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日本の公職選挙法は公正な選挙も政治活動も禁止?
2009年10月09日 | 政治
国民の意思を反映する選挙のために『新政権で公選法改正断行を』
『私の主張』毎日新聞2009年10月8日(抜粋)
『一票の格差』訴訟最高裁判決で、投票価値の大きな不平等を認めるとともに、『国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主主義の基盤である』として、
選挙制度の見直しを含めた(国会に対して)早急な取り組みを求めた。
言うまでもなく、主権者の国民が選挙で正しい選択を行うためには、候補者や政党の政策、主張を十分知る事が前提となる。
ところが現行公職選挙法では『選挙運動』は告示日から投票日前日までに制限されそれ以外は刑罰の対象となる。
戸別訪問は禁止され、選挙事務所、自動車、演説会等が細かく規制されている。
文書類は特に厳しく制限され、インターネットによる選挙運動までが禁止されている。
わが国においても、かっては選挙運動は基本的に自由であった。
1925年(対象14年)の普通選挙の実現を契機に選挙運動が規制される事になり今日に至っている。
戦後、基本的人権を定めた日本国憲法が制定されたにもかかわらず、選挙運動の自由は規制され続けているのです。
憲法21条が保障する表現の自由は『民主主義国家の政治的基盤をなし、国民の基本的人権のうちでもとりわけ重要なものであり、法律によってみだりに制限する事は出来ない』(1974年大法廷判決)ものである。
わが国が1978年に批准した国際人権B規約においても、
全ての市民が不合理な制限なしに、自由に選んだ代表者を通じて政治に参与する事を保障している。
すなわち、『選挙人の意思の自由な表明を保障する』選挙で投票し、選出される権利である。
さらに、現在の選挙運動規制の問題点は、許されるものとそうでないものとの境界が不明確で、『何が適法で、何が違法なのか分からない』状態で、選挙期間中のホームページやブログの更新についても対応が分かれるなど現場で混乱が見られた。
ネットによる選挙運動については02年総務省の研究会が解禁を提言しているにもかかわらず未だに実現していない。
片木 淳(かたぎ・じゅん)1971年東京大学法学部卒、自治省(後に総務省)入省。第二次臨時行政調査会調査員、自治省選挙部長、消防庁次長 などを歴任。
現在、早稲田大学大学院公共経営研究科教授。(専門:地方自治)
主権者である国民がその代表者を選ぶ選挙は『民主主義の基礎』をなす重要なものです。
そして、選挙運動や政治活動は、政党や候補者の主張や情報に接する重要な機会を選挙民に与えるものであり、本来自由であるべきです。
ところが、現在の日本の公職選挙法は、『べからず集』と批判されているように、『原則禁止で、例外的な場合にのみ認められるもの』という基本姿勢の下に、個々の選挙運動などを厳しく取り締まっています。
たとえば、選挙運動ができる期間は公示・告示の日から投票日の前日までとされ、それ以前は『事前運動』として厳しく禁止されています。
公務員などの選挙運動は禁止されるとともに、特定の建物、場所での選挙運動も取り締まり、選挙運動の手段や方法も大幅に制限、または禁止しています。
特に、紙を使った文書類については『金のかかる選挙となる』との理由で、非常に厳しく制限されています。
選挙で頒布できるのは、一定数のはがき、ビラ(国会議員の選挙のみ)、新聞広告と選挙委員会の選挙公報だけです。
ポスターも、公営の掲示板以外には、掲示が認められていません(参議院比例区を除く)。
また、戸別訪問や第三者が主催する合同演説会への参加も禁止されています。
『「マニフェスト選挙」を実現していくためには』
『マニフェスト選挙』は、従来のような『地盤、看板、かばん』中心の選挙をやめ、政党や候補者の公約(政策)を比較して投票する政策優先型の選挙です。
このような『マニフェスト選挙』を実現していくためには、政党や候補者が理念、数値目標、財源調達方法、目標年次などを明示したマニフェストを文書などの形にして広く有権者に提供できるようにしていくことが不可欠です。
幸い、関係者の努力により、『マニフェスト選挙』といわれた2003年11月の総選挙では、直前に公職選挙法が改正され、選挙期間中にマニフェストの冊子が配布できることとなりました。
しかし、これはまだ国政選挙に限られており、知事や市町村長、地方議員の選挙では認められていません。
また、頒布できる場所も政党の本部だけであるなど、まだまだ限られた範囲にとどまっています。
ホームページでの公開、メールでの配信を可能にすることも課題です。
『抜本的な改革が求められる日本の選挙制度』
以上のように、『マニフェスト選挙』(公約、政策を争う選挙)を進めようとすればするほど、現在の選挙制度のあり方そのものが問われるようになってきました。
