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久しぶりに集中して八ッ場ダムレポートを書いた。写真と一緒に、来週公開するのでお待ちいただきたい。さて、昨日は気になる新聞記事が目に留まった。いまや巨大化した民主党の選挙・国会対策を自在に操る小沢一郎幹事長が、国会の委員会において官僚が政府参考人として答弁することを禁止することで「政治主導」をアピールするというもの。たしかに選挙に関しては小沢氏の右に出る者はいないが、「政治家同士が議論することで国会活性化につなげたい」というのは、ずばり国会空洞化につながる。何とか考え直してもらいたい。
[新聞記事]
委員会での官僚答弁を“禁止” 小沢氏、政治主導アピール
民主党の小沢一郎幹事長は1日午後、神戸市で記者会見し、国会の委員会審議で閣僚に代わって官僚が「政府参考人」として答弁を行う国会審議の官僚依存を改めるため、今月下旬に召集見通しの臨時国会で、国会法の改正作業に取り組む考えを示した。鳩山政権の「政治主導」をアピールする狙いがあり、官僚答弁を原則禁止する方向で法改正を検討するとみられる。
小沢氏は「脱官僚支配は国会から始めないといけない。国民の代表者である政治家同士の議論ができるような国会にしたい」と強調。その上で「できるだけ国会法の改正作業をしたいが、予算編成もあるので時間的に間に合うか分からない」とも付け加えた。
2009年版の「民主党政策集」では、「衆参両院の委員会は専ら議員のみで議論を行い、国家公務員、民間人などから意見聴取を行う場合には、委員会の下に設置する小委員会で行う」としている。
また、小沢氏は臨時国会について「鳩山由紀夫首相が国民の生活が第一という政治理念と政策を堂々と訴えていく場になったらいい」と指摘。召集時期や会期幅は「政府サイドからどういう提案があるか分からない」と述べるにとどめた。
党役員人事に関しては、参院民主党人事が6日に固まるのを受け、7日にも発表する考えを示した。(47ニュース・共同通信)
[引用終了]
私は幾多の国会論戦で、政府参考人として官僚に出席を求め、全方位的に理詰めで議論を重ねて法案の問題点を明らかにするという仕事を積み重ねてきた。たとえば、2005年において共謀罪の議論では、当時の法務省大林刑事局長に「犯罪行為としての共謀の概念」は、「現在の共謀共同正犯の概念と同一である」と答弁させた上で、共謀共同正犯の最新の判例が「黙示の共謀」(言葉による意志確認を要さずに黙っていても『かくあるべし』という共謀が成立する)まで幅広く認めていることを指摘して、共謀罪における「共謀の成立」は「暴力団の親分が周囲の若い衆に『時は来た、今だ』と「目配せ」をすることもその範囲に含むかどうかを問うて、「そのような場合には成立する場合もある」と答弁を引き出した。
大臣はこの分野では素人の南野法務大臣だった。大臣に「目配せでも成立しますね」と私が問うと、何を勘違いしたのか南野法相は満面の笑みを浮かべながら「はい、目配せでも成立いたします」と答弁したのだ。おそらく、質問の狙いも意味も判らなかったからなのだろう。もし、この時の審議で「官僚答弁が禁止」されていたら、私たちは共謀罪を止めることは出来なかっただろう。立法作業を蓄積してきた刑事局長や大臣官房審議官などに答弁させて矛盾点を摘出してこそニュースにもなるが、南野大臣が勘違いして的外れの答弁をしたところで毎回のことなのでニュースにもならない。
それは自民党政権の話で、民主党の大臣・副大臣・政務官ははるかに優秀だという反論があるのかもしれない。しかし、私の経験から言わせてもらえば、どんなに優秀な政治家であっても森羅万象にすべて説明能力を駆使する才能を持つ人はひとりもいない。自分の得意分野でとうとうと説明出来ても、まるで知らない分野について国会答弁をする時には「官僚の作文」を活用する以外になくなる。官僚の作文を読んでいるぐらいなら、それは官僚に答弁させて、政治家としての判断や課題整理をきちんと出来ればいい。私は過去に行なった546回の国会質問では、事実確認や逐条審議は官僚に答弁させ、大臣には政治家としての判断を問うという形でやってきた。
「官僚答弁の禁止」で喜ぶのは、政治家ではなく官僚の方ではないか。官僚が隠してきた「薬害問題」や「外務省・国連広報センター問題」など、すべての言い訳を政治家にさせ、嘘の答弁を演出して後日判明しても知らんぷりをしていられる。私は小沢幹事長に提案したい。国会答弁を官僚にさせたくないのなら、議員の質問予告の時に「政府参考人」を登録しなければいいだけの話である。政治家同士の討論はいくらでも出来る。以前のように、大臣に答弁を要求しても役人がしゃしゃり出てくることは、事前登録がない限りは不可能だ。国会法を改正するなら、「虚偽答弁を禁止」する方がずっといい。
勘違いやポカミスではなくて、官僚たちは平気で国会の場で嘘をつく。ごまかしやすりかえならまだしも、明白な嘘は処罰するべきではないか。外務省が「密約はありません」としたのも、悪質で確信犯の嘘である。しかし、国会で嘘をついても議院証言法にもとづく「証人喚問」の時以外に「偽証罪」は適用されない。すべてに偽証罪を適用せよと主張するつもりはないが、「国権の最高機関」を侮辱し踏みにじった責任は取ってもらう仕組みをつくるべきだ。よほど、国会審議は緊張し活性化する。
民主党の国会改革は、狙いが判らない。議員立法禁止は国会改革の流れに逆行しているし、官僚答弁禁止は真相解明を求める国民にとって損失になる。政治家同士の議論を否定しているのではない。しかし、一律的に官僚答弁を禁止するという措置は、国会の場で、真剣勝負で官僚の論理を切り崩してきた現場感覚からは、到底受け入れられるものではない。大きく議論をしないと、政局のみ追いかけ、国会審議に無関心なマスコミが称揚し、あっという間にルール変更されるおそれもある。
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「国会の質問王」といわれるだけあって保坂さんの主張には、幾多の国会論戦を積み重ねてきただけの説得力があると感じた。
素直に考えても大臣だけで満足な答弁ができるとは到底思えない。いや民主党の大臣はみんな全知全能だ、と主張するなら別ではあるが、現実的とは思えない。
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