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民主党マニフェスト、強味も弱点も「年金」にあり   (山崎元のマルチスコープ)
http://www.asyura2.com/09/senkyo68/msg/215.html
投稿者 紅の酢豚 日時 2009 年 7 月 29 日 07:52:01: 1dyuYJkh9BlKs
 

http://diamond.jp/series/yamazaki/10090/


---執筆者プロフィール--------------------------------------------
山崎 元
(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)
 58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、
 野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、明治生命、
 UFJ総研 など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客
 員研究員、一橋大学大学院非常勤講師、マイベンチマーク代表取締役。
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 7月27日、民主党のマニフェストが発表された。

 冒頭から余談で恐縮だが、主要日刊紙では「読売新聞」のみが26日朝刊でマニフェスト全文を25日に入手し
て記事を書いていた。福田内閣時に大連立構想に関わったとされる新聞社だけあって、民主党の幹部筋に情報
パイプを持っているのだろう。

 さて、民主党への政権交代に現実味が出てきてた現在、注目のマニフェストだ。27日の夕方には全文がダウ
ンロードできたので、同党が重視する生活・経済関係の政策を並べた「5つの約束」に沿って見てみよう。
「5つの約束」のテーマは、民主党が挙げた順に、(1)ムダづかい、(2)子育て・教育、(3)年金・医療、
(4)地域主権、(5)雇用・経済、だ。

◆(1)「ムダづかい」 予算の組み替えの成否に注目

 民主党が「ムダづかい」の削減、即ち国家予算の大幅な組み替えを政策テーマのトップに持ってきたことは、
同党の政権交代への意欲の表れでもあり、適切だ。政権交代実現の暁には、新しい政府の組織作りや、官僚の
人事マネジメントを適切に実行できるかどうかが問われることになるが、現在の支出のムダを削ることは、ス
ピード感を持って最初に実行しなければならないテーマだし、コスト削減額として、民主党が挙げた数字は、
むしろ控え目な試算だろう。

 21年度予算で207兆円のうち、借り入れの返済(79.6兆円)や年金医療等保険給付(46.1兆円)など削減が
難しい項目を除いた削減対象となる支出は、補助金(49.0兆円)、公共事業(7.9兆円)、人件費等(5.3兆円)、
庁費等(4.5兆円)、委託費(0.8兆円)、施設費(0.8兆円)で合計68.3兆円ほどあるが、これに対して9.1兆
円という削減目標(平成25年ベース)は、むしろ小さ過ぎるくらいのものだろう。

 事業会社と国とを単純には較べられないが、企業は二、三割の経費削減を短期間で実行することがよくある。
国の支出を変化させるのには法律の制定・変更など手続きに少々時間が掛かるが、営利企業ではない国の支出
には削減できるムダが民間会社よりも多くたまっていることは想像に難くない。新しい政権になって取り組む
予算は平成22年度予算が最初となるので、25年度予算は政権が継続していれば4回目の予算に当たる。

 本当に実行するつもりなら、計画としては時間を掛けすぎではないかとも思えるスケジュールだ。実現を一
年早めるくらいでいいのではないか。

 他の政策を見ると杞憂なのだが、一つの心配は、支出のムダ削りを実行するに際して、他の政策項目で支出
が増えなければ、財政全体が緊縮財政となることだ。例によって景気には海外の影響が大きいが、国内要因で
は、デフレ定着の懸念と、雇用の悪化から再度景気が悪化する懸念のある現状で、財政赤字を急激に縮小する
ことは不適切だ。

 景気そのものは選挙公約の対象にすべきではないが、民主党には、今後の景気の推移の可能性と、同党の政
策によるところの財政のバランスと大まかな内訳についてイメージを示して欲しいところだ。

 何れにせよ、ムダな支出を削減しながらも財政収支全体を景気拡張的に持っていくことは出来るし、政府が
関わる支出内容を減らしながらも景気を刺激する方策はある(たとえば公共事業は減らすが、もっと多額の減
税を行うなど)。財政支出の「ムダ取り」は大いにやって欲しい。

