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新政権が舵を取る日本丸は、どこに向かうのか?
内外展望 - 海外情勢
2009年 9月 28日(月曜日) 14:59
激動の渦に向かう世界、蠢動を続ける極東。
新政権が舵を取る日本丸は、どこに向かうのか?
昨秋の米国発の世界金融不安に端を発し、変革期を迎えた世界。経済・金融だけではなく、世界は新しい局面に向かいつつある。欧米や中東だけではない。アジア全域も恐ろしいまでに活発だ。この激変期に合わせるように、日本にも新たな政権が誕生した。
国連総会とG20金融サミットに出席した鳩山首相は、これまでの歴代自民党首相と異なり、日本の意思を明確な言葉で発信して注目を集めたが、同時にその理念に対しては警戒感を持つ国々も存在した。
国連総会出席のため訪米した鳩山首相は、9月21日にニューヨークで外交デビューを飾り、最初の相手として中国の胡錦濤国家主席を選んだ。その会談では、「東アジア共同体構想」への意欲を発言、日本のアジア重視姿勢を世界にアピールした。だがいっぽうでは東シナ海の油田開発問題を口にするなど、友愛だけでは終わらない日中関係の厳しさも滲ませた。
世界が注目する“新生・日本丸”は、激変の嵐の中、何を見据え、どこに向かって舵を切るのだろうか?
激動の世界情勢
2009年は激動の年となっている。
イラクに展開していた多国籍軍のうち、米軍以外は7月末で完全撤退。米軍も2011年までに撤退することになっている。イラク情勢の不安定化を前に、トルコがイラクとの戦略提携を強化し、この地域での存在感が増している。
2年以内にイラクからの撤退を視野に入れている米国だが、オバマ大統領は「アフガンでの戦争は必要」と訴えている。
23日の国連総会一般討論演説ではアフガニスタンの安定、中東和平に関し、「加盟各国に諸課題解決のための“責任分担”を求める」と、従来までの米国単独行動とは違った新時代の国連外交を印象づけようと、言葉を慎重に選んでいる。そのオバマ大統領は、8月末に行われたアフガン大統領選以降のアフガン情勢を睨みながら、米軍の増派を検討中だ。米軍はタリバーンへの麻薬資金の流れなどを分析する情報センターを設置し、今後は麻薬マネーを断ち切るための特別チームを作る予定だという。しかし現実的には、アフガンがイラク化し、最悪の場合、ベトナム戦争の二の舞になるのではとの危惧の声も聞こえる。
日本の民主党新政権は、インド洋に於ける海自給油活動を来年1月で終え、延長しない方針だ。その代替活動として、アフガン安定化作戦に協力する方針も検討中。これまで米国の忠実な番犬だった自民党政府と異なり、民主党政権は、米国従属から国連の枠組みへ参入へと方針変換しようというわけだ。
国連総会に先立って行われた日米首脳会談では、鳩山首相は「“チェンジ”が海を渡って日本にやってきて、政権交代を選ばせた。大統領と米国民に感謝したい」と述べたが、これを受けてオバマ大統領は「私たちはこれから長いおつき合いになります」と笑顔で答えている。鳩山、オバマはピッツバーグに移動するまでの間には、互いをファーストネームで呼び合うほど親密になったようだが、心の奥底はそれほど単純ではない。事実、同行記者団に対し鳩山首相は次のように語っている。
「オバマ政権と日本の新しい政権の関係では、アフガン問題がまず先にあるのではないか」
鳩山首相は、日本の自衛隊によるインド洋給油活動中止の代わりに、小沢幹事長の主張するアフガン支援活動への展開を念頭に入れていることは確かのようだ。
しかしここには重大な決意が必要となってくる。
