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2009年10月18日 (日)
鳩山政権はマクロ政策運営の指令塔を確保せよ
マスメディアの鳩山新政権攻撃が続いている。最大の攻撃対象は2010年度予算編成である。予算編成に関してマスメディアは三つの要求を提示している。
@2010年度の財政赤字を2009年度比で縮小すべきこと
Aマニフェストに示した政策を実行すべきこと
B雇用の悪化に対して十分な政策対応を示すこと
の三つだ。
しかし、よく見るとこの三つの要求は内容として矛盾を来している。支離滅裂な要求である。
まず、2010年度予算をどのように設計すべきであるのかとの問題。
2009年度予算は補正後ベースでみると、予算規模103兆円に対して税収見積もりが46兆円である。57兆円の歳入不足=財政赤字が計上されている。このうち44兆円が国債発行で賄われる。13兆円は埋蔵金利用などの「その他収入」で賄われる。
2010年度の概算要求規模が95兆円を超えた。2009年度当初予算88兆円を超えたことが問題とされている。しかし、2009年度の日本経済に影響を与える国家予算は補正後ベースの103兆円であり、88兆円は現時点で意味を失っている数値である。88兆円ではなく103兆円と比較して予算計数が問題にされなければならない。
麻生政権は補正予算で14兆円もの巨額を投じたが、本来、国家予算は本予算に計上すべきものだ。補正予算では中長期の視点に立った骨太の政策を実行できないことが問題とされてきた。補正予算が意味の薄いコンクリート投資、役所の焼け太りに利用されることが問題とされてきた。
2010年度予算を強度のデフレ予算にしないためには、支出規模で2009年度補正後の103兆円を大幅に下回らせないことが必要である。最終的に100兆円規模の予算規模が必要となるなら、この規模の予算規模を本予算で確保することが賢明である。90兆円規模の本予算を編成し、10兆円規模の補正予算を追加で編成することは、中長期の視点に立った予算編成を妨げるものだ。
「B雇用の悪化を防ぐ政策対応」が求められているが、財政活動のマクロ経済に与える影響は、第一義的には、政府支出と税収の差額=財政赤字の増減で測られる。極端に単純化して言えば、財政赤字の増加がGDP増加要因、財政赤字の減少がGDP減少要因になる。
したがって、「@の財政赤字減少の要請」と、「Bの雇用の改善政策の要請」とは、根本的に矛盾するのだ。
2009年度は103兆円の支出で税収見積もりが46兆円、両者の差額は57兆円だ。しかし、税収見積もりが40兆円に下方修正されれば、差額は63兆円に拡大する。
2010年度の税収見積もりを仮に38兆円とすると、支出規模が101兆円を上回らなければ、2010年度予算はGDPを縮小させる「デフレ予算」ということになる。概算要求の95兆円はGDPを1%以上減少させる強度の「デフレ予算」をもたらす概算要求なのだ。
民主党が「Aのマニフェストに提示した公約を実現」するには費用がかかる。民主党は選挙公約で、政府支出の無駄削減でその財源を確保するとしてきた。マスメディアは2010年度に直ちにこの公約を実現することを迫っている。
しかし、天下り廃止や無駄な公共事業削減などによる支出削減には一定の時間が必要だ。また、上述したように、2009年度当初予算をベースにして、新規施策の支出規模に見合う規模の歳出削減を行なえば、2010年度予算は超緊縮のデフレ加速予算になってしまう。
これらを総合して考えると、2010年度当初予算に新政権の新規施策をすべて盛り込み、当初予算規模を100兆円規模に拡大して編成することが適正ということになる。国債発行額は50兆円規模が適正ということになる。
国家予算において税収が支出規模の半分に満たない事態は異常であり、中期の視点で財政バランスを改善しなければならないのは当然だ。しかし、足元の財政収支悪化の最大の要因は、「100年に1度」と言われる経済危機が発生し、麻生政権が25兆円の国債発行額を一気に44兆円に拡大したことに原因がある。
より正確に言えば、2009年度の税収見積もりが6兆円下方修正されるなら、国債発行額は麻生政権によって50兆円に達するのだ。
財政活動の実体経済への影響は、あくまでも財政赤字、あるいは国債発行金額の前年度比増減で測らなければならない。麻生政権が国債発行額を50兆円に拡大し、財政赤字を63兆円に拡大させてしまった以上、そこでバトンを引き継いだ鳩山政権は、この財政赤字を当面は継続せざるを得ないのだ。
それにもかかわらず、マスメディア攻撃の策謀に嵌(はま)り、2010年度予算を超緊縮予算=超デフレ予算で編成すれば、そのツケは日本経済の再悪化という形で必ず表れてくる。1997年度の橋本政権、2001年度の小泉政権の政策大失敗を繰り返すことになる。そうなれば、2010年夏の参議院選挙での与党勝利は雲散霧消する。
鳩山新政権の行政刷新相である仙谷由人氏、財務相の藤井裕久氏は、財務省の財政再建原理主義に近い政策運営の感覚を保持していると見られる。鳩山新政権が財務省主導の財政再建原理主義路線に籠絡(ろうらく)されるなら、新政権の基盤は根本から揺るがされることになる。
現時点の鳩山新政権は、マクロ経済政策を的確に指揮し得る優れた司令塔を欠いている点に最大の弱点がある。適正な経済理論分析を踏まえて、財務省の財政再建原理主義を制御できる優れた司令塔を早急に確保することが不可欠である鳩山。
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