 尚、衆議院定数の80削減(比例区で)や公務員人件費の二割カットは、適切な政策だが生身の「人」の問題
が絡む。民主党政権が出来た場合に、本当に実行できるかどうか、彼らの試金石になる。

◆(2)「子育て・教育」 子ども手当は良い景気対策

 子供一人当たり年間31.2万円の「子ども手当」は今回の民主党の目玉政策だ。

 子どもがいる家庭もあれば、いない家庭もあるので、子ども一人当たりに年間31.2万円の手当が付くと現状
との「差」は非常に大きく、子どものいない家庭では不利感があるかも知れないし、子どもを持つことを現在
よりも有利にする「政府による個人生活への介入」的な政策ではある。

 しかし、現在、子どもを持つことの経済的な負担が非常に大きく、特に相対的に経済力の乏しい若年層が、
経済的理由から、子どもを持つこと、あるいは子どもの数を増やすことに対して消極的になっている現状を
考えると、子どもを持つことの経済的な負担の一部を国が肩代わりする政策には納得できる。

 人に対して、子ども、大人、老人といった年齢による区別をすべきでないという原理的な考え方もあろう
が、子どもは自分で所得を稼ぐことが出来ないし、事前に蓄えを持つことも出来ないので、子どもに対する
手当があっても良かろう。

 民主党の試算によるとこの施策がフルに実施される年間5.5兆円の経費が必要とのことだが、これは、先
の定額給付金(2兆円)の3倍弱であり、3 年分で補正予算による景気対策支出にほぼ相当する。定額給付金
は、少額で且つ1回限りだったが、子ども手当は民主党政権が続く限り継続性に期待できるので、支出拡大
への効果(即ち景気拡大への効果)は大きいはずだ。景気対策に継続性を持たせる意味でも、また、対策の
中身が、支出の内容を国民一人一人が決めることのできるものとして、官僚の裁量による支出でないものに
振り向ける点で、先般の自民・公明両党の政権が実施した経済対策よりも民主党の「子ども手当」は遙かに
優れている。

 公立高校の実質無償化や大学の奨学金拡充も、経済力の差に起因する教育費の差が「格差」固定化の大き
な要因になりかねない現状を考えると方向性として適切な政策だ。

 民主党は「子ども手当」を設ける一方で、配偶者控除を廃止するという。子どものいない専業主婦家庭の
相対的な不利感が一層募るかもしれないが、配偶者控除は、もともと問題の多い制度だった。ライフスタイ
ルとして専業主婦家庭を優遇する生活への国の介入があったし、主婦のパート労働などで配偶者控除の対象
を外れないように労働を抑えるといった行動を誘発する「歪み」がこの制度にはあった。配偶者控除の廃止
には賛成だ。

 ここまでのところ、民主党の政策はなかなかいい、と思わせる。

◆(3)「年金・医療」 年金は踏み込み不足だ

 民主党がマニフェストで示した政策の工程表を見て驚いた。年金については、政権1、2年目は記録問題へ
の対策に注力し、3年目に新しい制度を議論し、4年目に法案の成立を目指すという。消えた年金への対処が
急を要することに異存はないが、年金制度の検討と議論は同時並行的にできるはずだ。現制度を続けること
の悪影響を考えると、年金は一年でも早く抜本的な制度変更を目指すべきだ。

 このスケジュール感では、日本の政治が流動化していることを考えると、多くの国民が今回の選挙で民主
党に投票したとしても、年金制度を変えられないかも知れないという不安が頭をもたげる。看板政策のはず
の年金問題がこれでは心許ない。