9月17日にもカブールで自爆攻撃があり、イタリア兵ら16人が死亡しているが、アフガンの混乱はまさに泥沼状態。こうしたなか、9月26日にはビン・ラーディンが強い調子で各国軍隊に対し撤退を要請している。要請というより命令のようにも受け取れるビン・ラーディンの口ぶりから考えても、今後もさらに激烈なテロ活動が想定されている。
自衛隊のアフガン展開は、インド洋給油活動とは違い、生命を賭した活動となる。「自衛隊」にその任務を任せるのは、あまりに過酷だ。こうした活動を期待できるのは、「軍」でしかない。9月23日にG8外相会議に出席した岡田外相は、「さまざまな制約があり、日本からアフガンへの要員派遣は困難」と述べ、慎重な姿勢を見せている。しかし岡田外相と対立する小沢幹事長は、アフガン派兵に積極的な姿勢を見せている。国連総会とG20のために米国を訪れた鳩山首相だったが、インド洋給油活動停止や米軍再編問題に関しては口にすることがなかった。国家戦略局が中心となった民主党新政権が、新たな日米関係をどう構築するのか、注視していきたい。
いっぽう、対米関係改善を訴えるロシアのメドベージェフ大統領は、アフガンに於ける対テロ戦支援で存在感を示し、アフガン支援の名目の下、キルギスに軍事基地を設置、中央アジアでの影響力拡大を図っている。
世界の中東戦略の狭間で、蚊帳の外となり孤立感を深めているのがイスラエルだ。入植活動の全面禁止を求めるパレスチナ自治政府の立場を支持するオバマに対し、「入植活動を停止するということは、ユダヤ人の出産の権利を否定することだ」と強く反発。ますます孤立状態に突き進んでいる。
昨年9月15日に起きたリーマン・ブラザーズの破綻事件から1年余が経過した。この1年の間に、各国政府は足並みを揃えて巨額の財政出動や超低金利政策を採り、市場にすべてを委ねるという経済体制が見直されている。市場主義経済体制でも政府の役割が重要であると認識されるようになった。また、米国1国だけに富が集中するグローバリゼーションは終焉し、世界は主要20カ国(G20)による協調と多極化という新しい段階に突入している。
それでもなお、「9月末か10月末には、米国がデフォルトする」といった根拠のない“風説”が囁かれている。世界景気は一旦、爆発的に上昇し、その後壊滅するといった不安を煽る噂も流されているようだ。こうした噂には具体的証拠などないのだが、風説が新たな風説を呼び、その風説が中東危機――ハルマゲドン勃発の危機説を生み出している。こうした不安定な世界情勢の下、東アジアにも激動の渦が押し寄せている。以下に中国と北朝鮮情勢を分析してみよう。
力強い中国経済
世界経済の混乱に引きずられるように、今年前半の中国経済には翳りが見え始めていた。
今年の初め、世界の多くの経済学者は、2009年には中国経済が失速すると予測。とくに工業生産の落ち込みが激しいと考えられていた。じっさい、2007年末の工業生産の伸び率は18%だったのに、2008年12月の工業生産伸び率はわずか5.7%止まりだったのだ。こうした数字を前に、2009年の中国の年間輸出額が減少に転じると予測したエコノミストもいたほどだった(HSBCエコノミスト・曲宏賓氏等)。
だが多くの予測を裏切るように、中国経済は早くも春から復活の道を歩み始めた。それでも9月10日の世界経済フォーラムでは、温家宝首相は「中国経済は回復が依然脆弱なため、財政政策と緩和金融政策を積極的に続ける」と表明。世界の中で唯一元気を取り戻しつつある中国経済が、なお油断ならない状態にあると語っている。
温家宝首相の演説の翌11日、中国国家統計局は、「鉱工業生産を初めとして国内経済は景気回復が明らかになっているが、輸出は前年比23.4%のマイナス」と発表。エコノミストたちの予測は、半分は外れ、半分は当たっているようにも見える。
