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西川郵政問題、最終決着へ 問われる新政権の力量(上)
[深層WATCH] 2009年10月13日 16:53 更新
やはり西川善文日本郵政社長は尋常ではない。「やめていただく」と明言した鳩山民主党に政権交代。腹心の「チーム西川」も解散となれば、西川氏といえども手足をもがれたも同然。民営化2年の区切りでもある9月30日をもって辞表を出すとみられていた。ところがその月末を迎えて「西川社長は辞める気なし。居座る構え」という内部情報。決着は今月下旬の臨時国会前後になりそうだが、その落としどころはまだ不透明だ。
<政権交代の意味>
内外政で3党の立ち位置の違いが懸念される鳩山連立政権。そのなかで、3党足並み揃えているのが「郵政民営化見直し」だ。
所管の総務大臣に郵政問題を追及し、3党有志議員とともに西川社長らを刑事告発している原口一博、そして郵政改革・金融担当大臣にして、民営化見直しをマニフェスト第1に掲げる国民新党の亀井静香の両氏を配した布陣が何を意味するか。西川氏はわかりすぎるほどわかっているはずである。
米国の要請で始まった郵政民営化が、一般国民や郵政職員を置き去りに進められたのは、官僚と族議員による郵政利権の解体と同時にその移し替え、あるいは新たな利権創造でもあったからだ。
郵政事業の本質について議論を詰めることもなく、ひたすら民営化へ突き進んだのは小泉政権であり、その旗振り役が竹中平蔵元総務相や宮内義彦オリックス会長らの規制緩和派。そこに「動機不純」を嗅ぎとる政治家や有識者は少なくなかったが、「小泉劇場」政治に惑わされて是認してしまった。それが、「かんぽの宿」問題でその「動機不純」が露わになり、最高責任者である西川氏の責任が問われたのは周知の通り。
その時点で通常の経営者、しかも功なり名を遂げた財界人であれば身を退く。しかし、辞任を求める鳩山邦夫元総務相に対して西川氏は平然。退いたのは大臣という不条理さに国民がNOをつきつけるのは当然であり、麻生政権の命取りになった。
麻生前首相が、盟友の鳩山大臣のクビを飛ばしてまで西川郵政を守ったところに郵政民営化の深い闇がある。政権交代によってそれが暴かれるのがベストだが、少なくとも西川氏には責任をとってもらおうというのが、民主党を勝たせた民意だろう。
さっそく原口、亀井両大臣は就任後の記者会見やインタビューで、西川氏の進退について「ご本人が判断されるでしょう」という婉曲な言い回しで辞任を促してきた。いわば「名誉ある撤退」の道を残しつつ、「政権交代の意味をわかっているでしょう」という両大臣のサインである。
ただ、佐藤勉前総務相が退任前、社長交代による混乱に懸念を示していたこと。さらに郵政を知る企業トップに経済界の空気を尋ねると、「いま西川さんに代わって郵政を仕切れる人が思い当たらない」という発言が気になったものの、横山邦男専務執行役率いる「チーム西川」が9月30日までの退任が確定。西川郵政の外堀は埋められ、9月下旬には「西川社長も9月末日に辞表を出す」という郵政内部に詳しい関係者からの情報がもたらされた。
(つづく)
http://www.data-max.co.jp/2009/10/post_7321.html
西川郵政問題、最終決着へ 問われる新政権の力量(下)
[深層WATCH] 2009年10月14日 08:06 更新
<「辞める理由」なし>
ところが、その月末が近づくと一転、「西川は自分でハラを切るつもりはないらしい」という別の関係者からの知らせ。実際、9月30日になっても西川氏の辞表は出されなかった。
「確かに『チーム西川』、別名『4人組』は、それぞれ9月末までに出身母体(三井住友銀行)に戻って完全に解体されました。これは、佐藤前総務相との約束事。
しかし、西川氏自身は、政府が100%株式を保有する株主総会で承認され、続投する条件として佐藤大臣との約束通りに1年以内でのガバナンス強化(業務改善、是正措置)に取り組んでいる、と。だから少なくとも、来年6月まで社長を辞める理由はない、というわけです。亀井、原口両大臣は何とか辞任へ追い込みたいようですが」(総務省担当記者)。
そこで10月に入ると、亀井大臣が「私が責任をもって経営陣を一新する」(2日)、「西川社長ほか4社の全取締役も一新」(3日)といえば、原口大臣も「10月中に一新すべき」(6日)と、両大臣の口調も一段と厳しくなってきた。
ただ、西川氏とその背後に控える米国を含む政財界勢力を考えれば、西川氏側も黙ってはいないはず、と思っていると、予測通りである。
桜井正光経済同友会代表幹事が、6日の定例会見で西川氏の進退問題について、「なぜ辞任しなければならないか。政府が人事に介入するには相当な説明が必要。国民は納得しないはず」と発言。経済界から西川体制擁護の声を上げたが、引き合いに出された「国民」とはどの辺りをさすのか。説得力はあまり感じられない。
さらに「西川サイドはカネ問題で亀井や原口を揺さぶってくる」(永田町関係者)という通り、12日付産経新聞はトップで「亀井氏側に献金」の見出しで、逮捕された西松建設関係者が自民党時代の亀井氏に個人献金していたことを伝えている。これが西川氏側の反撃かどうかはともかく、郵政民営化見直しとはまるで別次元の問題だ。
<背後に潜む、さらに巨大な闇>
10月5日付毎日新聞(朝刊)は、日本郵政絡みの注目すべき記事を載せている。民営化直後に郵政各社の広告を2年間(08〜09年)、博報堂に絞って発注する独占契約を結びながら、その契約書類を取り交わしていなかったという。
本誌既報の「終わりなき『日本郵政の闇』」で指摘した通り、本体(持ち株会社)の日本郵政はもとより、グル−プ4社の広告宣伝事業すべてが博報堂に集中。アリバイ作りのように他代理店へ2〜3回発注していたのも道理、博報堂への発注は官報によれば当然ながら随意が多いが、競争入札も少なくないからだ。独占契約しながら競争入札とはどういうことか。姑息というより虚偽そのものだ。
郵政民営化見直しは、コンプライアンス(法令順守)もガバナンス(統治)もない「西川郵政の闇」解明である。毎日新聞の同記事は、08年度の博報堂への発注額を222億円としているが、郵政関係者によれば09年を含めて総額300億円で契約しているという。しかし、これも氷山の一角。日米にわたる、金融部門から不動産部門まで、さらに巨大な闇があるからだ。
亀井、原口両大臣の発言から政府側の意向は、10月下旬からの臨時国会に「株式上場凍結」および「民営化見直し」法案を提出。それまでに西川氏が辞任しない場合は、臨時株主総会を開いて解任という強行手段を視野にいれている。しかし、巨大な闇があるほど、西川氏も簡単には引けないはず。どう決着をつけるのか。まさに新政権の力量が問われている。 (了)
http://www.data-max.co.jp/2009/10/post_7322.html