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(回答先: 最高裁国民審査でだれにバッテンつけるか?(クマのプーさんブログ) 投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 8 月 25 日 10:39:11)
★資料1(法学館憲法研究所)
http://www.jicl.jp/now/saiban/backnumber/sendai.html
仙台・北陵クリニック事件
2007年10月29日
仙台・北陵クリニック事件とその裁判について日本国民救援会宮城県本部よりご案内いただきましたので、ご紹介します。
なお、11月2日に東京都内でこの事件についての学習集会(PDF)が開催されますので、ご案内します。
(法学館憲法研究所事務局)
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仙台・北陵クリニック事件とは
宮城県仙台市泉区にある北陸クリニック事件で准看護師をしていた守大助さんが2000年10月31日に当時11歳の患者 (A子さん)の点滴に筋弛緩剤「マスキュラックス」 (商品名) を混入し、そのため少女が植物人間状態に陥ったとして殺人未遂事件 (第1事件) で01年1月6日に逮捕され、のちにこの事件を含む4件の殺人未遂、1件の殺人で逮捕・起訴された事件です。
事件の争点と弁護団の主張
(1) 事件の争点
事件の争点はいくつかありますが、中心的な争点は以下の3点です。
【1】筋弛緩剤の投与が患者の急変の原因か? 警察の鑑定は正しいのか?
【2】守さんが犯行を行なった証拠があるのか?
【3】筋弛緩剤を点滴投与することに殺傷能力があるのか?
この事件では、守さんが筋弛緩剤を混入したとする捜査段階での一部供述 (弁護団は、供述の任意性、信用性で争っている) を除けば、守さんと犯行を直接結びつける証拠はいっさいありません。
検察は、【1】クリニック内で守さんが点滴に関わった患者が急変したとする病院関係者の供述、A起訴した5件の5人の患者の血液、尿、点滴ボトルから筋弛緩剤マスキュラックスの主成分であるベクロニウムが検出されたとする大阪府警科学捜査研究所の鑑定書 (弁護団は全面的に争っている) で、守さんの犯行を立証しようとしています。
(2)弁護団の基本的主張
弁護団は、起訴された5件を含む、当初検察が主張していた10数件について、守さんはもちろんのこと、何者か (医療スタッフの誰か) が筋弛緩剤を患者に投与した事実は存在 しない。 患者の容体急変は、すべて他の原因 (病気、薬剤の副作用、または気管挿管の救急処置をとることができる医師の不在などの医療過誤) で説明できると主張しており、筋弛緩剤を投与したときの薬理効果のあらわれ方と実際の患者の症状とは多くの点で矛盾すると反証しています。
守さんはなぜ無実といえるのか
(1)検察は点滴のマスキュラックスの濃度、 点滴の速さを立証していない
通常筋弛緩剤は、手術の時などに、静脈に直接注射 (三方活栓を使う場合もある) して使用するものであり、体重差などで効果には個人差があります。マスキュラックスの説明書には「排泄 (はいせつ) 半減期は11分±1であり、短時間で代謝または排泄されて血中から消失する」と記述されています。
したがって、筋弛緩剤を点滴で体内にゆっくりと入れた場合は、体内に入ると同時に排泄されるので、その効果は少なくなる、と多くの専門家は指摘しています。
万一、検察が主張するように、点滴投与が患者の急変の原因になるとしても、犯罪を立証するためには、具体的にどのくらいのボトル (何リットルの点滴溶液) にマスキュラックスをどの程度混入したのか、点滴の速度はどうだったのか立証されなければならないのに、 乙の点について検察はいっさい立証していません。
(2)警察の鑑定 は信用できない
【1】鑑定方法への疑問
