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30日の総選挙で第1党をうかがう勢いをみせる民主党のメディア政策が注目を集めている。政権公約(マニフェスト)や「09年政策集」で打ち出した人権侵害救済機関の創設、放送行政を独立行政委員会に移管する方針について、政府・与党の方針と比較しながら論点や経緯を整理した。【臺宏士】
◇人権侵害救済−−報道界に努力義務
民主党は7月27日に公表した政権公約に「内閣府の外局として人権侵害救済機関を創設する」と明記した。内容を詳しく説明した「09年政策集」では、05年に国会提出した「人権侵害救済法案」を示した。
報道関係による人権侵害に対応するため、法案は犯罪被害者らに関する報道や過剰な取材など一定の行為を人権侵害とし「(報道機関は)自主的な解決に向けた取り組みを行うよう努めなければならない」と規定している。
訓示的な規定でもいったん法律に明記されれば、監督する側は利用しやすくなる。総務省が、政治的公平や「報道は事実を曲げないですること」などを定めた放送法の規定を根拠に放送局への行政指導を繰り返しているのが典型例だ。努力規定が、人権侵害救済機関による報道介入を招く懸念は残らないか。
そもそも民主党の法案は、政府案(03年廃案)の対案として作成された。02年に国会に提出された政府案は、差別や虐待などと並んで、犯罪被害者らに繰り返し取材のための電話をかけたり、自宅を訪ねるなどの一定の取材・報道行為を特別な人権侵害と規定した。当時は、大きな事件の際に多くの記者が犯罪被害者の自宅などに駆けつける行為に対し、メディアスクラム(集団的過熱取材)だと批判が出た。政府が検討中の人権救済機関の役割の一つとして、取材行為に関しても勧告、公表など「特別救済」と呼ばれる強い権限行使の対象に含めた経緯がある。
民主案は、政府案が「報道規制だ」と批判されたことに配慮し、報道活動を「特別救済」の対象から削除。その代わりに、自主的な取り組みを報道界に求める規定を盛り込んだものだ。政府案よりは表現の自由に配慮したと言える。
報道活動への批判に応える形で、報道界には、取材や報道に対する第三者による苦情対応や救済のための常設機関がある。放送界がNHKと民放による「放送倫理・番組向上機構(BPO)」、新聞界は毎日新聞の「開かれた新聞」委員会など、各社別の機関、出版界は日本雑誌協会が共通の受付窓口として「雑誌人権ボックス」と名づけた専用ファクスを開設している。民主案は、こうした取り組みを促す狙いがあるとみられる。
一方、自民党はどうか。最終的な決定は出ていないが、同党人権問題等調査会の太田誠一会長が08年に示した「私案」では、民主案と同様に、報道機関を特別救済の対象から除外している。ただし、党内には条文は残したままで、別途施行の際には法律の制定を必要とする「凍結論」もくすぶっている。
大石泰彦・青山学院大教授(メディア倫理法制)は「犯罪被害者らと報道機関との間で起きるトラブルは、公共的な内容も含まれる」としたうえで、民主案の報道機関への努力義務規定について「国家機関が報道機関の倫理を監督し、コントロールできる枠組みは、取材・報道現場に干渉する足がかりを与えかねない」と懸念を示す。
今年に入って相次いだ名誉棄損訴訟での高額賠償判決理由には、社内体制の不備を理由とした報道側の敗訴が目立っている。東京地裁は2月、「名誉棄損を引き起こしたのは社内に有効な対策がないことに原因がある」として、新潮社社長の責任を認める判断を示したほか、先月も講談社社長に同様の責任を認めた。
民主案に盛り込まれた条項が名誉棄損訴訟に与える影響はないのか。田北康成・立教大講師(メディア法)は「法律に明記されている以上、損害賠償額を算定する際、考慮の要素になり得る」と話す。
◇日本版FCC構想−−番組介入に警戒感
◇放送行政を独立、監督
「09年政策集」で打ち出した情報通信政策の目玉は、通信・放送行政を総務省から切り離し、政府から独立した監督機関として「通信・放送委員会」の設置を提案した点だ。
