高い支持率と 新しい政策 九月十六日召集の特別国会で首相に指名された民主党の鳩山由紀夫代表は、同日夜に三党連立内閣を組閣した。社会民主党の福島みずほ党首が消費者・少子化問題担当相(食品安全・男女共同参画担当)として、また国民新党の亀井静香代表が金融・郵政改革担当相として入閣した。 自公政権に代わる民主党主導政権は、明確に自公政権との差異を意識した「変革」をイメージさせようとしている。後期高齢者医療制度の廃止、生活保護母子家庭加算打ち切りの撤回、障害者自立支援法の廃止、群馬県の八ッ場ダム建設や沖縄・泡瀬干潟埋め立て工事の中止、二〇二〇年までに温暖化ガス排出量を九〇年比二五%削減する公約などが、鳩山内閣の閣僚によって次々に打ち出されている。 外交・防衛問題についても来年一月に期限切れの海自のインド洋での給油活動打ち切りが明言された。岡田外相は核持ち込みや沖縄返還をめぐる日米間の密約調査を藪中外務事務次官に命令した。 郵政事業の四分社化「見直し」、登録型派遣・製造業派遣の原則禁止をふくむ労働者派遣法の抜本改正などの連立政権合意書に書き込まれた一連の措置実現に向けてスタートを切ることも期待されている。 さらに来年の通常国会では外国籍住民の地方参政権法案を上程することも日程に上がっていると報じられている。「死刑廃止議員連盟」に所属する千葉景子氏が法相に就任したことも、少なくとも彼女の在任中は死刑執行が停止されることへの希望を抱かせる。新政権にとっては「最初の百日が勝負」とも報じられているが、鳩山三党連立政権が、七〇%以上の支持率を背景に相当の決意をもって出発したことは間違いないだろう。米国のオバマ政権も、「米軍再編」の維持、沖縄・辺野古への新基地建設計画の続行について鳩山政権を牽制しつつ、当面は「相手の出方」を見るという態度を取っているようである。 政権の限界を 見据えながら この鳩山政権の「変革」をイメージさせる積極的姿勢がどれだけ継続するものであるかについて、われわれは幻想を持たない。来年七月の参院選挙で民主党が勝利し、参院での安定過半数を獲得できれば、三党連立を解消し民主単独政権に移行する条件も形式的には整うことになる。 しかし、われわれが鳩山政権への「期待」を煽りたてるべきでない根拠は、この党の性格そのものに内在している。民主党は繰り返すまでもなく日本会議に属する極右民族主義の傾向から、「松下政経塾」出身の新自由主義的「規制緩和」路線の信奉者、そして社会民主主義的傾向までのアマルガムである。自動車、電機、ゼンセンなどの大企業の「連合」幹部は、財界の利害を直接的に民主党内に反映させようとするだろう。さらにそれぞれにニュアンスの差はあれ、民主党は「日米同盟」の下での改憲・海外派兵推進を党全体の正式方針としている。 したがって持続する資本主義経済の危機と失業・貧困の拡大や、米国からの一層の圧力の中で、民主党政権はその危機を大資本の利益に反する形で突破する方向を持ち得ない。それは消費税の大幅引き上げをふくむ新たな大衆増税の強制という形を取らざるをえない。そのプロセスは、存亡の危機に陥った自民党をも巻き込んだ新たな政党再編を伴うだろう。 連続的な闘い の組織化へ! われわれは当面、自公政権からの「チェンジ」を意識させることを主眼にした民主党政権の出発への民衆的期待、自公政権の退場による官僚体制の動揺がもたらすスペースを活用し、労働者派遣法の抜本改正、「貧困」問題の解消にむけた具体的な政策措置、米軍再編・沖縄の新基地建設阻止、自衛隊の海外からの撤兵、反改憲、気候変動問題などに関して要求を提示し、その実現を迫る大衆的運動を連続的に組織していく必要がある。このプロセスは、資本主義の限界が歴史的に露呈した時代に挑戦する新しい左翼オルタナティブ勢力を現実の運動を媒介に登場させていく機会でもある。 同時にこのプロセスを通じて、民主党政権が掲げる「改革」に危機感を燃やす階級勢力が、新たな反撃を強めることになる。極右排外主義グループの暴力的突出は、そうした時代的背景を持っている。「反日左翼に支配された民主党」という自民党の総選挙キャンペーンは、その一端を垣間見せた。 労働者・市民は、このような排外主義極右の進出を大衆運動の力で跳ね返すために全力をあげよう。十一月十二日の「天皇在位二十年奉祝」式典に反対する行動に結集しよう。 (純)
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