鑑定は、大阪府警科学捜査研究所で行われました。鑑定には1mlあれば十分だと言われているのに、患者の血清、尿、点滴ボトルの全ての資料が消費されたことです。これは犯罪捜査規範18 6条に自ら違反するものです。弁護団は再鑑定ができなければ、本当に筋弛緩剤が混入されていたかどうかはもちろんのこと、証拠物とされている資料が本当5件の患者のものかどうかについての検証も不可能となり、鑑定結果の信用性を否定するものと厳しく批判しています。鑑定資料となった血清や尿が本人のものであるかどうかのDNA鑑定、血液検査さえ行われていません。実験ノートもないという杜撰なものです。
【2】警察鑑定には証拠能力も証明力もない
警察鑑定では「まず筋弛緩剤の主成分であるベクロニウムそのものの質量分析をおこない、その際出てきたデータ (m/z258) を基準値として、 患者の資料を質量分析した結果、 ベクロニウムが混入されている」と結論づけています。
ところが基準値とされたデータ (m/z2 58) はベクロニウムとはちがっており、ベクロニウムの正しいデータはm/z557、あるいはm/z279なのです。弁護団は二審で、世界最大の文献サイトの学術論文も示し、警察鑑定のデータの違いを指摘。また福岡大学影浦教授によれば、外国論文と全く同じデータである実験結果が得られ、警察鑑定のデータがちがっていることを指摘していますが、その鑑定意見書も提出しました。
さらに宮城県警と東北大との共同研究論文によれば、ベクロニウムの質量分析結果のデータm/z279. 2あるいはm/z557. 5が明記されており、弁護団とおなじデータなのです。
仙台高裁田中亮一裁判長は、このように疑問のある警察鑑定について何ら検証もせず、ベクロニウムの鑑定請求も却下し、有罪判決を重ねたのです。
いよいよ最高裁で、鑑定問題が最大の争点になっています。
弁護団は上告趣意書、補充書 (1) で警察鑑定についてさらに考察をすすめています。すなわち警察鑑定は、単に検出対象物を誤っただけではなく、本来検出されるはずのない化合物が検出されたとしている点 (定性分析)、また定量分析についても血清および尿内のベクロニウムが定量できたのか、実際に定量をおこなったのか疑問を提しています。
これに対し最高検察庁は答弁書のなかで、何ら根拠も示すことなく m/z258はあくまでベクロニウムであると開き直っています。
『手法自体に再現性のない警察鑑定』『ベクロニウムは検出されていない警察鑑定』、このような鑑定を根拠にして犯罪事実を立証することはできない。これが弁護団の結論です。 最高裁には科学的な判断を迫っていかなければなりません。
国民の裁判を受ける権利を侵害する
守さんの裁判は一審では週2回のハイペースで公判が開かれました。 2001年 7月11日の初公判以来155回の公判があり2004年3月30日が判決でした。
さらに二審では1人の証人尋問の他は実質審理はほとんどなく、被告人質問も弁護人の最終弁論の機会も認めず、4回の公判をひらいただけで有罪判決を出したのです。
一、二審を通じて裁判所は、証拠の全面開示や再鑑定の求めにも応えず、「迅速な審理」 の名目で結論を急ぐあまり、「科学的な審理の探究」を放棄し、国民の裁判所に対する信頼を裏切ったものと厳しく指摘されなければなりません。これでは裁判所自身がえん罪を正すどころか、えん罪を生み出す機関になってしまったといえるのではないのか。
いつ、えん罪にまきこまれるか、危うい社会
この事件は、 警察が思いこみ捜査により証拠も鑑定もないまま一人の青年を逮捕し「事件」をつくりあげ、7年近い青春を奪っているものです。こんなことが許されていいはずがありません。最近の相次ぐえん罪の報道で、違法な取り調べが告発されていますが、守さんの取り調べもまったく同様なものでした。そこで作られた 「容疑を認める供述書」について、4日目からは撤回、以後守さんは一貫して無実を叫んでいます。えん罪のおこる社会は誰もが安心して暮らせる社会とはいえないのではないでしょうか。
一人でも多くの方に北陸クリニック事件について真実を知っていただきますようお願いいたします。
仙台・北陵クリニック事件資料
