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http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20090826k0000m070141000c.html
記者の目:細川政権の失敗から見た今回の選挙=倉重篤郎
新聞社は罪深い。世論調査予測による「民主300議席」報道が独り歩きしている。「民主の取り過ぎ」を調整する動きが有権者の間で生まれるかもしれない。だが、大勢に変化はないだろう。むしろその後のことを考えたい。
「遅ればせながらの政権交代」というのが、30日出るであろう選挙結果に対する私のイメージだ。なぜならば、96年に始動した小選挙区主体の現行選挙制度は、2大政党化と両者による政権交代を促進させる目的で導入されたものだからだ。各選挙区の当選者を最高得票者1人に絞り、他を切り捨てることによってその時々の民意を増幅・強化する。05年の小泉純一郎首相による郵政選挙は、それが政権強化方向に出た一例だ。
問題は制度だけではない。自民党という反共、高度成長を体現してきた政権政党の存在意義、能力の低下がある。私見だが自民党は90年の冷戦、経済バブルの同時崩壊でその使命を終えていた。
実際93年には細川護熙(もりひろ)非自民政権の誕生を許し、政権に復帰してからも郵政選挙を除くその後3回の衆院選での議席獲得能力はいずれも過半数を割り込む230台(96年239、00年233、03年237)だった。にもかかわらず政権の座に居座り続けた秘密は、公明党の議席・票の取り込み、小泉効果もさることながら、権力の内輪でのたらい回しを交代に見せかける「疑似政権交代」というノウハウにあった。この仕組みが小泉後3代連続の1年交代劇で破綻(はたん)した。元首相の孫、息子、孫というDNAリレーがかえって人材払底を露呈させた。
民主党が政策、人材両面で政権担当能力を向上させてきたことも大きい。特に今回のマニフェストは出来がいい。子ども手当5兆円をバラマキとは思わない。少子高齢化に対応し限られた社会共通の資源を子育てに重点配分する。選択と集中を伴った良策だ。農家への所得補償、高速無料化、高校授業料無料化もしかり。官僚天下りの受け皿を通さず国民の懐へ直接支給する、という発想も健全だ。これに必要なカネ17兆円は官僚会計の無駄からすべて調達する、自信あります、というのだから、まずはお手並み拝見ではなかろうか。
制度による誘導、両党の盛衰からして至極当然のことが起こらんとしているだけである。選挙による政権交代は民主国家の証明、という常識からも驚き慌てることはない。
我々が心を砕くべきは、政権交代をどう成功させるか、という冷静で成熟した視点だ。1年足らずで幕を閉じた16年前の細川政権を思い起こそう。致命的な失敗が二つあった。悲願の選挙制度改革達成後の課題設定(国民福祉税構想など)が付け焼き刃だった。細川首相以上に小沢一郎氏(当時新生党代表幹事)が権勢をふるい権力構造が二元化、混乱の引き金になった。
後者は今回も似た状況にある。衆院選で誕生する100人規模の小沢チルドレン。来年の参院選も小沢氏主導で系列議員を増やすだろう。問題は両院で多数派を握ることになる小沢氏が同じ過ちを二度繰り返すほど愚かかどうか。
いずれにせよ政権交代の妙味は、従来の政権ではできなかったが政治にしか解決できない中長期の課題設定とその実現にある。それを二つ挙げたい。いずれも10年越しの力仕事だが、民主マニフェストに方向性が明示されている。
一つは、経済システムの持続可能化である。円安・外需依存・成長率重視という日本経済の発展モデルは、新興国台頭、地球環境・エネルギー制約という大きな壁に突き当たっている。円高メリットを生かし、内需をうまく回転させ、GDPだけに頼らない幸せ感をどう作り上げるか。社会保障制度の持続可能化も大仕事だ。10人が1人のお年寄りに仕送りする年金制度(80年実績)が3人で1人(13年予測)という時代に破綻するのは子どもでも計算できる。民主案を軸に粘り強い与野党協議を重ね、抜本改革に挑戦する貴重なチャンスである。
2点目は日米関係の対等化である。外交・安全保障は米国に委ね自らは経済発展に専心する、という吉田茂元首相の路線は高度経済成長という世界に例のない成功体験を生み出したが、国家としての自主性を著しく劣化させたのも事実である。バランスの良い見直しが必要だ。ではどうするのか。在日米軍基地の扱いと日本の外交力強化がカギを握るだろう。核の傘から普天間移転まで現在進行形の難題も山積するが「緊密なる対等化」というキーコンセプトは正しいと思う。明治維新、戦後復興に匹敵する知恵とエネルギーが必要かもしれない。
マニフェストにないことを一つ追加する。自民党の再生的出直しである。民主党政権を鍛え上げるためにもどうしても必要だ。そのための核になる人材をいかに残すか。これまた選挙民の仕事である。(論説室)
毎日新聞 2009年8月26日 0時10分
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