放送法が成立した1950年当時は、日本の放送行政は同様の独立機関である電波監理委員会が担当していたが、連合国による占領が52年に終わると廃止され、現在まで続く総務省(旧郵政省)の所管になった。先進国では独立行政委員会が所管しているのが通例で、米国はFCC(連邦通信委員会)、英国はOFCOM(通信庁)が担当している。日本は異例だと言え、民主案はこれに並ぼうと「日本版FCC」を提案したものと言える。
民主党は過去にも「通信・放送委員会設置法案」を提出したことがあり、政策集でも委員会の意義について「国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾を解消するとともに、放送に対する国の恣意(しい)的な介入を排除します」とうたった。民主が参考にするFCCはどんな機関なのか。
国立国会図書館が07年に作成した資料によると、FCCは上院の同意を得て大統領が5人の委員を任命する仕組みで、民主党の法案も委員長を含む5委員を「両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する」とした。FCCには、民間放送局の認可や、番組規制の順守の監督権限がある。04年に人気歌手ジャネット・ジャクソンさんの胸が生放送中に露出した問題では、放送したCBSテレビをはじめ系列20局に合計55万ドルの罰金を命じた(米ペンシルベニア州の連邦高裁は08年、FCCの命令を取り消す判決を出したが、最高裁は今年5月に審理を高裁に差し戻した)。
これに対して、日本の放送法には、総務相が番組内容に関して放送局に直接罰金を科す規定はない。番組の捏造(ねつぞう)が問題視された関西テレビに対しても、総務省は行政処分はせずに行政指導(警告)にとどめている。直接番組内容を審査し制裁できるなど強い権限を持つFCC。「日本版FCC」構想でも、懲罰的な制度の導入をするのか。放送界には警戒する声が強い。
政策集は個別政策としてNHK改革にも言及している。受信料の横領やインサイダー取引を引き合いに出し「不祥事が続出していることにかんがみ、経営改革と体質改善を推進し、法令順守を徹底するように厳しく監視する」と記した。
市民団体「開かれたNHKをめざす全国連絡会」の世話人の醍醐聡・東京大大学院教授(経営学)は「通信・放送委員会を設置し、矛盾を解消するとする民主の主張は明快で支持できるが、具体化の段階では委員の人選をどうするのかに注目したい」と評価したうえで「NHK予算や決算は国会承認を要する仕組みについては触れていない。これが『NHKと政治との距離』が問題となるケースの背景にある。国家権力の関与を否定する一方で、NHKには厳しい姿勢を示すというのは、整合性が取れていないのではないか」と指摘する。
山田健太・専修大准教授(言論法)は「民主党は個別政策を論じる前に具体的な放送制度の青写真を示すべきではないか」と話す。
当事者であるNHKや民放でつくる日本民間放送連盟はともに「コメントしない」とした。
◇その他−−児童ポルノ・有害情報
マニフェストや政策集では表現・報道にかかわる政策として、18歳未満の児童を被写体にした児童ポルノ禁止法の改正に言及し「児童ポルノの定義の明確化、取得罪の新設」を掲げた。前国会で改正案を提出したが廃案になった。
残虐な暴力表現など青少年に有害な情報は「書籍の区分陳列や放送時間帯の配慮」を明記。裁判員法では守秘義務違反への罰則適用の限定を掲げるが、接触禁止規定の見直しはない。共謀罪は、導入しない。
個人情報保護法や国民保護法の改正には言及しなかった。個人情報保護法を巡っては、個人情報の保護を口実にした官僚や政治家による不祥事隠しや、情報提供への萎縮(いしゅく)効果が社会問題化したが、政府は昨春の見直しで法改正を見送った。国民保護法では、有事の際の民間企業の責務が定められ、NHKや民放も「指定公共機関」となり、警報など政府の要請を受けた放送が義務づけられている。民主党は放送の自由を保障する観点から民放の除外を主張したことがある。
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