<事件の経緯>
1999 年
2月 守さんが北陵クリニックへ就職
2000 年
2月 2日 女児(1)急変、回復
10月 31日 A子さん(11)急変、重症
11月 13日 男児(4)急変、回復
11月 24日 下山雪子さん(89)急変、死亡
11月 24日 男性(45)急変、回復
12月 4日 守大助さんが (半田教授の要請に応じ)北陸クリニックを退職。夜に忘れ物を取りにクリニックへ行った際宮城県警警部補から、後に問題となる赤い針箱の件で職務質問を受ける。
2001 年
1月 6日 宮城県警が守大助さん他2名の北陵クリニック職員を任意同行で取り調べ。 守大助さんが容疑を認める供述。A子さん(11) の殺人未遂容疑で逮捕。
1月 9日 守大助さんが否認に転じる。
1月 26日 下山雪子さん(89) に対する殺人容疑で再逮捕。
2月 16日 女児(1)に対する殺人未遂容疑で再逮捕。
3月 9日 男性(45)に対する殺人未遂容疑で再逮捕。
3月 30日 男児(4) に対する殺人未遂容疑で再逮捕。
7月 11日 仙台地裁で初公判。
9月 24日 仙台弁護士会が地検、県警、拘置所へ人権侵害の警告勧告書。
2003 年
11月 18日 仙台弁護士会が大手新聞4社に対し、守さん逮捕当時の犯人視報道その他について勧告書を提出。
19、25、28日
150回の公判を経て検察側が論告求刑公判で無期懲役を求刑。
2004 年
2月 9、10日
最終弁論で弁護側が無罪を主張。
3月 30日 仙台地裁が無期懲役の判決。
弁護側即日控訴。
2005 年
6月 15日 仙台高裁で控訴審初公判。
7月 29日 守大助さんの接見禁止がようやく解除。
10月 5日 仙台高裁が第4回公判で弁護側の鑑定請求を却下し結審。
2006 年
3月 22日 仙台高裁が控訴棄却の判決。
弁護側即日上告。
12月 弁護団が上告趣意書提出。
2007 年
5月 弁護団が上告趣意補充書(1)を提出。
6月 弁護団が上告趣意補充書(2)を提出。
8月 31日 最高検、答弁書提出。
<上告趣意書及び補充書(1)、(2)の目次紹介>
■上告趣意書 目次
第一点
原判決には、判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認があり、これを破棄しなければ著しく正義に反する。
第1 本鑑定には証拠能力も証明力もない。
第2 病状と経過は薬効に符合しない。
(事件性・病態症状論)
第3 証拠隠滅行動はない。
(証拠隠滅論)
第4 マスキュラックスの行方不明とは無関係。
(行方不明論)
第5 被告人の自白等の供述は無実の徴憑。
(自白論)
第6 誤った思い込み捜査とその過程。
(捜査過程論)
第7 判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認。
(まとめ)
第二点
原判決には、憲法違反があり、破棄されなければならない。
第1 本件各鑑定を肯定することは被告人の防御権の侵害であり、憲法違反となる。
第2 弁論権の侵害は憲法に違反する。
■上告趣意補充書(1) 目次
はじめに
1 東北大学論文 (パンクロニウム、 ベクロニウム及び関連化合物の LC-ESC-MS を用いた同時判定) について
2 土橋の検出した化合物はベクロニウムではない
3 土橋の検出した化合物は何か
4 土橋鑑定において30Hベクロニウムを検出した経過
5 鑑定資料からの30Hペクロニウム検出に対する疑問
6 土橋鑑定書の問題点
7 おわりに
■上告趣意補充書(2) 目次
第1 はじめに
第2 大島綾子の症状は中枢神経の障害
第3 中枢神経症状は筋弛緩剤の薬効では説明できない
第4 症状の原因は代謝性脳症
第5 急性間欠性ポルフィリン症の可能性
第6 病態・症状の原因解明を行なわない拙速捜査
第7 結論 (1、2審有罪判決は破棄を免れない)
※上告趣意書及び補充書をご覧になりたい方は事務局までお問い合わせください。
発行:無実の守大助さんを支援する首都圏の会
