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郵政改悪  稲村公望(中央大学大学院客員教授)(憂国の士の論説コーナー)
http://www.asyura2.com/09/senkyo68/msg/497.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 8 月 01 日 19:23:30: twUjz/PjYItws
 

http://www.pluto.dti.ne.jp/%7Emor97512/YU77.HTML


2009.6.25


森田実氏への手紙――郵政改悪
稲村公望(中央大学大学院客員教授)

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拝啓 郵政民営化の綻びがこんなにも早く露呈するとは想像もしておりませんでした。郵政公社の公職を辞して5年が経ちました。市場原理主義の虚妄が、日本で明らかになるのは10年もかかるのではないか、と失意の人生をとぼとぼと歩くような様子でしたが、昨年末に鳩山邦夫衆議院議員が総務大臣として、かんぽの宿の一括売却の不正を明らかにして以来、郵政民営化が単なる私物化であり、また、外国勢力に対する国民資産の安易な移転であるという、構造改「悪」の構図を批判する世論が高まりました。
 その間、先生には、ホームページのサイトに拙論を掲載していただき、自説を開陳する機会を与えていただき、心から感謝申し上げます。また、森田塾の会合にも参加させていただきました。
 大河に投じた一滴の思いが、奔流になっていくことを確信できる最近の情勢です。世界を見ましても、市場原理主義の教祖ミルトン・フリードマンが他界して、米国でも政権交代がありました。南北戦争にも似た激しい国内対立が続いていますが、繁栄の象徴でもあるジェネラル・モータースの破綻があり、金融の国有化に引き続いて、基幹産業の国有化で国難を乗り切ろうとする動きを見せています。カリフォルニア州では、過激な緊縮財政がとられて、教育が切り詰められ、社会保障が大きく低下する中で、市場原理主義の信奉者である州知事に対する怨嗟の声が高まっています。
 日本では、混合医療の導入などがまことしやかに、規制緩和の会議で喧伝されましたが、米国では国民皆保険制度の導入が新政権の公約となるという、政策がとられようとしています。60年代に完成をみた、国民皆保険制度は、劣化が進んでしまいました。シカゴボーイズが破壊した中南米の国々では、続々と新政権が樹立され、オバマ政権はキューバの米州機構への参加すら認めるような、関係改善をすすめ、カイロのアズハリ大学(故サダム大統領の母校)で、多言語の同時通訳を入れて、イスラム世界との和解を求める大演説を行い、国内の激しい賛否両論の中で、従来とは異なる対イスラエル政策を表明したのは、ご高承のとおりです。
 世界的な潮流の変化が目に入らないかのように、上げ潮派なる政治勢力が跋扈して、郵政民営化問題では、お仲間の人事委員会がお手盛りで続投を決議するかと思えば、会社法・商法の改悪で委員会設置会社とやらの理由で、地方や職員の代表者もおらず、ましてや、貯金や保険や郵便局の利用者の代表者もいない中で、社長の続投が既成事実化され、認可権限を行使しようとした総務大臣が更迭されるという異常な状況です。
 民営化したからには政治の介入は避けるべきとの事実誤認が横行していますが、この前の郵政民営化選挙のB級世論操作には騙されないとの見方に、一縷の希望があるように思います。郵政会社は、その株式の全部を国が保有していますから、国民の意見を大事にするのが第一です。外国の強圧があって、ロック歌手の物まねをしてでも、長いものには巻かれろとの政権が延命して、確かに、投資信託、不動産投資、ファンド何とかやらで、外国に円を持ち出せば、キャリートレードで、外資を通じて投資をすれば儲かると思わせるような根拠のない熱狂の時代でした。元経済担当大臣が、声高に郵政資産の外国持ち出しで儲ける話を喧伝していましたし、外国証券会社の外人調査部長が、シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』の一部を引いて、今は上げ潮だ、外資を通じて投資をしなければ大損と講演しているのを、レーマンブラザーズが破綻する08年9月15日の一週間前頃に都内で聞いたこともありました。
 市場原理主義のカルトの時代は、完全に終わりました。「天網恢々疎にして漏らさず」、「李下に冠を正さず」の格言が当てはまり、進駐軍の重役が元の社宅に住んでいるとか、料亭の請求書を踏み倒したとか、クレジット会社がどうだとか、接遇マナーの会社の社長が、公社時代に金日成バッジのような代物を7億円の代金でつくって、重役に納まっているとか、労働組合元御用学者の大学教授が、関連団体つぶしのリストを作成したとか、有識者会議で資料提供をしていた外国コンサルが幹部で入り込み、利益相反があるのではないかとか、ジャーナリストへの言論弾圧があったとか、いろいろな疑惑が表面化しました。
 密告制度の導入などが、まことしやかにガバナンスとして称揚され、米国の良さは学ばず、本家仕込みの郵政監察は廃止して、コンプライアンスを統制の手法として、遠隔操作のカメラを郵便局の天井に取り付けて、全体主義の真昼の暗黒を現出させました。
 現場の郵便局長の意見は、民営化で何もいいことはなかったという評価です。ドイツの郵政民営化でも、労働組合の委員長が、同様な意見を、東京での郵政民営化をめぐるシンポジウムでささやいたことを鮮やかに記憶していますが、郵政民営化が、規制緩和、公共政策の削減、緊縮財政の政策、と並ぶ市場原理主義の大虚妄のひとつでしかないことがようやく明らかになってきました。
 参議院で否決された直後に衆議院を解散するという独裁で採択された郵政民営化の法律自体が民主主義の適正な手続きに欠けており、正統性がないという主張も理解されるようになってきました。外国追従の日本版オルガルヒを排除することが、市場原理主義の退潮に即応した真の改革であることも、理解されるようになってきました。市場原理主義という拝金の破壊に加担しないことが、むしろ世界の主な潮流であることははっきりしました。
 まもなく、衆議院議員の任期が終わり、総選挙があります。この国日本を、世界の平和と安定に貢献する自立・自尊の国に再生させる好機が訪れようとしています。
 先生のご活躍とご健勝を心からお祈り申し上げます。ささやかな言論活動に対する御指南と激励に、心から感謝申し上げます。これからも、全国の同志を激励して回るささやかな活動を続けるつもりですが、「明日の天気は変えられないが、明日の政治は変えられる」とのイタリアの政治学者の名言を、郵便局ファンの会の会長で、元明治大学学長、故岡野加穂留先生が口にされていたことを思い出します。 敬具


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