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http://news.livedoor.com/article/detail/4341283/
山口一臣:民主党小沢支配はなぜ、悪いのか?
2009年09月10日12時48分 / 提供:THE JOURNAL
先週から今週にかけて新政権の骨格がだいぶ固まってきたようだ。
いちばん最初に漏れてきたのが小沢一郎民主党代表代行の幹事長就任だった。振り返れば2007年の参院選を指揮して与野党逆転に持ち込み、先の衆院選で単独過半数を制し、政権交代を成し遂げた最大の功労者だ。政権の長期安定を賭けた来年の参院選への備えを考えれば、わたしのような素人でも理解できるきわめて妥当な人事だと思う。
にもかかわらず、翌日の新聞はどこも判で押したように「党内には権力の二重構造を懸念する声が広がっている」という趣旨のことが書かれていた。わたしの見た限り、「権力の二重構造」という文言を使っていない新聞はひとつもなかった。ところが、いったい党内の誰が「懸念」を表明しているのか、どこを読んでも書いていない。かろうじて「中堅、若手」とか「小沢氏と距離をおくグループ」といった表現があるが、それだけだ。
要は、匿名の不満分子が文句を言っているという話なのだ。
だとすると、果してそれを報じる価値があるのだろうか、という疑問がわく。
どんな組織にも不満分子はいるし、下っ端が酒を飲みながら上司の悪口を言うのはサラリーマン社会のごくありふれた風景だ。新聞がことさら取り上げることでもないだろう。また、組織が何らかの決定をしたとき、その決定に対する「懸念」があるのも当然だ。将来に対して何も懸念も不安もないほうがおかしい。
もし、匿名の「中堅、若手」ではなく、岡田克也氏や菅直人氏といった幹部クラスが小沢氏の幹事長就任に対して「懸念」を表明しているというなら話は別だ。ところが、そんな話はどこにもない。要は、サラリーマンの飲み屋の愚痴レベルの話なのだ。
実は、これはわたし自身の反省も込めて言うのだが、こうした報道のありようは「メディアの思考停止」ではないかと思っている。メディアには、「小沢一郎」といえば「剛腕」「壊し屋」「独断専行」と、考えもせず、自動的に書こうする癖がある。あるいは「竹下─金丸ラインの申し子」とか。もちろんそれは間違いではないが、いったい何年前の話だというのだ。
最近の似たような例でいうと、「のりピー」といえば「清純派アイドル」というのがある。ほとんど何も考えずに使っている。しかし、のりピーこと酒井法子はすでに数年前から薬物を常用し、行動に異変が見られたという。芸能界に詳しい若い記者の間では、数年前からのりピーの薬物疑惑は広まっていたようだ。つまり、のりピーが清純派アイドルというのは、ここ数年の酒井法子の言動についてほとんど取材ができていなかったことを告白しているに過ぎないのではないか。話を戻そう。
「権力の二重構造」が問題となったのは16年前の細川連立政権でのことである。しかし当時といまでは状況がまったく違う。細川連立政権は少数党の集まりだったが、いまの民主党は堂々の単独過半数を制している。小沢氏自身もこの間、さまざまな経験をしたことだろうし、16年前の出来事がそのままいまの「懸念」になると考えるほうがおかしいと思うのだが、いかがだろうか。
新聞がどこも、党内に懸念が広がっていることを前提に、16年前のできごとを解説するパターンの記事を載せていることに強い違和感を感じる。週刊誌屋のうがった見方かもしれないが、新聞が産経から朝日まで同じような論調の記事を書いているときは、ウラにきっと何かあると思う。それは、民主党政権が新聞業界全体にとって面白くないことをしようとしているとか......おっと、それについてはまた稿を改めて書こうと思う。
ついでに言うと、「小沢支配」という言葉も気になる。新聞でこの言葉を見ない日のほうが珍しいくらいだ。「小沢支配が強まる」「小沢支配への懸念が広がる」......と、だいたい「二重権力」と同じような使われ方をしている。だが、小沢支配が強まるといったいわたしたちの生活にどういう不都合が生じるというのだろう。新聞のどこを読んでも書いていない。ただ、小沢支配が広がると悪いことが起きるかもしれないという印象だけが残る。本当にそうなのか?
そもそも「小沢支配」とはどういう状況を指しての言葉なのかもわからない。
小沢氏が一人で勝手に重要な決定をして、それを鳩山氏や菅氏や岡田氏らに押しつけているというのだろうか。大の大人の集まりで、そんなことが実際にあるだろうか? それは選挙に勝ったことを背景に発言力が増したり、意見が以前より尊重されるということはあるだろう。それをもって「小沢支配」というのも、わたしには違和感がある。
もちろん、本当に小沢氏が党を私物化していたり、支配している実態があるならそれはきちんと伝えるべきだ。批判すべきことがあれば批判すべきだ。たとえば、小沢氏が幹事長権限で党のカネを個人的な事業に流用しているとか、親類縁者を党職員に採用したり役職に就けたりして小沢王朝をつくろうとしているとか。とにかく、事実・実態があれば書くのは当然である。だがいま、わたしが言うような「小沢支配」というような事実・実態があるのだろうか。はなはだ疑問だ。
さらに付け加えれば、「圧勝した民主党が数にモノを言わせて傲慢に振る舞えば......」というような言い回しも目につく。いったい日本のメディアはどうしちゃったんだろう。選挙は民意の反映で、議席が増えれば発言力が増すのはきわめて合理的だ。少数意見の尊重はもちろん大事だけど、少数党がキャスチングボートを握ったというだけで大きな声を出していることのほうが不合理だと感じるのだが......。
まあいずれにしても、いま世の中の人は自らが選んだ新政権がどんなことをしようとしているのか、固唾を飲んで見守っていることだろう。それだけに、間違った先入観を与えないよう、正確な実態を伝える努力が大切だ。本格的な政権交代は戦後初めてのことだから、何から何まで未経験のことばかりだ。そんな先が見えない、変革のときだからこそ、こういう安易なワーディングは気をつけなければと、自戒を込めて思うのだ。(いや、ホント他人のことは言えません。自戒を込めて......)。
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