〒168-0081 東京都杉並区宮前5-9-24 サンハイツ宮前210 藤沢方
TEL:045-663-7952 FAX:045-663-7953
●資料2:事件はなかった 弁護士 驚きの説明〜「仙台北陵クリニック事件」勉強会で
(JANJAN)
http://www.news.janjan.jp/living/0705/0705024800/1.php
事件はなかった 弁護士 驚きの説明〜「仙台北陵クリニック事件」勉強会で
ひらのゆきこ2007/05/03 守さんは逮捕から3日後には否認に転じ、その後一貫して無実を主張しています。「無実の守大助さんを支援する首都圏の会」は4月28日に勉強会を開催しました。
4月28日(土)午後1時より品川第一地域センター区民集会所で、仙台北陵クリニック事件の被告人の守大助さんを支援している「無実の守大助さんを支援する首都圏の会」による勉強会が開催されました。
事件について語る阿部泰雄弁護士
仙台北陵クリニック事件とは
01年1月、仙台の北陵クリニックの準看護士だった守大助さんは、小6女児の点滴に筋弛緩剤を混入したとして、殺人未遂容疑で逮捕、起訴されました。その後、さらに4人の殺人及び殺人未遂容疑で逮捕、起訴が繰り返され、計5件で逮捕、起訴が繰り返されました。
当初、守さんが犯行を認めたということで、準看護士の立場を利用し、仕事上の不満解消などの理由で約20人の患者の点滴に筋弛緩剤を混入し、約10人を殺害したとして、マスコミなどで大々的に報道され、世間を騒がせました。しかし、守さんは逮捕から3日後には否認に転じ、その後一貫して無実を主張しています。
1審(仙台地裁)では全面無罪を主張する弁護側と検察側が対立、激しい争いとなりましたが、04年3月、無期懲役の判決が出ました。2審(仙台高裁)ではわずか4回の公判で、弁護側の証人、証拠、鑑定請求は却下され、被告人質問も認められないままに結審し、06年3月、控訴棄却の判決となりました。弁護側は即日上告しました。
事件は本当にあったのか
4月28日の勉強会は、支援の会の事務局から活動報告のあと、阿部泰雄弁護団長から事件についての概要説明がありました。阿部弁護士は、「逮捕されたとき29歳だった守君は獄中で36歳の誕生日を迎えました」と語り、無実を訴える守さんのメッセージを読み上げました。次いで、この事件について裁判の審理を通して明らかになった事実を詳細に語ってくれました。
阿部弁護士は、守さんとの最初の接見で「(筋弛緩剤の)入手方法について話してみなさい」と聞いても守さんが答えることができず、「やったんなら映像の記憶あるでしょ?」と聞いても、「はあ」と言っているだけで、事件について守さんがなにも話すことができなかったことを明らかにしました。守さんは寝不足ですごい顔をしており、連日の取調べでマインドコントロールにかかりかけていたそうです。いったん認めると覆せないということを話すと、守さんは「先生、俺、やってねえんだよね」と言ったそうです。
その後は否認に変わり、1通の調書にもサインをしなかったそうです。調書に署名をしてしまえば終わりなので、もし弁護士が接見しなければ終わりだったと述べ、「50通の調書は矛盾だらけで、ディテールがまったくなく、体験していないためにしゃべることができなかった」と断じました。阿部弁護士は「警察や検察が指導する前に我々がストップをかけた」と述べ、たいへんきわどい状況であったことを明らかにしました。また、守さんの書いた反省文には重大な捜査上の真相が隠されていたことを明らかにしました。
阿部弁護士によると、守さんが関わったとされる殺人及び殺人未遂の容疑について、その死因はすべて説明できるそうです。小6の女児については、大変症状が似ているが筋弛緩剤による病変ではなく、ほかの病気の可能性が高いこと、また、89歳の女性の死因については、当時、北陵クリニックの院長で内科医だったN医師が「心筋梗塞」という診断書を書き、守さんを通じて家族に渡しているそうです。
事件もなければ、被害者もいない
