政権交代で、日本郵政の西川体制が崩壊――というより崩壊させねばならない。西川善文社長と、それを支える一派への国民的不信感が、選挙で鉄槌を下したからには当然だろう。鳩山新首相の明言通り、「やめていただく」のが筋である。しかし、先の鳩山邦夫前総務相との対立劇にみられるように、西川氏のしぶとさ、鉄面皮ぶりは常人を超えている。土壇場になっても新政権が始末に困る火ダネがいっぱいだ。 <チーム西川の「画策」> 西川社長の下、「日本の専務」を豪語していた日本郵政の横山邦男専務執行役が、9月末日に退任する予定だ。横山氏は「チーム西川」、別名「4人組」のリーダーとして陣頭指揮を取ってきたが、西川氏ともどもその不透明な経営責任を問われていた。そこで、鳩山大臣更迭・西川続投のいわば「交換条件」として、横山氏を含む4人組の退任が決まったのが6月である。その際、後任の佐藤勉総務相との話し合いで、退任時期については「できるだけ速やかに」だったが、7月はもとより、8月になっても辞令が出ない。「あの西川社長のこと。何か画策しているのでは」という声が郵政内外から上がりはじめ、さらに総選挙での民主圧勝が確定的になった8月27日になって、やっと9月30日付での退社が決まった。 それまで「チーム西川」は生きていることになるが、彼らをそこまで引っ張る西川氏の狙いは、その日のうちにあからさまだった。 まず「チーム西川」解体後、あるいは自らの退任の可能性をも視野に入れた人事である。同日の取締役会で新たに取締役会長ポストを設け、社外取締役の西岡喬・三菱重工相談役を選任したからだ。つまり、自分たち住友グループが後ろに引いても、あとは三菱グループが引き継ぐ、という意志表示である。 郵政民営化後のもっとも巨額な事業の一つが、各地の中央郵便局跡地を利用した再開発事業だが、そこでは三菱グループと住友グループが手を組んでいる。 「両グループの不動産部門が、民営化前から再開発事業で密談していたのが目撃されている。西川社長が退く事態になっても、そのとき決めた方針は西岡会長体制で遂行するということですよ」(郵政関係者)。 もともと会長職の新設は6月の業務改善計画に盛り込まれ、3カ月以内に選任することになっていたもの。それに対して、佐藤総務相は外部からの起用を求めていた。しかし、「外部からの招請が間に合わないために内部から選んだ」というが、時間切れを理由に仲間内を選任するのは、かんぽの宿をオリックスへ譲渡しようとしたのと同じ。いかにも西川郵政らしい姑息さだ。 (つづく) 恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】 1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。
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