 民主党が掲げる年金制度は国民一律に、月額7万円の最低保障年金と所得比例年金を組み合わせるものだ。
そして、最低保障年金の財源には消費税を充てるという。

 これは推測だが、政権奪取から早々に将来の年金制度の議論をした場合、参議院選挙が予定される来年に、
民主党は年金にリンクさせた消費税の税率アップを主張せざるを得なくなる。参議院選挙で消費税を争点に
しないために、年金改革の議論を先送りするという意図なのだろうか。だとすると本末転倒だ。

 この際はっきり言うが、最低保障年金の財源を消費税に紐つけすることが誤りなのだ。民主党も将来の財
源に自信が無くて、消費税を「年金を質に取って」増税する道を作っておきたいのかも知れないが、お金に
色は着いていないから、消費税の増税は財政全体を楽にする要因になる。財政のムダ取りを大きな政策課題
とする民主党政権で、今後増えることが確実な年金給付に消費税を紐つけして税率の引き上げを半ば予定す
ることは全く余計だ。

 一般企業でいえば、コスト削減運動の最中に、実は将来、別途予算があると提示するようなもので、官僚
に足下を見られる。この点は、就任早々に消費税率引き上げを封印して霞ヶ関を落胆させた小泉純一郎元首
相のしたたかさを見習うべきだ。

 今回、政策の議論全体が、個々の新しい政策に対して「その財源は何?」という形で個別に財源を論じる
ものになる傾向があり、メディアも含めて、増税による裁量可能な資金の増加を狙う官僚達の誘導に乗せら
れている感じがする。

 今からでも遅くはない。年金と消費税のリンクは断ち切るべきだ。

 原理原則として、消費税について「議論」することは悪くはない。将来税率を引き上げる選択肢はあって
いいし、例えば地方に移譲する財源として人口に比例しやすい消費税は格好の税源だ。しかし、増税を行う
(期待させる)タイミングは、今後の経済の推移を見ながら適切な時点を選ぶべきだ。今の時点で年金と消
費税を紐つけすると、「消費税増税予約」の仕掛けがバレてしまう。

 加えて、鳩山代表を含めて、民主党幹部の消費税に関する発言がここのところメディアで頻繁に取り上げ
られている。メディアの側としては、政治的に話題になりやすい消費税で民主党内の不一致やいわゆる「発
言のぶれ」を報じることが出来ると面白い。民主党は、これに簡単に引っ掛かるのでは頭が悪すぎる。選挙
がまだ勝ちと決まった訳ではない現時点では「油断」というものだろう。

 現在の国税と社保庁を統合して歳入庁を作ることも、税金を財源とする最低保障年金制度を作ることも、
もちろん全国民の年金を一本化することも好ましい。民主党の掲げる年金政策は方向性として現状の延長よ
りも遙かに好ましいし、何よりも信頼が乏しく無駄なコストを掛け、且つ世代間の不公平の大きい現状の年
金制度が解体することは急務だ。

民主党には、二年間時間を無駄にするような、たるんだスケジュールを改めることと、意図がバレバレで
有害な年金財源と消費税の紐つけを止めることを望みたい。

 年金問題は、国民の関心が高く、民主党への期待が大きい、同党にとって看板となる分野の筈だ。今回の
マニフェストの年金政策は、現状の延長線上にある自民党の政策よりもいいのだが、これでは、大いに期待
外れで不十分だと苦言を呈しておく。

◆(4)「地域主権」 今回は手抜きか?

 地域主権に位置づけられた政策のそれぞれは子ども手当や年金のような大きなものではないが、幾つかの
施策に少なからぬ疑問を感じる。

 そもそも、今回のマニフェストで地方分権の問題は大きな力を入れていないように思える。道州制にも具
体的言及がないし、逆に、自治体の中でのミクロな分権についても言及がない。また、国の支出のムダは大
いに問題にしていても、地方の支出ムダや地方公務員の人件費削減も目標に挙げていない。