調べていくうちに、阿部弁護士は「守さんじゃない。なんだろう、この事件。真犯人はだれだろう」と思ったと述べ、筋弛緩を投入したといわれる89歳の女性のカルテには心筋梗塞という病名が書かれていること、また点滴に筋弛緩を100CC入れて1時間落として果たして効くのかといった疑問が生じたことなどから、「これは事件じゃない。この事件は怪しい。起訴するのはおやめなさい」と検察に不起訴裁定申入書を出したそうです。しかし、(警察のリークによって)大報道をかましたあとだったため、引っ込みがつかなくなった検察は起訴に踏み切ったと述べ、この事件は「事件もなければ被害者もいない、警察と検察によってつくられた事件」であるとの認識を示しました。
「ちらつくのは、医療過誤、投薬ミスであり、事件じゃない。(刑事事件で事件が存在しないというのは)日本の冤罪事件史上まれなケース」であると述べ、「有罪を支えているのは、患者の急変が筋弛緩の症状に似ているという鑑定の結果であるが、なぜ、筋弛緩と特定できるのか、病院内で急変しただけで筋弛緩といっていることが、この事件のキーポイント」と述べ、単に症状が似ているというだけで筋弛緩としたことに大きな判断の過ちがあったことを指摘しました。。
薬の在庫が合わないとか、老人の死亡と幼児の急変が守さんの当直や日勤のときに起こっているなど、重なりあう部分は多いが、この病院は薬剤師がいないので在庫の管理ができていなかったこと、また、守さんは独身なので経済的な事情もあり当直をする回数が多かったこと、さらに、この病院は経営難(13億の借金を抱え、年数千万円の利払いに追われていた)に陥っており、台所は火の車で、19床のベッドを満床にするため、特別養護老人病院の患者を受け入れ、最後まで看取るということをしていたことなど、「患者の死亡について説明はすべてつく」と語りました。
基礎疾患による病変や自然死などで、80歳代から90歳代のお年寄りが病院で亡くなることは当たり前のことであり、医師も看護師も不審に思った人はいなかったこと、N医師も急変と死亡については「すべて説明がつく」と法廷で証言していること、また、幼児については、当時、この病院の実質的な経営者であった東北大学教授のH医師の小児科医の妻(北陵クリニック副院長)が緊急処置ができないため、仙台市立病院に救急車で運ばれるということがあり、「緊急処置ができないのは医療過誤だ」とする救急隊員の証言が公判で裏付けられたそうです。
N医師も「筋弛緩剤で人が殺されることはない」と述べ、「いまにも死にそうな人が次から次へと(この病院に)運ばれてきた。殺人とは違う」と法廷で証言しているそうです。「1件も不審なケースはない」とするN医師の証言に対し、N医師がおかしいというのが2審の判決だったそうです。小6の女児については、日本医大の医師が筋弛緩の初期症状と似ているが、異なる所見が出ていることから「絶対、筋弛緩ではない」と証言していることを明らかにしました。
なぜ捜査の対象になったのか
11月30日、仙台市立病院から、H医師の妻の小児科医は「(緊急処置ができないため)あんたの病院はどうなってるんだ。このままいくと大変なことになる」と厳しく叱られたそうです。その夜、H医師は東北大学の法医に相談し、翌12月1日、法医は県警本部に行き、捜査が開始されることになります。
このときH医師と法医がどんな会話を交わしたのか、また、法医がどのようなことを県警に言ったのか、明らかにはなっていないものの、H医師夫妻や関係者が最初から医療過誤を隠蔽するために守さんを陥れようとしたものではない、と阿部弁護士は明言しました。
事件がデッチ上げられるまで
その理由について、守さんが退職した直後に病院へ来たとき、住居侵入で警察が別件逮捕しようとするとH医師夫妻が反対していること、また、法医はH医師から相談を受け、法医としての告発義務を果たしただけであったかもしれないこと、また、警察は告発を受け、法医という権威のある人物が「犬殺しは出ないよ」と言ったことに対し、筋弛緩だと思い込み、さらに被害が及ぶことを恐れて捜査を開始したと主張していることなど、守さんが逮捕される1月6日までの時点では、関わっている人たちのだれも悪意はなく、善意であったということを阿部弁護士は重ねて強調しました。
