企業利益擁護 の「公益委員」 十月十五日厚労省で、労働政策審議会(労政審)労働力需給制度部会が開かれ、労働者派遣法改正に向けた審議が本格的に始まった。この審議開始を前に、同日午前八時三十分から、「労働者派遣法の抜本改正を求める共同行動」による厚労省前行動が行われた。この行動は急きょ呼びかけられたものだったが、早朝にもかかわらずナショナルセンターを超えたさまざまな労働組合を中心に数十人の労働者がかけつけ、現実を直視した審議を行い、派遣法抜本改正に道筋をつける答申を出すよう、怒りを込めた訴えを霞ヶ関に響かせた。 なぜ怒りなのか、緊急の行動だったのか。 今回の労政審は、政権交代後の初の労政審として、雇用の不安定化やワーキングプアなどの現実を踏まえその改善をはかる審議を、との長妻新厚労相の諮問の下に、十月七日からスタートした。ところが、この諮問に対する最初の労政審論議は一言で言ってまさにひどいものだった。使用者側委員のインチキさは端から分かっていた。ところが七日に開かれた職業安定部会では、一部の公益委員からも、国際競争への配慮の必要などを理由に、登録型原則禁止に異議が挟まれた。果ては、「製造業派遣の禁止は職業選択の自由を奪う」などという、聞き間違えかと疑うような妄言を吐く公益委員まで現れている。 派遣で仕事に就いたとしても、それで職業経験を積むことなどはまったく保障されず、職業を得たことにはとうていならないことは、既に明々白々な事実として明らかになっている。実際、正規雇用を求める派遣労働者は、派遣で働いた経験を職歴とは見なさない企業経営の姿勢に苦しめられている。正規雇用を拒否することで労働者に派遣労働を強制し、若者たちの職業選択に道を閉ざしている者は、まさに使用者、なかんずく大企業そのものなのだ。これほど明白な事実から目をそらし、あくまで黒を白と言いつのる者が「公益委員」を名乗るとは聞いてあきれる。自・公政権が任命した公益委員の質の悪さは度を超している。空前の大失業と生存そのものが脅かされるような派遣労働者、非正規労働者の過酷な現実を前に、このようなためにする空理空論の横行はもはや許されるものではない。 改正反対派の 抵抗打ち砕け 当日の行動はそれ故、このような労政審に労働者民衆の怒りの声をたたきつけるものとして呼びかけられた。安部誠全国ユニオン事務局長を皮切りに、井上久全労連事務局次長、遠藤一郎全労協常任幹事、小谷野毅全日建運輸連帯労組書記長、生熊茂美JMIU委員長が次々とマイクを握る。 まず、先の公益委員発言に対する、そして派遣法改正になおもエゴイズムむき出しに抵抗をやめない資本の策動に対する、まさに怒りをたぎらせた糾弾。この中では、公益委員とされている者の中には、派遣労働原則自由化の時期に厚労省職業安定局長の任にあった者まで任命されていることも明らかにされた。このような人物は文字通り当事者そのもの、第三者であるべき公益委員の資格などない。 そしてもちろん、失業と生活破壊が既に昨年を上回り、各地の炊き出しの列が倍増している現実、したがって政府の責任による失業対策、貧困対策、並びに派遣法の抜本改正が一刻の猶予もならないことが、強く訴えられた。加えて、選挙結果に示された新自由主義拒絶の民意を覆す権利など、労政審にはないことも指摘された。 その理のなさがすぐ分かるような先の哀れを催す公益委員の貧困な議論は、逆に言えば、派遣法改正反対派の追い詰められた姿をも示すものだ。社会を揺り動かす迫力の下に労働者民衆の声をとどろかせることが決定的に重要となっている。そしてそれは可能だ。十月二十九日の日比谷集会の意味はまさに重大となった。当日の行動でも最後に、十月二十九日日比谷に大結集し、労働者民衆の怒りと要求を、派遣法抜本改正実現に向けた決意を、今こそ満天下に示そうと呼びかけられた。 10・29日比谷集会を大成功させ、労政審を舞台とした改正反対派の空しい抵抗を粉みじんに破綻させよう。 (谷)
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