G20金融サミットに出席した胡錦濤国家主席は9月25日に、世界経済の安定成長のために「景気刺激策を断固として堅持する」と、中国が世界に与える影響力を意識した発言を繰り返した。さらに「先進国だろうが発展途上国だろうが、消費促進、内需拡大を進めなければならない」と語っている。胡錦濤の語る「内需拡大」の真意を世界のエコノミストたちは、どう捉えただろうか。
じっさいのところ、世界中のエコノミストが見逃している「中国の実態」がある。見逃しているという表現は不適切かもしれない。見逃しているのではなく、中国には「見ることが不可能な巨大経済」が存在しているのだ。
300年を越える資本主義の歴史を経て、市場経済の実態は数値として把握されるようになった。世界中のエコノミストたちは数字を駆使して経済予測をたててきた。表に出ることのない闇経済の数値も、大雑把に飲み込むことが可能だった。ところが社会主義市場経済という奇妙な形を生んだ中国では、闇経済が途轍もない「怪獣」となり、見ることも予測することもまったくできないのだ。中国の闇経済の中で最大の怪獣は「自由市場」だろう。
自由市場というと、日本のあちこちで開催されているフリーマーケットを想像するかもしれない。基本的にはこれと変わりがないのだが、中国の自由市場は質、量ともに想像を絶する巨大な市場なのだ。
日本には比較的均質な1億3000万人の人口を抱える経済圏がある。日本ほど均質ではないが、米国には3億の人口を擁する経済圏がある。中国の人口は公表13億人。実際には15億を超える人が住んでいる。だが13億あるいは15億が存在しても、そのほとんどが極貧の民で、経済活動とは無縁の存在――計算外の人々と考えられていた。じっさい、この計算外の人々が自由市場で動かすカネは、最初は微々たるものだった。ところが最近1〜2年の間にアッと言う間に肥大化し、それは世界のエコノミストたちがまったく想像できない、途轍もない巨大怪獣に成長してしまったのだ。
とつぜん市場主義経済を手に入れた15億の民が、政府や学者の思惑などすべて越えて巨大化し、勝手に動き出したのだ。
自由市場のお陰で、中国15億の民は衣食住が満ち足りている状況になっている。とくに都市部では、平均的労働者は百平米を超える広さのマンションに住み、着ているものはブランド品ばかりといった状況だ。もちろん山間部と沿海部、農村と都市の格差はかなりのものだ。だが山間部の人々も自由市場の恩恵に浴している。
2、3年前に、ちょっと奥地に足を踏み入れると、裸足の子供たちが目立ったものだった。ほとんどの子供たちは裸足だったし、大人も正直なところ、みすぼらしい衣服を身にまとっていた。ところがいまでは、子供たちは誰もが靴を履いている。外出着は1着しか持たない大人たちが10着を越える外出着を持つようになったのだ。――自由市場に生産品を持ち込むだけで、何でも手に入るようになったからだ。
社会主義国家が市場主義経済を導入した結果、自由市場が超巨大化したとも考えられる。これまで60年間、社会主義体制によって封印されていた庶民の欲望が一気に噴出したという見方もできるかもしれない。いずれにしても中国の闇経済は、理解不能なほどに拡大している。闇経済怪獣は自由市場だけではない。同規模に拡大していると推測されるのがセックス業界だ。自由市場で衣服も食糧も、住宅までもが入手できるとなると、体を売って少しでも良い品を手に入れようとする者が現れるのは不思議ではないのかもしれない。さらに麻薬などの取り引きも行われている。山間部、農村部の経済が活発な理由の一つは、こうした「非合法商品」によるものの可能性が高い。
鳩山首相が国連総会の場で口にした「東アジア共同体構想」の奥底には、アジア全域の基軸通貨として日本円が流通することが思い描かれていると考えられる。だがそれは、日本円ではなく中国元となる可能性も示している。もちろんそれが日本にとって気分の良いものか否かは別問題として、その可能性を考慮しておく必要がある。同時に、東アジア共同体構想は、かつてのEUによるユーロ創設時と同様、米ドルの価値を一気に下落させることは間違いない。米国が「東アジア共同体構想」に敏感なことは当然なのだ。