 政権交代当初は、中央の官僚をコントロール下に置くことに注力し、地方は後回しということなのかも知
れない。現実問題として、利益団体として官僚組織は強力であり、一度に全体を敵に回すのでは、自民・民
主どちらの政権でも政権が保つまい。今回のマニフェストが地方の改革に関して言及不足だという点は指摘
しておきたいが、戦術的に中央と地方に強弱を付けることは許容してもいいように筆者は思う。

 とはいえ、中央から紐付きの補助金を排除することや、中央直轄事業への地方負担を無くすことなど、地
方の独立性を財源面から高める政策には意義がある。建前だけに終わらないことを期待したい。

 高速道路無料化、ガソリン税の撤廃には、景気と地方振興上のプラス効果がある一方、環境改善に対して
著しく逆行する問題点がある。どちらを取るかは、価値判断の問題だが、筆者個人としては後者の問題を重
く見たい。景気対策は、自動車業界偏重ではない、別の手段を用いる方がいい。

 また、郵政民営化を今更後戻りさせようとしているらしい「郵政事業の抜本的見直し」については、郵政
民営化に反対した勢力との政治的な合体のための妥協と考える以外に、合理的な理由を見いだしがたい。

 郵政民営化は、テンポが遅くて未だ不徹底なものであることにこそ問題がある。過疎地での同一料金での
郵便集配が大切なら、通常料金との差額を政府が負担することにして、運送業者を相手に過疎地での郵便集
配サービスを地域毎に公開入札すれば、非能率的な郵便局を丸ごと残すよりも低コストで済むはずだ。

 農業・林業・漁業などへの戸別の所得補償も筋が悪い。これら以外の職業でも困っている人は一杯いる。
産業単位ではなく、あくまでも個々の人をサポートするのが本筋ではないか。食糧自給率(ましてカロリー
・ベース)などというものは政策目標として無意味だ。農水省が予算を使い、政治家が農家の票を政策的に
買収するためにでっち上げられた概念だ。

◆「雇用・経済」 雇用対策は企業でなく政府の負担で

 今後悪化の懸念がある雇用への対策についても、民主党マニフェストには幾つかの不安が覗く。

 典型的には、最低賃金の引き上げと製造業派遣の禁止だ。何れの規制も、これらの対象になるような立場
の弱い労働者が相当数失業しかねない。

 雇用主は、最低賃金が引き上げられると採算の合わなくなる仕事では人を雇わなくなるだろう。また、派
遣の形で負担が軽いからこそ人を雇うケースもあるはずで、製造業での派遣が禁止されることで、企業の側
と職があったはずの労働者の側の両方が損をする。働いても所得が不足するケースでは、働くことへの意欲
が失われない形で(たとえば「負の所得税」のような形で)、所得を補填するような仕組みを作るなら、ワ
ーキングプアの生活水準化以前と経済効率の改善が両立するはずだ。

 民主党が掲げるような、労働者の生活レベル保障に必要なコストを企業に負担させる政策では、企業と弱
い立場の労働者とが損をする。この場合、敢えて得する人を挙げると、雇用が安定した正社員は、低廉なコ
ストの競合労働者が減るので、競争上得をすると考えられる。こうした政策を見ると、民主党は、いかにも
正社員の労働組合員の利益代表であるように見えてくる。この点が明確になることは、政権を目指す上では
マイナスだと思うが、民主党の認識はどうなのだろうか。

 また、経済に関して、規制を緩和することによる需要の喚起と成長戦略という視点が無いのも物足りない。

 この項目はイマイチである。

 全体を通して見ると、「ムダづかい」「子育て・教育」はまずまずだ。しかし、「年金・医療」では期待
が大きいだけに大きな課題と弱点が目に付いた。「地域主権」「雇用・経済」で政策の効果をどのようなも
のと考えているのか真意を問いたくなるようなものが幾つか見つかり、かなり心配な面もある。

 それでも、現政権のこれまでの景気対策などと比較すると、総合的には民主党の政策の方がいいように筆
者は思ったが、今後の課題も多いと言わざるを得ない。  

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