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http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20091014ddm004070094000c.html
記者の目:13年動かない普天間問題、どうする=上野央絵(政治部)
◇上野央絵(なかえ)
◇沖縄の民意を見極めよ 新政権、お茶を濁すな
鳩山政権が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)のキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)への移設計画を巡って揺れている。野党時代に「県外・国外移設」を訴え、先の衆院選マニフェスト(政権公約)でもこの問題を含む米軍再編に「見直しの方向で臨む」としたが、米側が見直しに慎重なためだ。しかし、普天間問題への対応は外交問題である以上に、自公政権のあり方を根本から見直す「政権交代」の象徴。鳩山由紀夫首相自らが強調する「沖縄県民の意思」をじっくり見極めて結論を出すべきだ。「11月のオバマ米大統領来日までに方向性を」などと焦る必要はない。
「基本的な考え方を変えるつもりはありません。ただ、オバマ大統領が一番気にしているのはアフガニスタンだ」。鳩山首相がニューヨークで日米首脳会談翌日の9月24日、同行記者団との懇談で「普天間の結論は年内か。『最低でも県外移設』の主張に変わりないか」と尋ねたら、こんな答えが返ってきた。首相は「会って話を聞いた人に影響されやすい」との定評がある。「オバマさんに会って『普天間よりアフガンだ』と直感したか」との印象を受けた。
実際首脳会談で、鳩山首相は普天間問題に言及しなかった。その理由を同25日(現地時間)、ピッツバーグでの記者会見で「最初から踏み込んだ話は遠慮するべきだ」と指摘。一方で「沖縄県民の思いに十分理解を示しながら結論を出す」とも述べた。10月7日には、マニフェストについて「時間というファクター(要因)による変化の可能性は否定しない」と発言し、「現計画の容認を示唆した」と波紋を広げた。釈明に追われる中で「沖縄県民の意思」を重ねて強調した。
「沖縄の民意」。96年4月の普天間返還合意の際、橋本龍太郎首相(当時、故人)が「沖縄の皆さんの強い要望に可能な限り応えた」と語って以来、普天間問題を巡って政府側の責任者が何度となく口にしてきた言葉だ。しかし「返還」の実態は「普天間の機能は県内で維持」とセット。「基地のたらい回し」は多数の賛同を得られず、自公政権に協力した稲嶺恵一前知事、仲井真弘多(なかいまひろかず)現知事は「15年の使用期限」「可能な限りの沖合移動」など政府側に条件を突き付けることで、「県内移設受け入れ」への県民世論の理解を保ってきた。
その「沖縄の民意」が今、政権交代に伴い、「県外・国外移設」に傾き出している。
「県外・国外移設、我々も期待してますよ」。9月26日、沖縄県恩納(おんな)村のホテル。北沢俊美防衛相と、普天間移設先の名護市を含む北部市町村会との昼食会の席上、会長の儀武剛(ぎぶつよし)・金武(きん)町長が語りかけた。儀武氏は06年、現計画の決定過程で当時の小泉純一郎政権に協力し、名護市説得に動いた。しかし今では周囲に「『県内移設で早く進めてくれ』という名護市や知事とは立場が違う」と明言している。
また10月6日の県議会。具志孝助・前自民党県連会長が「『県外移設がベストの選択』というなら政府にそう要求すればよいではないか」と知事に迫った。具志氏も06年当時、県連幹事長として現計画受け入れにかかわった人物。姿勢の変化は明らかだ。
06年の計画決定当時、沖縄で取材したが、心の底から納得して現計画を受け入れた当事者はほとんどいない。地元が求めた「住宅地の上空を米軍機が飛ばない」ために、防衛省と名護市の合意の最終段階でV字形2本の滑走路が決まった。しかも同省は「住宅地の上空を飛ぶのは緊急時だけ」との当初の説明を「訓練でもあり得る」と修正、不信感を広げた。さらに受け入れに至る過程で防衛省は、移設予定地の地区住民や北部首長を振興策を材料に味方に付け、名護市への説得に利用した。日米同盟や安全保障上の必要など正面から県内移設の必然性を説き、受け入れてもらったとは言い難い。
幸い、オバマ大統領は「長い時間をかけて一つ一つ解決していこう」と言ってくれているという。それなら結論を急ぐ必要はない。鳩山首相の発言のぶれは、問題の難しさを実感してきたことの反映だろう。「前政権の失政」と指摘するのなら、政権党として、結論を出すまでにもっと苦しんだ方がいい。少なくとも、仲井真知事が求める「沖合移動」、現計画の微修正でお茶を濁すべきではない。
岡田克也外相は、現計画が決まった経緯を外務、防衛両省の資料から検証する作業を始めている。ならば「沖縄の民意」を検証する作業を時間をかけてやってみてはどうか。13年かかった理由を探るカギは「民意」にある。普天間問題を前進させ、「日米同盟を持続可能なものに、長く深くする」(岡田外相)ためにも、腰を据えて取り組む方が得策だと思う。
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毎日新聞 2009年10月14日 東京朝刊
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