9月14日には、JPモルガンの高級経済師・王黔氏は「中国の2010年の経済成長率を9.5%に引き上げ、同年の金利引き上げ回数を2回と推測する」など強気の見通しを公表している。そのなかで王氏は、何より「個人商品の全面的な上昇、個人による不動産投資の大幅成長」をその理由としているが、これも中国の闇経済を視野に入れての話だ。さらに王氏は、「たとえ外需や個人消費が予想水準に達しなくても、中央政府は依然として十分な刺激余地、成長余地を有している」と語っている。
問題はこうした中国経済の実態を日本の経済界、産業界が理解しているか、だ。たとえば自動車業界を見てみよう。
毛沢東の肝いりで第一汽車製造廠が作られたのが1953年。その一汽が視察団を日本に送り、トヨタ自動車の生産システムを見て感動したのは、日中国交正常化交渉が始まった1972年(昭和47年)のことだった。以来、中国ではトヨタ学習ブームが起き、その後さまざまな経緯を経て、1990年代に入ったころには、中国はより積極的にトヨタに接近を図る。だがトヨタ自身の中国市場参入は遅々として進まず、21世紀に入るとドイツを初めとする欧州勢に圧倒的にリードされてしまった。
中国側はトヨタの市場参入を切望した。にも拘わらず欧州勢に制圧されてしまった理由はどこにあったのか。単にトヨタの事情、自動車業界の問題と捉えるだけでは、真の原因解明には繋がらない。日本は全体として、中国を理解せず、また正直なところ一部に中国蔑視の雰囲気が残るのではないか。――日本全体が抱える根本原因を考える必要がある。
中国の憂鬱
7月に起きた新疆ウイグル自治区の暴動はいまなお中国に暗い影を落としている。この暴動と、昨年、北京五輪を前に起きたチベット騒乱との類似性も指摘され、ウイグル独立運動に弾みがついている感じだ。ウイグル族が独立するとなれば、その動きはチベット他にも波及することは火を見るよりも明らか。新疆ウイグル自治区騒乱は中国政府にとって最大の難問となりつつある。これに対し、中国政府はいかに対応しようとしているのか。また、日本はどう考えるべきなのか。
まず新疆ウイグル自治区ウルムチの大暴動の引き金になった広東省韶関(しょうかん)市の玩具工場事件について眺めてみよう。
この事件に関しては、じつに多種多様の情報が流されている。すべての情報に関し、謀略の匂いが漂い、発端の事件について意図的、恣意的な背景が存在することが理解できる。本紙は広東省広州市の男性から、以下のような「事件の真相」を聞くことができた。
韶関市に従業員1万人超という規模の玩具工場がある。1万人の従業員のうち、約800人が新疆ウイグルの出身者だが、そのほとんどは5月末に採用された男たちだった。6月中旬頃、ウイグル族の男が工場で働く可愛い少女を強姦した。少女が騒がなかったことをいいことに、翌日、この男は5人の仲間と一緒になって彼女を輪姦したのだ。これを知った漢族の男が、10名ほどでウイグル族の宿舎に殴り込みをかけたのだが、逆に袋叩きになってしまった。そこで翌日、漢族の男たちは百人近い仲間を集めて再度ウイグル族の宿舎に押し寄せ、乱闘となり、ウイグル族の男2人が死亡したというのだ。
この情報を語った広州市の男は漢族であり、彼がいかに力説しても、確たる証拠があるわけではない。ネット上では、「強姦事件そのものが意図的に作られた作為情報で、その情報に踊った者たちがウイグル族宿舎を襲撃した」という解説も流されている。
