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(回答先: いわゆる「モラトリアム法案」について(経済コラムマガジン) 投稿者 JAXVN 日時 2009 年 10 月 04 日 15:21:25)
「経済コラムマガジン09/10/5(587号)
・モラトリアムのポイント
・モラトリアムの対象
マスコミ報道では、亀井静香金融担当大臣の返済猶予(モラトリアム)構想は極めて評判が悪い。先週も亀井さんはサンデープロジェクト(テレビ朝日系)に出演し、コメンテータから袋叩きに遭っていた。しかし筆者は、まだ具体的なモラトリアムの姿が示されていないのに、批難だけが先行していることに異常さを感じる。
日経、朝日、読売、毎日、産経の主要五紙も、モラトリアム構想を強く批難している。どう言うわけか産経の批難が凄まじい。しかし広告費の減少で各紙の経営も苦しいはずだ。貧乏神の日経もとうとう赤字に転落した。一、二年の間に、よもやこれらの新聞社は、金融機関に借入金の返済猶予(ADRの申請を含め)や追い貸しを求めることはないと筆者は信じているが。
現在行われている中小企業に対する政府保証による銀行貸出や、亀井金融担当大臣のモラトリアムは概ね後ろ向きの政策である。筆者も資金的な救済だけでは、企業がいずれ行き詰まることを承知している。これらの政策は、あくまでもマクロ経済政策が効果を生むまでの繋ぎである。またこれの政策によって、追加のマクロ経済政策が忘れられることがあってはならない。
ところが民主連立政権の次の経済対策が見えてこない。たしかに極端な在庫調整が終わって、設備の稼働率がアップしている。また前政権の財政政策(公共事業の前倒しや定額給付金など)の効果と外需によって、経済と株価が少し持直している。世間には不況の峠は越えたという雰囲気がある。
しかし筆者は、一連の経済政策の効果も薄れ、日本経済はこれから再び厳しくなると見ている。また次の景気対策と言っても、手っ取り早く着手できる公共事業は前政権がやり尽くしている。大型公共投資も、八ッ場ダムの工事中止に見られるようにハードルが高くなっている。さらに民主党は、定額給付金のようなヘリコプターマネー的な政策も否定している。
案外、返済猶予(モラトリアム)法案を成立させておいて、連立政権は助かったという事態も有りうると筆者は想っている。モラトリアム法案の骨格は10月9日あたりに明らかになる予定である。筆者はそれまでに返済猶予(モラトリアム)構想への評価が、ガラッと変わっていると思っている。
さて先週号で挙げたポイントに沿って、返済猶予政策について述べる。まず対象範囲は、亀井氏の発言から中小・零細企業への融資金が対象になることははっきりしている。一方、住宅ローンについてはあまり触れられていない。亀井さんは中小・零細企業の経営者から窮状を訴えるFAXと手紙が殺到していると話している。中小・零細企業の融資がクローズアップされているのは、このようなことが影響していると思われる。特にリーマンショック以降、またミニバブル崩壊後、銀行の貸出姿勢が厳しくなったと見られる。
しかし住宅ローンを抱えている人々も苦しくなっていると想像される。ただ住宅ローンの返済に窮している人々は、個人的な問題と考えがちで、自ら「苦しい」と声を上げない。広く給与やボーナスのカットが実施されている。また公務員の俸給の引下げも実施された。当然、住宅ローンの返済に窮している人々が急増していると思われる。
筆者は、中小・零細企業の場合より、住宅ローンの方が融資として標準化されており、とっかかりやすいと考える。また住宅ローンの返済が猶予されたり減額された場合、回り回って消費が増える。例えば毎月12万円ずつ返済しているローンの返済額が7万円に減れば、5万円の余裕が生まれる。この5万円のうち60%が消費に回れば消費は3万円増える。つまり年間で36万円、もしこのような人が300万人いれば、1兆円の消費増となる。これは今年実施された定額給付金の経済効果に匹敵する。
・相互不信
次のポイントは「法律を改正せずに実行できるもの」であり、具体的には「金融庁の検査マニュアルの改正と運用のさらなる改善」策の検討である。法律の改正が不要ということになれば、先行して実施が可能である。筆者は「検査マニュアルの改正と運用のさらなる改善」によるリスケも、モラトリアム政策の一つとして位置づけている。
そもそもこのようなことに政治が介入せざるを得なくなった背景には、関係者の相互不信があると考える。金融庁は銀行の言う事を信じない。本来、貸倒処理すべき不良債権を隠し過大な利益を出したり配当を出したりして、責任を取るべき経営幹部が不当な高給を得ていると疑っている。まさに粉飾決算ではないかと疑っているのである。
