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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1758
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日本の新首相が警戒すべき相手は、野党ばかりではない。
民主党を圧勝に導いた闇将軍〔AFPBB News〕
8月30日に行われた総選挙で民主党が重大な勝利を収める前であれば、存命の政治家で日本の政治に最も大きな影響を与えた人物という栄誉はやはり、2001年から2006年まで首相として強烈な存在感を示した小泉純一郎氏に与えられていたかもしれない。
あの日以降となると、海外の多くの人は、その栄誉を9月16日に首相となる鳩山由紀夫氏に与えるかもしれない。
しかし実際のところ、民主党の地滑り的勝利を陰で組織的に支えた小沢一郎氏こそがその栄誉に相応しいとする根拠は、覆し難いほど強力だ。
国内外を問わず、小泉氏の知名度は民主党の2人より高い。同氏の巧妙な技は、自ら率いる自民党のために働いている時でさえ、党と戦っているように見せることだった。
だが小泉氏は大部分において、自民党の派閥が政治決断を独占してきた――近年では、政治決断を麻痺させてきた――戦後体制を壊すと謳った構想に対して、リップサービスしか払ってこなかった。
今になって振り返ってみれば、小泉氏は破壊の時を遅らせただけだった。その破壊を先日ついにやってのけたのが、若い議員候補を選抜して育て、自民党の大物にぶつけて落選させた小沢氏だった。今、自民党は滅亡の危機に瀕している。
半開きの目の下の黒ずんだたるみが放埒なワシを思わせる小沢氏は、20年近くも前からこの体制の破壊を追い求めてきた。「壊し屋」と呼ばれる小沢氏は1993年、同じ派閥のメンバーとともに自民党を飛び出し、自民党が史上初めて政権を失うきっかけを作った。
その時は、自民党は11カ月後に政権に返り咲いた。だが、今回のダメージはもっと長く尾を引きそうだ。
冷戦の終結後、小沢氏は1955年に始まった「自民党体制」が既にその目的を終えたことを認識した。小沢氏は一貫して、政権競争は2大政党の政策選択を巡って行われるべきであって、政治家の人となりや利権によって左右されるべきではないと主張してきた。この目標において、小沢氏は日本の政界きってのブレない政治家だろう。
しかし、現在67歳の小沢氏が歩んできた40年間の政治的キャリアの中には、ほかにも一貫したところがある。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1758?page=2
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それはマキャベリ的に影から物事を操ることを好む傾向、個人の力を見せつけたがる嗜好、他人の屈服を見て喜びを感じる非情さ、極端かつ唐突なリスクテーク、説明や協議をしないことに一切気がとがめない姿勢などである。
自民党時代、小沢氏は戦後最強の(そして最も腐敗した)政治家だった故田中角栄元首相のかばん持ちを務めた。田中氏は首相を辞任した後も自民党の最大派閥のトップに君臨し、日本の「闇将軍」であり続けた。
小沢氏はその田中氏から、見えない場所から権力を振るう方法を学んだ。小沢氏は派閥のリーダーとして、また自民党幹事長としてもキングメーカーだったが、ついに首相にはならなかった。ライバルたちは同氏をひどく嫌った。
だが、壊し屋は1993年に自民党政権を陥落させはしたが、意図せずして、自分が結成に中心的な役割を果たした、自民党に取って代わった政権をも葬り去ってしまった。権力層の不倶戴天の敵だったはずの社会党が、小沢氏の策謀に反発して自民党と手を組んだのである。これは尋常ではない出来事だった。
そして2007年、小沢氏は今度は自民党に連立を持ちかけ、再び仲間の政治家たちに衝撃を与えた。鳩山氏をはじめとする民主党首脳陣は震撼した。小沢氏が後に語ったところによると、同僚たちは同氏が自民党を内部から崩そうとしていることを読み取れなかったのだという。
以上のことはすべて今の民主党に関係してくる。小沢氏は、今年5月に自身の事務所で起きた政治資金規正法違反疑惑の責任を取って辞任するまで、民主党の代表を務めていた。代表を継いだ鳩山氏は、今、小沢氏を党幹事長に起用する意向を固めた。党内に強い力を持つポストだが、入閣はしないということである。
小沢一郎氏は参院選対策や新人議員の育成に専念するか・・・〔AFPBB News〕
鳩山氏によれば、小沢氏の任務は2010年の参議院選挙の指揮だという。また、小沢氏には経験の浅い多数の新人議員の指導者としての役割を期待する向きもある。
小沢氏がこうした仕事に専念してくれれば、鳩山氏は自分の仕事に取り組める。
何よりも、日本国民は8月30日に、より透明度の高い、説明責任のある政府を選んだのだ。自民党政権では、政府の方針が派閥の論理で覆されることも度々で、官僚が行き過ぎた権力を振るっていた。
鳩山氏は内閣に大きな権限を与えることを公約にしている。モデルとして引き合いに出されるのは、英国の議会政治だ。
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だが、中曽根康弘元首相に「ソフトクリーム」と酷評されたこともある鳩山氏は、まだ気概を見せていない。自民党の初代総裁・鳩山一郎元首相の孫だが、由紀夫氏は政治家としてはあまりに上品すぎる印象がある。それが小沢氏の援護を必要とする一因にもなっている。
小沢氏は今や党の財布を握っている。民主党の地滑り的勝利によって、小沢氏は大きな勢力を得た。大勢の新人議員が、小沢氏のおかげで当選できた。政治ニューズレター「インサイドライン」編集長の歳川隆雄氏によれば、小沢氏は140人あまりの「小沢チルドレン」を完全に掌握している。これはかつて田中派が最大規模だった時とほぼ肩を並べる数字だ。
もし壊し屋が本来の姿に戻れば、その圧倒的な影の力をもってして、政府を弱体化させることもできるのだ。
真の革命:今までと違う日本
しかし、小沢氏の権力は、恐らくは認識の問題だろう。鳩山氏が内閣主導の政府で明朗な政治プロセスの実施を試みれば、その光の下で小沢氏の闇の力も衰えるかもしれない。それに民主党の新人議員の全員が小沢氏に恩義を感じているわけでもない。民主党は公式には派閥を認めていない。
ただ、小沢氏のことを、目的達成のためには手段を選ばない革命者と捉えておくことも、有益だろう。実際、自民党を破壊することも、日本を「普通の国」にする、つまり自らの運命を決められる国にするという同氏の一貫した目標を実現するための1つの手段にすぎなかったのかもしれない。
20年近く前から小沢氏が主張してきたのは、日本の外交政策は敗戦以来の対米従属の上に成り立っており、すべてを、特に防衛を安価に済ませたいという願望によって形作られてきたということだ。
日本は将来、国益が米国と相違した時には独自の道を進まなければならず、全世界へ武力展開しようとする米国への協力を拒み、国連主導の任務にのみ参加するようにすべきであると、同氏は述べている。そして何よりも、日本はアジアの裏庭における地位確立に集中すべきだという。
鳩山氏も共有するこうした見解は、反米的なものではない。だが、数多くの前提の根拠を揺るがすものだ。例えば、小沢氏が丸くなり、その影響力も衰えていくとする思い込みもその1つだし、新政権はどれだけ切迫していようと、外交政策より国内政策を優先するだろうといった見通しもそうだ。
安保体制が常態的に続くものと期待している米国人は、この点に注意しておかなければならない。
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エコノミスト誌の英文記事はこちら ⇒
http://www.economist.com/world/asia/displaystory.cfm?story_id=14413298
Ichiro Ozawa: the shadow shogun
Sep 10th 2009
From The Economist print edition
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