民主主義の先進国である欧米諸国の選挙運動は、政党や候補者が自らの政策などを選挙民に伝えるとともに、選挙民がそれらについて知る手段として一般的に広く認められ、自由に行われています。
ところが日本では、選挙運動を無制限に認めると財力や権力によって選挙がゆがめられる恐れがあるという理由で、選挙の公平、公正を期するためには選挙運動に一定のルールを設ける必要があるとされています。
このため選挙運動や政治活動を縛る厳しい法律が定められています。
しかし、現在のように選挙運動を過度に制限することは、選挙人に候補者の情報を提供するという選挙運動の重要な機能を阻害することになり、選挙運動や政治活動そのものを委縮させ、その結果、新人候補者の当選を難しくするなど、逆に日本の選挙をゆがめているのではないかとの疑問が生じています。
特に、インターネットについては、すでに、総務省の『IT時代の選挙運動に関する研究会』がこれを選挙運動手段として認めるべきであるとの結論を2002年に出しているにもかかわらず、まだ、実現していません。
これらの問題を含め、今後、わが国の選挙制度全体を抜本的に改革していくことが求められています。
選挙運動や政治活動は本来自由であるべきで、日本のように過度に制限することは、選挙制度そのものをゆがめてしまうおそれがあります。
『諸外国の選挙運動』
選挙人である国民、住民が自らの代表者を選んで、これに公の仕事を委ねる選挙は、民主主義の基礎をなすものです。
このように重要な選挙が公平、公正に行われるためには、候補者が選挙運動などを通じて自らを選挙人にアピールすることができ、それによって、われわれ選挙人が候補者の人柄、主張などを十分に知ったうえで投票できなければなりません。
そのため、選挙運動に対する規制は、できるだけ少なくし、自由に行われるようにする必要があるのです。
そのようなことから、民主主義の先進国とされる欧米諸国では、選挙資金の総量的な制限はありますが、日本のような選挙運動そのものに対する規制はほとんどありません。
選挙運動期間といった定めもないところが多く、したがって『事前運動』の禁止もありません。
民主主義において選挙が果たす役割の重要性からは当然のことですが、自由に選挙運動、政治活動が行われているのです。
『イギリス』
イギリスでは、選挙運動は戸別訪問、候補者討論会、テレビの討論番組、さらに最近ではインターネットを活用して自由に行われています。
これらの手段を通じて、マニフェストをめぐる活発な政策論争が行われているのです。
戸別訪問は、伝統的なイギリスの選挙運動です。
候補者と運動員が各家庭を訪問し、マニフェスト(チラシ)を渡して支持を訴えます。
イギリスでは、1883年の腐敗防止法により選挙費用が非常に低く抑えられているので、候補者個人は事実上、費用のかかるポスター作成やはがきの大量送付はできません。
そのため、選挙戦は戸別訪問や討論会が中心となっています。
しかし、近年はテレビの政党宣伝など、マスメディアの利用とともに、インターネットによる選挙運動が重要性を増してきています。
ウェブサイトのほか、電子メールも安価な選挙運動手段として活用されているのです。
『アメリカ』
アメリカでも、選挙運動は原則自由とされており、唯一の制約は選挙資金の総量制限によるものです。
伝統的な戸別訪問をはじめ、最近では、大統領選挙を中心にマスメディアによる候補者討論会や各党のコマーシャル、さらにはインターネットを利用した運動などが活発に行われています。
ITが飛躍的に進歩した現代こそ、逆に戸別訪問による選挙運動の重要性が見直されつつあるともいわれますが、インターネットを利用した、「ヴァーチャル戸別訪問」も盛んで、個々の住民のニーズなどに応じてカスタマイズされたメッセージを送る選挙運動が行われるようになっています。
『ドイツ』
ドイツでも、選挙運動についての規制はほとんどありません。戸別訪問も自由です。選挙が近づくと各政党は、選挙スタンドを設け、選挙前の党大会で採択した各党のマニフェスト(「選挙プログラム」)などについての説明を行うとともに、雇用・経済・財政・年金・福祉・環境といったテーマごとの各種ビラや選挙パンフレット、ワッペン、スローガンを記載したステッカーなどを配布します。
『フランス』
フランスにおいては、選挙運動目的の商業広告、投票日当日の一定の選挙運動などは禁止されていますが、それ以外は、戸別訪問、選挙集会、選挙ポスターの掲示、選挙公約を書いたビラの配布など、大半の選挙運動が自由とされています。
これらの民主主義の先進国に比べ、わが国の公職選挙法は、事実上、選挙運動を『原則禁止で、例外的な場合にのみ認められるもの』とし、個々の選挙運動手段について厳しく規制する、極めて特異なものとなっています。
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