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http://blog.livedoor.jp/ikedakayoko/archives/51259786.html
2009年09月27日00:00
目から水 第五福竜丸
おととい9月25日、すこし蒸すけれど気持ちのいい青空のもと、東海道本線の各駅停車に乗っていました。
次は焼津という車内放送を聞いたときです。飛び降りてタクシーに乗り、花屋に寄って、あるお寺の墓地の小高いところにたたずむあのお墓に詣でたい、そしてあることを報告したい、そんな願いが、特異な形の白いお墓や、お寺までの狭い道のフラッシュバックとともに、一瞬頭を過(よぎ)りました。
だめだめ、時間が足りない、駅にとんぼ返りしてすぐ電車が来たとしても、次の予定に遅刻してしまう。わたしの数十秒の迷いを断ち切るように、焼津駅はしずしずと後方に遠ざかっていきました。
車中の迷いは、その日の朝のテレビニュースに端を発します。ニューヨークの国連本部、安保理首脳会合で、あの巨大なドーナツ型のテーブルに向かった鳩山総理が演説していました。英語の中からふいに「ダイゴフクリュマル……ハイドロボム…
…ビキニ」という音が聞こえました。
アメリカが提案した「核のない世界」決議について、各国首脳が演説した、その中での発言でした。こうした場で、このくにの総理なら、ヒロシマナガサキのことは言うでしょう。けれど、CTBT(包括的核実験禁止条約)に関連して第五福竜丸にも触れるとは。わたしは不意をつかれたあまり、目から水が出てしまいました。
決議はなんら国際条約的な拘束力をもつものではありません。けれど、これをほかでもないアメリカが提案した。核保有国の首脳たちはごちゃごちゃ言ってもいたようだけれど、とにもかくにも全会一致で採択した。たまたまアメリカに議長国の番が回ってきている時で、それを初めて時の大統領が買って出た。たまたま日本が非常任理事国だった。たまたま政権交代の直後で、新しい総理がこの場のスピーチをすることになっていた。
まさに時は熟し、このくにも世界も大きく変わろうとしている、だからこそ、こうした「喜ばしいたまたま」がいくつも重なり、がっちりと組み合わさって、新しい大きな流れを、もはや打ち消しようもなく生じさせているのだ、と思いました。世界の空気が入れ替わったような気がしました。いまこのくにの上空に、さわやかな秋の空気が日ごとぐんぐんと勢いを増しているように。
次の目的地の藤枝で、中学の英語の先生が1枚のプリントをくださいました。それに目を落とし、またしても驚きで涙が出そうになりました。
その2日前の9月23日は、第五福竜丸で被爆し、ついさっきわたしが焼津でお墓参りをしたいと思った久保山愛吉さんのお命日だったのです。プリントは、第五福竜丸のこと、そして先生も参列したおとといの墓前祭のことを、生徒さんに伝えるものでした。
各駅停車の電車と1枚のプリントのかたちで、わたしのようなちっぽけな存在にも、世界を席捲している「喜ばしいたまたま」は訪れました。こうした偶然の巡り合わせは、思いのあるところにやってくる、と考えないわけにはいきません。だって、思いがなければ、せっかくの訪れも気づかず見過ごしてしまうかもしれないでしょう?
あまり有頂天になっては、夢みる夢子さんになってしまいます。世界にもこのくににも、不公正や悲痛事が絶えません。自戒しつつも、今のところ掛け声だけだろうがなんだろうが、世界が、このくにが、戦争とは逆の方向を向いた、そしてこうした動きを推し進めていける唯一の力はわたしたちの意思なのだということを、しっかりと噛みしめようと思います。
鳩山総理の安保理演説ですが、「唯一の被爆国」ではない、「核兵器による攻撃を受けた唯一の国家」という言い方は、正確で好ましいと思います。「唯一の被爆国」という言い方もしていますが、上述の正確な表現の後に出てくるので、その短縮形とみなしうるでしょう。
これは、核保有の能力がありながらそうしないという選択をしてきたのは、「唯一の被爆国として我が国が果たすべき道義的な責任」だからだ、と続きます。これはもちろん、オバマ米大統領の「核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任があります」という、チェコ演説に呼応することを意識しているでしょう。
「非核兵器地帯の創設」に言及したことも高く評価できます。北東アジアと中東という、具体的な地域名を挙げていれば、もっとすばらしかったと思います。
また、核の先制不使用という、このくにをふくむ北東アジアの最大の関心事についても、ひとこと言ってほしかったなあと思います。ついこのあいだまで、「アメリカが核の先制使用政策をやめてくれては困る」と言って回っていた在米外務官僚の行動を、今後きっぱりと封じることにもなりますし(これにかんする記事はこちら)。
そして、広島長崎に触れるだけでなく、世界の衆人環視のなかで直接、核保有国の首脳たちを被爆地に招いたことは、すばらしいパフォーマンスだったと思います。外務省のみなさん、この招待が実現するよう、フォローお願いしましたよ!
●関連投稿
鳩山・岡田の国連演説等の全文はこちらから【メディアによるバイアスを避けるためにも、直接全文を読むことをお勧めする】
http://www.asyura2.com/09/senkyo72/msg/143.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 9 月 26 日
●関連抜粋
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/21/ehat_0924b.html
▼鳩山総理大臣演説
核不拡散・核軍縮に関する安保理首脳会合
鳩山総理演説
平成21年9月24日、於:ニューヨーク
――第二に、CTBTの早期発効、カットオフ条約(兵器用核分裂物質生産禁止条約)の早期交渉開始を強く訴えたいと思います。1954年3月1日、南太平洋ビキニ環礁における水爆実験で日本の第5福竜丸が被爆したことを私は思い起こします。カットオフ条約によって「持てる国」の核兵器生産能力を凍結することは、核軍縮・不拡散の双方に貢献することになり、また、NPT体制をより平等なものにするためにも不可欠な措置であります。我々に浪費すべき時はありません。――
●関連投稿
絵本、「リトルボーイとファットマン」(書評)(神州の泉)
http://www.asyura2.com/09/warb0/msg/394.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 8 月 12 日
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