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この数日間、八ッ場ダムのことを集中して書いてきた。 とくにテレビ報道があまりに極端な「つくらないともったいない」「ダム建設に翻弄された住民の涙」などと国土交通省河川局提供なのかと思わせるような番組を垂れ流していたので、何とかしなければならないと考えたからだ。反響は大きく、ついに9月24日のアクセス数は25000IP/53000PV(gooブログアドバンス3位)にまでふくらんだ。ある民放のテレビ局のアナウンサーからも電話をもらった。自分たちが流してきた情報はもしかしたら表面にすぎず、八ッ場ダム問題の根底にある重要な領域を外してしまっているのではないかという自戒が生まれてきていると感じた。ぜひ、深く根底をえぐる報道番組をつくってほしい。 きっこのブログにも気になる記事が⇒八ッ場ダム報道でヤラセ発覚 今回の「八ッ場ダム騒動」でにわかに見物客や観光客が増えているようだが、八ッ場ダムに行くたびに私たちは「川原湯温泉」に宿をとる。この温泉街の入口には、「歓迎 ようこそ・ダムに沈む川原湯温泉」という大きな看板がある。源頼朝が浅間狩りの時に開湯したのが起源があると言われ、歴史を持つひなびた温泉街だ。たずねるごとに、旅館の数は減っていく。それでも、八ッ場ダムに沈むことになるこの温泉街は、湖底の源泉からパイプでお湯を引き揚げて、ダム湖の湖畔に「新温泉街」をつくる計画が進んでいる。 ダム計画がこの温泉街を襲ったのは、今から57年前の夏だった。この様子を『八ッ場ダムは止まるか』(八ッ場ダムを考える会編・岩波ブックレット644)に隅大二郎さんが書いている。引用のまた引用となるが、ぜひ紹介したい部分があるので読んでほしい。 [引用開始] そもそも八ッ場ダムの話が地元にもたらされたのは半世紀以上も昔にさかのぼる。 昭和27年(1952年9の初夏だった。河原湯村民は、何の話かの説明もなく集会所に集合させられた。町長き先導で話を始めた建設省の役人、坂西徳太郎は村民の頭越しに「ここにダムを造る」と言い放ち、「この村はざんぶり水につかりますな」と横柄にもそう苦笑して、その場を立ち去った。 [引用終了] 最初のスタートがこの態度である。この居丈高で国家権力をかさにきた建設省の土木官僚の思い上がりに憤慨した人々は長い闘いに立ち上がることになる。先に何度か紹介しているが、この吾妻川は強酸性の「死の川」だったことで、このダム計画は停止し沈澱する。 [引用開始] 当時、町議会は二度もダム建設反対を決議した。町議会が挙げた反対の理由を豊田さんの本から引いてみよう。 1、 険しい地形ばかりで、地元住民の犠牲を伴わない再建計画は絶対に不可能。 [引用終了] 44年前の決議だが、ここに重要な論点はすべて盛りこまれている。いくつかの点はすでに解決を見ていると国土交通省河川局は言いたいだろうが、「半世紀」という途方もない時間を武器に意気盛んに反対してきた住民たちを疲れさせて、真綿で首を絞めるようにして諦念に導いていったのではないか。 私は、1年半前に八ッ場ダムを訪れた際に近隣の住民のひとりから「浅間山噴火」の話を聞いた。2004年9月1日、浅間山が噴火した時には「ドーン」という大きな爆発音が聞こえて、火山灰が降ったという。1783年(天明3年)の大噴火では、噴火にともなって崩壊した山が時速最大100キロで鎌原村を襲い、泥流は吾妻川を時速30〜40キロで下り、ちょうと八ッ場ダム予定地付近で止まったと言われる。(泥流死者1583人)この住民は、ダム計画の説明に訪れた国土交通省のダム官僚に聞いた。 「もし、浅間山の大噴火が起きたらこのダムはどうなるのか」 ダムに水がほとんどなければ「砂防ダム」となって土石流を止めることが出来るという説もあると『八ッ場ダムは止まるか』でジャーナリストのまさのあつこさんは指摘しているが、逆に満杯だったらどうなるのか。ダム官僚たちは、これ以上は考えたくないから苦笑いするしかないのではないか。 浅間山が噴火しなくても、八ッ場ダム建設予定の急峻な地形は古代からの浅間山噴火によって吐き出された堆積物が幾重にも重なり合っている構造となっている。従って、地滑りが起きやすく、国や県が「地滑り危険個所」「地滑り防止法指定地域」としている場所が予定地周辺に何ヶ所もある。しかも、ダムに水をためることで地滑りをしやすい危険地域を大量の水で浸すことになる。 「つくらないともったいない」「防災の備えを欠かすわけにかない」と声高に叫ぶメディアの皆さんには、八ッ場ダムが出来ることでむしろ「危険」が増大するのではないかと指摘する声にきちんと答える義務があると思う。 |
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