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下のコピーには図が表示されていないので、元記事を読むことをお勧めします。
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10307126783.html
2009-07-25 17:42:33
「小さな政府」が財政赤字と貧困を拡大する
テーマ:ワーキングプア・貧困問題
小泉構造改革のときによく使われた言葉といえば、「小さな政府」「官から民へ」を思い出します。2001年の小泉内閣誕生から8年経過し、麻生内閣による「経済財政改革の基本方針2009」(いわゆる「骨太の方針2009」、6月23日閣議決定)では、「『官から民へ』、『大きな政府から小さな政府へ』といった議論を超えて、『安心社会』の実現に向けて無駄なく『機能する政府』への変革や、企業・NPO・地域などの参加と役割・責任分担による新たな『公』の創造を国全体の課題として位置づけ直すことが必要である」と明記せざるをえなくなりました。
2001年から昨年までの「骨太の方針」には、言葉使いは様々ですが、必ず「小さな政府」をめざすという趣旨の基本方針が入っていました。ところが「骨太の方針2009」では、「小さな政府」をめざすとは言えず、「安心社会」の実現に向けて「機能する政府」へ変革し直す必要があると言わざるをえなくなったのです。このことは、従来の「小さな政府」路線によって、「機能しない政府」が作り出され、「安心できない社会」を到来させてしまったということを、政府自身が認めた証左だと私は思います。(かといって、具体的な方針になると、国家公務員の「新たな定員合理化計画」等を進めると明記していますので、根本的に「小さな政府」路線を反省しているわけではなく、実際のところは、現在の貧困と格差が社会問題化する中で、なお「小さな政府」路線を進めると表向き言えなくなってしまっただけだとも言えますが。まぁどっちにしても「小さな政府」というスローガンは有効性を失ってしまったわけです)
このブログでも何度も指摘してきたように、日本は昔から極端に「小さな政府」です(※過去エントリー「国家公務員の賃金は民間よりかなり低い」 参照)。「大きな政府」と言える部分があるとすれば、大型公共事業などに莫大な税金を投入してきた「開発主義国家」と表現できるところだけです。もちろん、「開発主義国家」の構造として生み出された政治家とキャリア官僚と財界の癒着や税金のムダづかいは根本的にあらためる必要があります(※過去エントリー「日本で激しい公務員バッシングが生まれる理由」 参照)。
そして、社会保障の面では、もともと先進国の中で異常に「小さな政府」であったのに、構造改革で毎年、教育・医療・社会保障を削減し、国民の暮らしを支える政府部門をひたすら削って「小さな政府」にしてきたため、現在の「貧困と格差の拡大」「安心できない社会」が作り出される結果となったのです。
しかし、これだけ貧困問題が深刻なものになっても、教育・医療・社会保障を拡充すること、国民の暮らしを支える公共サービス部門を拡充することに、反対する人たちがいます。反対する大きな理由としてあげられるのが、財政赤字の問題です。
関西学院大学・神野直彦教授と北海道大学・宮本太郎教授の編著『脱「格差社会」への戦略』(岩波書店)の中の「『小さな政府』論の欺瞞」と題したところの要旨を以下紹介します。
「小さな政府」へ異議を申し立てるや否や、たちまち財政赤字の現実を無視する暴論と一蹴される。というよりも「財政破綻」は国民が共同意思にもとづいて、国民の共同事業として、国民の生活を保障していくことを破壊する絶好の口実となっている。
確かに日本の財政赤字は大きい。中央政府、地方政府、さらに社会保障基金政府という3つの政府を合わせた財政収支を示すと、上の表のようになる。日本の財政赤字の対GDP比6.5%という数値は、主要先進国でも最悪である。
ところが、表の総支出の対GDP比を見ると、日本はアメリカに次いで小さい。つまり、すでに先進諸国のなかではトップ争いを演じる「小さな政府」であることがわかる。総収入つまり国税、地方税、さらに社会保障負担を加えた対GDP比で見ると、アメリカを抜いて「小さな政府」のトップに踊り出ている。日本の総収入が低いのは、企業の税・社会保険料の負担が他国と比べて低いからである。そして、応能的な租税負担構造を貫いていない日本は、景気回復時であってさえ、増加する所得を適切に捕捉できない。本来なら景気回復時には税収は自然増収となり、財政は均衡化していくが、日本はその能力さえ喪失している。「富める者には軽く、貧しい者には重く」というような単に不公平な税制であるだけでなく、「財政再建が重要な課題だ」と言いながら、現在の租税政策はそこからむしろ離れて行っているのだ。
表を見れば明らかなように、日本やアメリカのように財政支出や財政収入という財政規模の小さい「小さな政府」では、GDP比で4%を超える財政赤字を抱えている。それに対して表に掲げた先進諸国では中位の財政規模を誇るイギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどは、GDP比で3%台の赤字である。ところが、スウェーデンやデンマークのように、財政支出や財政収入のウエイトの高い北欧諸国の財政収支は黒字である。
つまり、「小さな政府」は財政赤字に苦しみ、「大きな政府」の財政収支は黒字なのである。「小さな政府」にしていけばいくほど、財政赤字は肥大化していくといってもいいすぎではない。
さらに、上のグラフのように、「小さな政府」である日本は、経済成長の面でも、OECD諸国の中で、下から数えて2番目になってしまっているのである。(これは構造改革前の数字ではあるが、日本が「小さな政府」であることに変わりはないのである)
そして、最も「小さな政府」であるアメリカと日本が、貧困率においてもOECD諸国の中で1位と2位になっているのである。
(byノックオン)