ。現在、中国と米国をG2とする議論がある。これは世界における両国の影響力がほぼ等しいことを示唆している。しかし、本誌(英エコノミスト)が特集記事でも論じているように、これは誤った認識であり、危険な誤解である。
為替市場のレートで換算すると、中国の経済規模はいまだ米国の3分の1に満たない。1人当たりGDP(国内総生産)は米国の14分の1しかない。両国間のイノベーション(技術革新)の差は途方もなく開いたままだ。米国の防衛予算は依然として中国の6倍ある。
米国債については、中国に売却という選択肢はない。ドルが下落すれば、中国自身の経済が打撃を受けるためだ。さらに、米国の消費者が支出を減らす一方で、中国では景気刺激策が消費を押し上げているため、政治的に面倒な存在である巨大な貿易不均衡は縮小しつつある。
こうした状況下で中国が対外的な経済拡大をやり過ぎれば、折しも米国の失業率が痛々しいほど高い時に、保護主義に拍車をかけてしまう危険がある。
中国では年間数万件の抗議活動が起きている(写真は今年5月、北京郊外の村で農地の地代を巡って相手企業の社屋前で抗議の座り込みを行う村民ら)〔AFPBB News〕
地政学的な力に関しては、中国は米国に挑むほどの勢力もなければ、その意図もない。中国の指導者たちは国際舞台で誇らしげに振る舞っているが、依然として胸の内を占めているのは自国内でくすぶる不満だ。中国では毎年、何万件もの抗議行動が起きている。
経済がこれほど発展しているにもかかわらず、ありとあらゆる緊張――社会的、文化的、世代的、さらには宗教的なものまで――は政権を悩ませ続けている。中国政府がこれほど頻繁にナショナリズムに訴える1つの理由も、ここにある。
従って、中国に対する米国のアプローチが米国自身の不安感に突き動かされるということは、奇妙であり、間違っている。
極端に単純化して言うならば、危険なのは、不安に駆られた米国が中国に対し、経済について、とりわけ貿易について、厳し過ぎる態度で臨むことであり、その一方で人権について十分に厳しくなれないことである。中国製のタイヤに関税を課すというオバマ大統領の愚かな決断は、米国の保護貿易主義者に危険な励ましを送ってしまった。
米国の失業率は10%に向けて容赦なく上昇しているため、議会に対しては今後、中国の輸出品と過小評価された人民元への自滅的な攻撃を強めさせようとする圧力が高まるだろう。こうした策は、経済学の観点からはいただけない。米中どちらも貿易戦争から多大な損失を被るためだ。
11月に初の訪中を控えているオバマ大統領にとって、犠牲にしてはならない米国の1つの価値観が経済的自由だとすれば、もう1つ犠牲にできない価値観は、個人的自由だ。中国が力を強めているからといって、同国の権威主義を容認する理由にはならないし、人権は都合のいい時だけ使う交渉の切り札でもない。
また、オバマ大統領が世界経済の修復や気候変動の緩和で中国の助けを必要とするからといって、自由世界のリーダーが政治体制への批判を控えるべきだということにはならない。
10月に訪米したダライ・ラマとのワシントンでの会談を避けたことは、11月に大統領を迎える中国に対する不要な気遣いだった。自国でのイメージアップを図る中国共産党は、オバマ大統領と同じくらい11月の大統領訪中の成功を願っているのだ。
【同床異夢――そして一方の力が勝っている】
もっと自信に満ちたアプローチがある。最終的にどちらの政治体制が強いかに賭けるのである。今のところ、気候変動や金融危機、新型インフルエンザの流行初期への中国の対応は、国際的に称賛されている。とはいえ、中国の対応には、権威主義的な体制が染みついてもいる。
例えば、環境問題に関しては、もし中国が民主的な議論の厳しさにさらされていたなら、行動はもっと遅かったはずだ。中国はその体制のおかげで、莫大なリソースを動かし、政治的に難しい決断を下すことができる。
しかし、気候変動の問題で効果的かつ長期的な対策を講じるには、問題に対する一般国民の理解と、環境技術を持つ外国企業が盗用を心配せずに技術移転できるような法的環境が必要となる。中国はこの両方を欠いている。
10月1日に行われた軍事パレードは、中国の驚異的な力を見せつけると同時に、隠れた弱さを露見した〔AFPBB News〕
中国政府は10月1日、北京で戦車やミサイルのパレードを行い、驚異的な力を誇示したが、その裏には弱さが隠れていた。同じ日、抗議行動への懸念から、パレードから観客が締め出されていたことにも、その弱さは表れている。
中国の社会的緊張は、国が豊かになっていくのをよそに、今後も高まっていく可能性が高い。中国が最近日常的に行っているような活動家の投獄は、永続的な解決にはならない。
オバマ大統領は北京で活動家たちに会い、自分の目で確かめてみるべきだ。それで中国政府が怒りを爆発させても、放っておけばいい。