このような銀行には検査マニュアルを盾に厳しく対処すべきという雰囲気が、金融庁の担当者の中にはあると思われる。見方によっては今日の両者の相互不信は深刻であり、後日、ある事件を通じ改めてこれを取上げる。もし昔のように両者に相互不信というものがほとんどなかったら、今日のような金融の混乱もなかったと思う。
銀行は融資先の中小・零細企業を信じない。特に複数の金融機関から借入れている相手には警戒心を持つ。他の金融機関には返済し、自分のところだけに返済の猶予を言って来ているのではないかと疑う。また経営者が本業以外で金を浪費しているのではないかと疑う。
個人の住宅ローンの返済が滞った場合も、本当にまともな理由があるのか疑う。パチンコや競馬で金をすって住宅ローンを返せなくなっているのではないかと疑う。実際、銀行が疑っているようなケースが現実に有りうるのである。
このような相互不信がある限り、返済猶予希望者の全部に一律の返済猶予は無理と考える。ある程度の信用の格付が必要になると考える。住宅ローンの場合は、最近返済が始まった者と20年の間に返済に支障がなかった者を同列には扱えない。
つまり返済が進んだ融資に対しては、より長い返済期限の延長(リスケ)を銀行が認めるということは可能である。そしてこの限度内のリスケの場合、金融庁は債務区分を変更せず、貸倒引当金の積増しを銀行に求めないことが考えられる。またこの措置は中小・零細企業の長期借入金にも適用できる。
三つ目の政府がモラトリアム実施に当って何らかの経済的負担を負うかどうかが重要なポイントとなる。筆者は、亀井大臣の発言から、政府が財政支援をすることを承知していると判断している。また銀行にもある程度の負担を求めることも有りうると考える。政府保証によって融資金の返済猶予を行うことは、銀行にとってもメリットは大きい(この点が誤解されている)ことを考えると、それほど無茶な要求ではない。
現在の政府保証付きの銀行貸出枠30兆円も財政負担を想定している。貸倒比率を見積もり財政負担は予算化されている。返済猶予(モラトリアム)の対象金に対しても貸倒比率を想定し、金額を見積もることができる。ただ希望者がどれだけ出てくるか不明なので、やってみないと分らない面はある。また政府保証付き銀行貸出枠と同様、枠を設けることも考えられる。
モラトリアムまで行わなくとも、現行の政府保証による貸出制度を拡充すれば良いではないかという意見がある。これには一利あるが、新規の借入はいやだが返済だけは待ってほしいという中小・零細企業がある。さらに今回は個人の住宅ローンも対象になる。
筆者は、政府保証付きの銀行貸出制度を利用しているところより、今度のモラトリアム対象企業は信用力が劣るところが多いと見ている。実際、現行の政府保証付きの銀行貸出の審査で落ちたところも対象になる。したがって貸倒比率は大きくなることを覚悟しておく必要があると考える。
モラトリアムの対象が元本だけなのか、あるいは利息まで含めるかが四つ目のポイントとして浮上している。亀井大臣は、利息まで含めることを想定し、さらに利息の減免まで言及している。一方、どうやら鳩山首相は元本までと考えているらしい。しかし筆者は両者がいずれ妥協点を見つけると楽観している。
鳩山首相もずっと前から返済猶予(モラトリアム)を考えていたことがようやく報道されるようになった。両者はかなり前からこれについて話し合っているふしがある。当初、亀井大臣の独走とマスコミに叩かれたが、これはマスコミが何も取材せずに発した報道である。ちなみに先週号09/9/28(第586号)「モラトリアムの話」でAさん達が3回も面会した政治家を取上げたが、これは鳩山由紀夫氏その人であった。
9日に連立与党の返済猶予(モラトリアム)構想の骨子が出来上がる。来週はこれを取上げる。また今週取上げた相互不信は政府と国民の間にもある。モラトリアムを実施するにあたりこれが障害になりうる。これに対する対処も来週述べる。 」
http://www.adpweb.com/eco/eco587.html
参考-この問題に関する産経新聞の報道例
亀井氏「モラトリアムを」 藤井氏は慎重 閣僚発言で市場混乱(産経新聞)
http://www.asyura2.com/09/hasan64/msg/599.html
投稿者 gikou89 日時 2009 年 9 月 20 日 00:00:59: xbuVR8gI6Txyk
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