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2009年09月30日 (水)
視点・論点 「鳩山政権 派遣村からの提言」
反貧困ネットワーク事務局長 湯浅誠
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/27473.html (全文転載)
鳩山新政権が発足してから2週間が経ちました。
脱官僚依存を掲げた国家戦略室や行政刷新会議の設置、政治主導の政務三役会、各大臣から矢継ぎ早に出される、これまでの政策を方針転換する指示--鳩山首相の初外交も含め、新政権は話題に事欠かない状態です。それが「何かやってくれそう」という期待感をもたらし、高い支持率を生み出しています。
私もまた、長妻厚労大臣から出されるさまざまな指示--生活保護の母子加算復活、障害者自立支援法・後期高齢者医療制度の廃止など--を喜びつつ、しかし他方で、新政権に不安を抱いてもいます。今日はあえて、その不安を中心に意見を述べさせていただきます。
国会は7月下旬の衆議院解散からすでに2ヶ月以上ストップしています。霞ヶ関に入った政務三役は活発に活動していますが、課題山積の中、官僚に頼りきらずに各種の政策を検討・実行していくためにはまったく数が足りません。従来なら、党の政務調査会などが課題の吟味・検討を進めるのですが、政府・政党の一元化の中で政務調査会の廃止が打ち出されています。つまり現状は、国会も政党も動かない中、各省庁5〜6人の政務三役だけが政策の基本的方向性を検討している状態です。
それでも山積する課題に網羅的に対応するためには、政務三役を補佐する優秀なブレーンが必要です。しかし、国会議員は永田町におらず、それぞれの地元で「指示待ち」の状態です。必然的に、こぼれ落ちる課題が出てきます。
イギリス型議院内閣制への大胆な刷新を目指していることはわかります。脱官僚依存のためには、それも必要なのかもしれません。しかし他方、民主党の照準は10月25日の参議院補欠選挙・首長選挙に合っており、次期臨時国会もごく短期間で終了との話もあります。「脱官僚依存」のスローガンの裏で選挙対策ばかりが進行し、人々の声を直接に反映させる国会運営がおろそかになりつつあるとしたら、それは残念なことだと思います。
私は、政権交代を歓迎しています。新政権には多くの期待も持っていて、性急に目に見える効果を求めるつもりはありません。「革命」とも言われる大きな構造改革には時間も必要でしょう。
しかし他方で、人々の生活は待ったなしの状態にあります。たとえば、失業率が過去最高を更新する中、都内のハローワークは2時間3時間待ちの状態です。世界同時不況の進行の中で、いわば上からの圧力で下からところてんが押し出されてくるように、生活が成り立たなくなってしまう人たちが増えています。東京都内の炊き出しは、去年の2倍から3倍、私が関わっているNPOもやいでも、相談日になれば一日40人程度の「今日明日食べていけない」といった人たちが押し寄せ、電話も100件近く。一日中鳴り止まない状態です。状況は確実に悪化しています。
すでによく知られているように、経済協力開発機構(OECD)によれば、日本の相対的貧困層は14.9%と、いわゆる先進国グループの中でアメリカに次いで高い水準にあります。また、貧困層に占める働いている世帯の割合は8割に達しており、アメリカの7割よりさらに高い。日本は、アメリカ以上のワーキング・プア大国になってしまっています。
そうした中、もうすぐ再び、冬を迎えようとしています。
昨年末、私たちは東京・日比谷公園で「年越し派遣村」を開催しました。派遣切りが横行する中で、500名を超える人々が派遣村に集まりました。いわゆる「構造改革」と規制緩和路線を推し進めた末の惨事であり、企業犯罪とも、政治災害とも呼ばれました。私もこの番組で、中途解約や寮からの追い出しなど、違法行為を平気で行う人材派遣会社や製造業大企業の行為を批判しました。
私たちだけではありません。派遣村には当時の野党である民主党・社民党・共産党などの国会議員が激励に訪れ、政府の無策を糾弾しました。それが厚生労働省の講堂を開放させる力ともなりました。
今年の冬は、その人たちが政府です。私は、去年の悲劇が二度と繰り返されないことを期待していますが、その対策に関するメッセージは、まだ新政権から聞こえてきません。
総選挙で敗れた前政権も、何もしなかったわけではありません。今年4月の平成21年度補正予算では、機能不十分な雇用保険と生活保護の間に、職業訓練受講中の生活費給付を行う「緊急人材育成・就職支援基金」を中核とする「第二のセーフティネット」が創設されました。また、職も住居も失った人たちがアパート入居を果たすまでの過渡的臨時的住居(シェルター)を自治体が確保する際の補助金も引き上げられました。
しかし、3年間で7000億円を積んだ「緊急人材育成基金」は天下り法人の収益源になっていることで話題を呼ぶ一方、本来の目的である雇用保険切れや雇用保険受給資格のない人々の生活下支えの機能は、あまり果たせていません。東京都内のあるハローワークでは、応募人数が募集人数の3分の1にしか達していません。原因は、広報周知の不足や、就職に結びつく有効な訓練メニューの少ないためです。結果として、巷には失業者があふれているにもかかわらず、利用者は当初予定の数パーセントに留まっています。
また、シェルターの補助金にしても、ほとんどの自治体が「ウチがやったら流入してしまう」と考えて実行しないため、予算をつけても使う自治体がありません。全国の賃貸住宅の23%は空いており、巷には住所を失くしてあえいでいる人たちがたくさんいるにもかかわらず、です。
民主党は、これらの制度が単年度の臨時的措置になっていることに不満を示し、恒久的な制度とすることを予定しています。そのために「求職者支援法案」「住まいと仕事の確保法案」という2本の法案を準備してもいます。しかし、その成立は早くても来年の次期通常国会であり、この年末には間に合いません。年末には、既存制度の運用改善で臨むしかありません。しかし、現実を生きる人たちは、来年まで生き延びる条件がなければ、年を越すことはできません。
以上を踏まえ、私は新政権に次の提案をしたいと思います。
第一に、今週中にも予定されている緊急雇用対策で、労働者各層のニーズに応える総合的なパッケージで対応すると宣言することです。正社員には雇用調整助成金が必要であるように、失業者には「第二のセーフティネット」が、住居を失った人たちには臨時の住居が必要です。誰も取り残さない。民主党は「すべての人が居場所を見つけられる社会に」と言って政権についたのです。
第二に、緊急人材育成基金を中心とした「第二のセーフティネット」の運用を早急に見直すことです。この諸制度には、周知不足の問題や、担当窓口の多さによる「たらい回し」の問題があります。年末までには時間がありません。ただちに、より使い勝手のいい運用を行うための検討チームを発足させる必要があります。
第三に、国の責任で臨時的住居を確保することです。自治体に任せたから国の責任はない、では誰も納得できません。私たちの試算では1万戸を用意するとしても必要な予算は年間120億円です。問題となっている「アニメ殿堂」予算と変わりません。野党と調整の上、次期臨時国会で補正予算を組むべきです。
ふつうの暮らしがしたい--この素朴な願いが、今回の選挙で民主党政権を実現させました。新政権が、この願いに応えられる政権であることを願って止みません。
(転載終わり)
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