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http://www.asahi.com/politics/update/0821/TKY200908200354.html
民主、300議席をうかがう勢い――。朝日新聞が20日報じた総選挙の序盤情勢調査で、各党に衝撃が走った。世論の風向きは、自民党が大勝した05年郵政総選挙と全く逆方向。民主党は揺り戻しを警戒して手綱を締め、自民党は「政権交代旋風」に吹き飛ばされないよう必死だ。 ■民主幹部ら「揺り戻し」警戒 「政権をとって、まず1期4年やらせていただくなかで、消費税の増税などは全く必要ない政権をつくる」 民主党の鳩山代表は20日、島根県出雲市で演説し、政権交代への意欲を強調した。ともに演説に立った国民新党の亀井久興幹事長は朝日新聞の情勢調査にふれ、こう鳩山氏を持ち上げた。 「今のままでいけば政権交代は間違いない。鳩山首相が誕生する」 政権交代への期待の高さは民主党候補も戸惑うほどだ。あるベテランは「駅に立っていても『マニフェストを下さい』と寄ってくる人が多い」と有権者の反応に驚き、別のベテランも「反応がよすぎる。自民党候補もどう戦っていいかわからない選挙になっている」と首をかしげた。 ある幹部は05年郵政選挙の情勢調査と比較しながら、こう解説した。「(低く見積もっても)単独過半数はいく。『逆郵政』で、300議席とってもおかしくはない」 4年前とは逆方向の風が吹く。党執行部が「もう勝った気になっている候補がいる」と警戒するのは「上滑り」と「揺り戻し」だ。菅直人代表代行は記者団に「4年前惨敗した大都市は、一瞬にして変わる。楽観はしていない」と強調。岡田克也幹事長は静岡県磐田市での街頭演説で、こう引き締めた。 「マスコミは今、民主党有利だという。そんなものは全くあてにならない。1週間前の予想は当たったためしはない。あまりに楽観的なものが出ると、必ず反動がある」 民主党が連立パートナーと見込む国民新、社民両党も別の立場から警戒している。協力関係にあるといっても、民主党に票が集中すれば、苦戦を強いられるからだ。参院は民主党が過半数に届かないため3党共闘が不可欠という事情は変わらないが、有力者が衆院議席を失えば、民主党との力関係も変わりかねない。 国民新党の幹部は「みんな民主党に流れている。とにかく、勝ち上がらなければ」。社民党の福島党首も20日、仙台市での会見で「もっと比例区重点でやっていきたい」と強調した。民主党政権を前提に、是々非々路線にシフトした共産党の志位委員長は札幌市での会見で「自公政権にもう退場してほしいというのは圧倒的だが、民主党にも不安がある」と牽制(けんせい)した。 民主党にとっても大勝は良いことばかりではない。もし300議席を超えれば、元職と前職が全員当選しても140人程度の新人議員が誕生することになる。「党をどうやってまとめていくのか」(若手)と心配する声も上がる。 また、今回の事態は郵政選挙の反動でもある。再び同じような反動が民主党に跳ね返ってくるかもしれない。困難な霞が関改革などを断行し、国民の期待をつなぎ留めることができるのか――。中堅幹部は選挙後を見すえ、不安を漏らした。 「政権をとったら、次々と改革を実行しないと国民が納得しない。国民の期待値が高いのが、逆に怖い」 ■自民、残る手段は「麻生隠し」 「まだ10日間ある。結論を急ぐべきではない。民主党のマニフェストの実現性を疑問に思う人も多くなっている」 自民党の細田博之幹事長は20日、朝日新聞の取材に対し、「自民党半減」との情勢調査の結果について強気に語った。 だが、与党内の受け止めは深刻だ。参院自民党の有力議員が「厳しい、厳しい、どこも厳しい」と吐き捨てれば、閣僚の一人も「全国を(遊説で)回っている肌感覚と同じだ。4対6で負けていたところが、3対7に落ち込んできている」と危機感を募らせる。公明党幹部も「ショックが大きい。(調査結果の)数字は具体的にイメージできない」とため息をついた。 衆院解散前、「麻生降ろし」でどん底を味わった自民党だったが、選挙戦に突入してから、民主党によるマニフェストのドタバタ修正など「敵失」が相次ぎ、反撃の余地が出てきた、との期待感も党内に広がっていた。 実際、麻生首相は17日の朝日新聞などのインタビューで「少なくとも解散以前と解散後とは少し雰囲気は変わってきた。自民党内の結束の乱れは7月21日の両院議員懇談会でほぼ終結。市場経済原理主義が行きすぎた部分の対応をきちんと申しあげた。それが評価として出てきている」と語っている。 「小選挙区で155議席、比例区では55議席で合計210議席。公明党の31議席を合わせると(与党で過半数の)241議席になる」。政権維持に向け、こんな皮算用をしてみせる幹部もいる。党執行部の一人は「国民は、民主には『不安』を覚え、自民には『不信』がある。いかに民主党の不安を指摘し、自民への不信を取り除いていくかだ」と反撃の筋書きを描く。 しかし、自転車で選挙区を駆け回っている閣僚経験者は「(有権者は)みんな熱に浮かされた状態だ。もうどうしようもない」と悲鳴をあげる。 そんな中で、自民党内で巻き返し策として浮かんでいるのが「麻生隠し」だ。 加藤紘一元幹事長は20日の演説で「麻生政権の評判がよくないから困っている。自民党もいつまでも麻生政権ではない。麻生政権への評価で自民党の評価を決めないでほしい」と強調した。 ある3役経験者も、参院自民党の有力幹部に「有権者は『選挙に勝てば麻生首相が続投するから、自民党には入れない』と考えている」と語りかけ、「選挙後は麻生総裁ではない」と打ち出すことで党勢回復を図ろうと模索する。 05年郵政選挙で自民党を大勝に導いた小泉元首相は19日夜の演説で「この10年間、政権交代を何とか耐えてきた。『寄せ集め』が民主の弱みだったが、いまや、それが強みになってしまった」と指摘。「これだけの逆風、よほどのことがない限り、政権交代は実現する」と語り、早々と白旗を掲げた。 |
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