民主党政権になり変化が期待されること
第45回衆議院選挙では、民主党が308議席を獲得し、衆議院の第一党となり、2009年9月16日に召集された特別国会の首班指名で民主党党首の鳩山由紀夫代表が選出されて首相となり、鳩山政権が発足し、選挙による政権交代が実現した。
長らく政権の座にあった自民党と公明党によるこの間の各種の政策は、いずれも強引であり、治安対策的であり、最後は数の力に頼って再可決をしてでも実現するという無茶苦茶な政策が次々と実現してきた。
今回の総選挙で示された国民の声は、これまでの腐敗しきった政権に対する拒絶の意思表示であり、我が国においても戦後初めて、民意によって政権交代が可能であることが示された。
新たに法務大臣となった千葉景子法務大臣は、就任演説において、国内人権救済機関の設置、主要人権条約の個人通報制度の受諾、取調べの可視化などの公約の実現を図る姿勢を示した。
これらは、いずれも前政権下では望むべくもない政策ばかりであり、政権交代がもたらすドラスティックな効果を実感させるものである。
もっとも、取調べの可視化について、中井洽国家公安委員長は、就任会見において、「おとり捜査や司法取引などの捜査上の武器を持たせてあげたい」と述べ、新たな捜査手法の導入とセットで実現したい意向を明らかにしており、民主党のマニフェストにはなかった条件を付けようとする動きも出ており、これは警察側の巻き返しとも考えられる動きであるから、注意が必要である。
千葉法務大臣は就任会見で触れなかったが、民主党のマニフェストでは、「共謀罪を導入することなく国連組織犯罪防止条約の批准手続きを進めます。」として、共謀罪の導入に反対することが述べられていた。これは、日本弁護士連合会が、国連越境組織犯罪防止条約についての世界各国の批准状況を踏まえて、2006年9月に「共謀罪新設に関する意見書」を採択し,「政府と与党が導入を主張している共謀罪の規定は、我が国の刑事法体系の基本原則に矛盾し、基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こすおそれが高い。さらに,導入の根拠とされている国連越境組織犯罪防止条約の批准にも,この導入は不可欠とは言い得ない。よって、共謀罪の立法は認めることができない。」と述べた意見書を踏まえて、民主党がかねてからとってきた姿勢を具体化したものであり、今回の政権交代によって、これまで長い間、衆議院の解散等で何度も廃案になっても、何度も国会に上程され続けた共謀罪法案が再び上程されることはないものと考えられ、共謀罪法案をめぐる長年の闘いがようやく勝利を収めることになったことについては感慨深いものがある。
いずれにしても、民主党政権になったからといっても、今後も、治安立法が提案される可能性はあるし、中井国家公安委員長が述べている捜査上の武器を与える法案が提案される可能性もある。
私たちは、民主党政権による政策を手放しで受け入れるのではなく、今後も不断に関心を持ち続け、おかしいことはおかしいと異議を述べたり、よりよい政策を実現するために関心を持ち続けることが求められている。
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