いずれにしても広東省韶関市での乱闘事件の10日後の7月3日、「この事件に対する当局の対応は差別的」だとして、全世界のウイグル人に対して抗議活動を呼び掛けるメッセージがネット上に流された。このメッセージに呼応して、7月5日に新疆ウイグル自治区首府のウルムチで抗議デモが勃発する。この抗議デモも、当初は秩序のある行進だったのだが、突如として一部でエスカレートし、過激な抗議デモとなり、結果として百数十名が死亡、千人以上が負傷する大暴動となった。一説には、死者は二千人に及ぶともされている。
残念ながら、日本にいる我々には真実を探る方法はない。だがこの暴動事件の背後に、巨大な勢力が存在していることは間違いない。その勢力とは、新疆ウイグル自治区圧政を目的とした中国政府そのものだとする説もあるが、外国勢力による謀略説との説も強い。
中国政府自身は、「この暴動の背後に外国勢力が関与している。中国の内政に干渉しないよう、各国政府に要請する」といったコメントを発表しているが、中国の国民大衆はそうした政府の態度を“弱腰”だと非難する。「中国の急成長を恐れた外国勢力が足を引っ張ろうとしている。政府は強気に非難をすべきだ」といった声がネット上でも目立っている。
この暴動が新疆ウイグル自治区の独立運動に繋がり、それが中国を揺さぶっていることは事実だ。中国にとって、イスラム圏と密接な関係にある新疆ウイグル問題は、命取りにも繋がる重大問題なのだ。この問題について、日本政府がどう対応すべきかを真剣に考えておく必要がある。
ウイグル騒乱から間もない7月29日、ウイグル独立運動の指導者ラビア・カーディルが来日した。本人の希望を外務省が受理したことで、来日が可能になったものだ。
ラビア・カーディル(62歳)は改革解放経済下の新疆ウイグル自治区で成功した実業家であり、中国の共産党政権批判を続けていた女性だ。1999年に国家機密漏洩罪で逮捕、投獄されたが、2005年になって病気治療を名目に米国に渡り、以来、ウイグル独立運動の指導者として活躍を続けていた。中国政府は彼女を“テロリスト集団の一員”と位置づけ、ラビア・カーディルの活動を牽制し続けていたという経緯がある。
日本が親米であるべきか、親中であるべきかは、国家戦略の問題だ。
理想論を言えば、日本は親米でも親中でもなく、厳正中立であり、日本独自の立場を貫くべきだ。だが、現実に今日の国際政治力学の中では、理想論は無意味である。中国政府がテロリストと認定している人物の訪日を許可したことは、国家戦略として正しかったか否かの問題なのだ。
ラビア・カーディルが訪日したことで、日中関係は一気に冷え込んだ。とくにそれまで蜜月の雰囲気を作り上げていた中国人民解放軍と自衛隊の交流は凍結されるに至ったのだ。
さらに、東アジア共同体構想を掲げる日中両国は、双方の摩擦を考え、尖閣諸島に誰もが近づかないよう、日本の海保、中国海軍がこの海域を警備するという体制をとることにしていた。“テロリスト”を日本外務省が受け入れたことは、明らかに両国政府の姿勢に水を差すものだった。ここで考えたいのは、日本政府は覚悟をもってラビア・カーディルを受け入れたのかということだ。
民主党新政権が今回立ち上げた国家戦略局(戦略室)は、単に予算の基本方針を行う部署ではない。外交戦略の基本方針を組み立てるところである。自公政権時代には国家戦略が不在だった。これを正すことができるか否か。新政権に期待しよう。
異常事態の北朝鮮
北朝鮮の最高指導者である金正日の健康不安説が急浮上したのは昨年夏のことだった。その不安説を裏付けるかのように、昨年9月9日の北朝鮮建国60周年記念式典に金正日将軍の姿は見えず、後継者問題が最大の話題になっていた。
北朝鮮の対外強硬姿勢はその後も続き、6カ国協議から撤退、核実験やミサイル発射の強行と対話路線を巧みに織り交ぜ、周辺諸国だけではなく世界中を揺さぶっていた。