しかし、「その後は悪意」であると述べ、医療過誤の問題、捜査の面子の問題、東北大学の関係者などの証言など、関係者の様々な思惑がからみあって、(守さんを有罪にするために)事件が推移していったのではないか、との考えを述べました。医療がらみの案件で捜査の段階でカルテを見ないで逮捕したことに対しては、「そんな捜査があるか」と捜査のずさんさを厳しく指摘しました。
阿部弁護士の現在の結論
「1月6日までは全員に悪意はなく、善意だった。悪意に変わるときは、事件を前に向けなければならなくなったとき。H医師夫妻は巻き込まれていく。12月4日に守さんを退職させるように、警察からH医師夫妻に言っている。法医から連絡がきた直後に警察は守さんに疑いを抱き、シナリオを描いた。物証は得られないという考えがあり、捜査していない。守さんが関わった事件が筋弛緩ではないかと疑い、きちんと調査をせず、思い込みで逮捕してしまった」
事件は警察の思い込みによる誤認逮捕であるとした上で、有罪を支えている警察の鑑定データには過ちの疑いがあるため、再鑑定を申し出た弁護側の主張は高裁では退けられた、として、高裁の拙速な審理を厳しく批判しました。
筆者の感想
「質疑応答の勉強会」ということだったので、阿部弁護士のお話の最中、活発に質問が出ました。メディア関係者の人たちからの質問は、この事件は、医療過誤、借金問題、補助金をもらっている問題で窮地に陥っていたH医師夫妻が、すべて守さんに罪を押し付けようとしたものであり、法医も結託しているのではないか、というものでした。
筆者も一部の週刊誌などを読み、この事件は冤罪で背後にH医師夫妻の存在を示唆する記事を読んでいたので、同様の感想を持っていました。「事件性も被害者もいない。真犯人もいない」という阿部弁護士のお話を聞き、大変驚きましたが、あくまでも裁判の審理の中で明らかになった事実に基づいて説明している阿部弁護士のお話は説得力がありました。
疑問に思ったのは、6年前、この事件を大々的に報道したテレビや新聞が、その後の経過についてほとんどまったくといっていいほど報じていないことです。一部のメディアは冤罪事件であることをうかがわせるような報道をしていますが、阿部弁護士が話したような内容について報じるものは寡聞にして筆者は知りませんでした。
阿部弁護士が指摘していたように、メディアが大々的に報道してしまったために、検察が引っ込みがつかなくなって守さんを犯罪者に仕立て、関係者を巻き込んでいったとしたら到底許されることではありません。警察や検察同様、メディアの責任もきわめて大きいといわざるを得ません。あのとき、どのような裏づけがあって守さんを犯人と決め付ける報道をしたのか、沈黙を守り続ける多くのメディアはそのことを明らかにする責務があると思いました。
守大助さんを救うために、最高裁宛の要請署名が14000人、上告書が1400通出ているそうです。「これだけでは裁判所へのインパクトが足りないので、更なる支援をお願いしたい」という支援の方からの呼びかけがありました。また、社会から6年も遮断されている守さんを励ますために、面会や手紙を出してあげてほしいとの訴えがありました。
連絡先
無実の守大助さんを支援する首都圏の会
TEL 045−663−7952
FAX 045−663−7953
※ 要請署名と上申書はインターネットからダウンロードできます。
http://homepage2.nifty.com/daisuke_support/request.htm
※ 次回の勉強会は6月12日(火)午後6時半、藤沢市民会館で。
仙台から守大助さんのご両親が訴えに参加するそうです。また、事件の経過や検察側主張がどんなにいい加減かよくわかるビデオも上映するそうです。
◇ ◇ ◇
関連サイト:無実の守大助さんを支援する首都圏の会、など
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