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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090915-00000645-san-pol
鳩山由紀夫民主党代表の論文「私の政治哲学」が、米国の批判的な反応を呼び起こした。月刊誌「Voice」(9月号、PHP研究所)に掲載された論文が、どのような経緯で米紙ニューヨーク・タイムズのウエブサイトなどに転載されたのか、検証した。
鳩山事務所によると、Voice誌に掲載された論文は、鳩山氏が政治哲学として掲げる「友愛」への理解を広げようと、鳩山氏側が7月にPHP研究所に持ち込んだもの。この論文の抄訳を、欧米メディアの中で真っ先に報じたのは、英紙フィナンシャル・タイムズだった。
掲載を知った同紙の東京特派員、ミュア・ディッキー氏は発売日の8月10日に9月号を購入し、「民主党代表が米国主導のグローバリゼーションを攻撃」との記事を執筆した。記事は翌11日付のアジア版などに掲載された。同氏は「次期首相と目される鳩山氏の考えを知ることは重要で、すぐに記事にした」と話す。
次に、フィナンシャル・タイムズ紙の記事をみて、米国の記事配信サービス会社「グローバル・ビューポイント」が動いた。同社編集局長のネイサン・ガルデル氏によると、日本での業務を委託している人物を通じVoice誌に転載の許可を求め、「民主党側も含め、転載を歓迎します」との回答を得たという。
ガルデル氏の依頼を受けた人物は大地舜氏。英作家、グラハム・ハンコック氏の世界的ベストセラー「神々の指紋」の翻訳者としても知られる。
大地氏によると、Voice誌側にはまず、電話で許可を求めた。ただ、そこで出した名称は「グローバル・ビューポイント」ではない。「『ロサンゼルス・タイムズ・シンジケート』の政治コラムに転載したい」と伝えたという。
「ロサンゼルス・タイムズ・シンジケート」も記事を配信しており、かつては米紙「ロサンゼルス・タイムズ」の一部門だった。大地氏が依頼を受けたグローバル・ビューポイント社は、シンジケート社の政治コラム、論説記事などを扱っているという。
「ロサンゼルス・タイムズ・シンジケート」と「ロサンゼルス・タイムズ」−。この名称のまぎらわしさが、転載の許可にあたり“誤解”を生んだようだ。
Voice誌編集長の中沢直樹氏は「『シンジケート』という言葉は記憶にない。依頼はあくまで『ロサンゼルス・タイムズ』紙だけへの論文転載という認識だった」と振り返る。一方、大地氏は8月12日付でVoice誌側にファクスで文書を送り「世界100の新聞に配信、15の言語に翻訳され、読者数は3千500万人になる」と説明したとしている。
Voice誌側は「転載の際には『Voice』のクレジットを入れればオーケー」と回答した。論文は鳩山氏のホームページに英語、韓国語訳とともに掲載されており、その英文を転載にあたっては使用するとの条件を付けた。論文は長文であるため、一部を省略することは可能だとした。
鳩山氏側への了承とりつけはどうだったのか。
中沢氏は鳩山事務所の芳賀大輔秘書に連絡し「ロサンゼルス・タイムズ紙に原稿が転載される。そのままでは長すぎるので、むこうが要約のような形にする」と伝え、了承を得たという。一方、芳賀氏は「版権があるので、(転載許可を求めた社は)PHP研究所との間でやり取りしたようだが、転載にあたり事務所に事前に許可を求めることはなかった」としている。
かくして論文は配信された。それは原文よりかなり短く、前後の順番が入れ替えられるなど手が加えられている。“加工”された「最終原稿」を、Voice誌と鳩山氏側はチェックしなかったようだ。
論文がニューヨーク・タイムズのウェブサイトに掲載されたのは8月27日。新聞そのものには載らなかった。また、厳密にいえば、ニューヨーク・タイムズが発行し、ウェブサイトは完全に同紙と統合されている国際紙「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」の掲載だった。
こうした経緯をみると、鳩山氏が「寄稿した事実はない」というのは確かだ。
論文はインターネットに乗り、瞬く間に世界に広がった。ガルデル氏は「鳩山氏側は論文が配信、批判され驚いたようだが、それは日本の島国性を示している。われわれは『地球的なガラス張りの家』に住んでいる」と指摘している。 (ニューヨーク 松尾理也、ロンドン 木村正人、外信部 犬塚陽介、政治部 松本浩史)
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