8月にはクリントン元米国大統領が突然訪朝し、世界を仰天させた。その後には韓国・現代グループの玄貞恩会長の訪朝も受け入れ、金正日の元気な姿も見せていた。もっともクリントン一行と一緒に撮った映像の金正日将軍の背の高さなどから、撮影された人物は影武者だったのではないかとの説も囁かれてはいるが。
そんな噂とは別に、世界中のどこのマスコミも伝えていない奇妙な出来事が存在している。
クリントン元大統領が訪朝し、米国人女性記者が解放された直後に、北朝鮮の労働新聞や中央通信は、「金正雲大将の智略のもと、米国のクリントン元米大統領が将軍様に謝罪した。これらはすべて金正雲大将の並外れた叡智と卓越した戦略による」などと宣伝、正雲の功績だと強調していた。
さらにまた、4月のミサイル発射の際、金総書記が正雲を同伴して衛星管制総合指揮所を訪れたとか、北朝鮮の男子サッカーチームのワールドカップ出場の陰に、金正雲の指導と配慮があったなどとして、「金正雲氏の業績」を積極的に開示していた。
日本の朝日新聞や英国のフィナンシャル・タイムズが「金正雲が中国を訪問し、胡錦濤主席と会談した」という、明らかなデマ情報も流されたが、金正日の後継者は三男の金正雲になると世界が認識したのも当然のことだった。
ところがこの「金正雲」の話題が、8月10日以降、パタリと途絶えたのだ。さらに未確認情報ではあるが、金正雲がスイスで目撃されたとの情報もある。これはいったい何を意味するものなのだろうか。
北朝鮮の情報に関しては、まったく意味不明のものが多く、正直なところ正確な情報はわからない。だが、北朝鮮のメディアが金正雲に関して口を噤んだことは事実である。この理由を大胆に推察してみよう。
後継者が金正雲に決まったという情報や、金正雲が中国を訪問して胡錦濤主席と会談したという偽情報の出所は北朝鮮自身である。これは間違いない。つまり北朝鮮は、「後継者は金正雲に決定」というアドバルーン情報を打ち上げ、世界の反応を観察していたと考えられる。そしてその結果として、「金正雲後継発表は時期尚早」との結論を出したのではないだろうか。
その時期尚早の理由なのだが、未確認情報として浮上しているものに「金玉」(キム・オク)の「激怒」がある。報道によれば、金玉は高英姫亡き後の金正日を傍らで支える「事実上の夫人」と言われるが、北朝鮮高位職の人事にも深く介入。09年現在45歳の彼女が、どのような背景で現在のような権力を手中に収めたのかは、いまのところ正確には判明していない。だが北朝鮮の国政全般にきわめて強い影響力を有していることは事実だ。
金玉が金正雲に激怒した理由は「勝手に軍の人事に手を付けた」というもの。金正雲に関し北が口をつぐんだのは、彼に対する金玉の怒りが収まらないからだ、というのである。
また金正雲スイス滞在説は亡命を意味するものではない。あるいは金正雲を「次の次」として温存し、短期に無名の人物を国防委員長の座に据える可能性もあると考えられる。こうした状況は、北朝鮮がいま、外国との対話可能な状況にあると考えて間違いない。
日本は歴史的大転換を果たし、戦後体制を維持してきた自民党が下野した。これまで、自民党政権下にあった外務省は、北朝鮮問題とくに拉致問題に関しては、まったく実績を上げられなかった。どんなに弁明をしようが、結果として拉致問題を解決できなかった。
北朝鮮が民主党新政権の出方を観察していることは間違いない。それならば、いまこそ、最大の問題を解決できる刻ではないのか。
官僚主導の政治から、政府・内閣主導の国家運営を行うと宣言した民主党新政権は、直ちに北朝鮮との対話を試みる義務がある。鳩山首相自ら、できるだけ早期に――できれば年内に、どんなに遅くとも来年の参院選前に北朝鮮を訪問すべきだと本紙は考える。
行政調査新聞
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