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http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090725-OYT1T01103.htm
政府の憲法解釈を担う内閣法制局には参与会とよばれる組織がある。現役の法制局幹部と長官OB、著名な法学者が定期的に集まり法律論を巡り意見交換する。
14日の参与会では、法律の議題から離れて一部の出席者の間で「もう参与会も今回が最後かもしれない」という会話が交わされたという。
衆院選での政権獲得が現実味を帯びてきた民主党は「官僚主導政治の打破」を表看板に掲げている。歴代の政権に対し「内閣が代わっても憲法解釈は変えられない」と説明してきた内閣法制局は、憲法9条について独自の解釈をする小沢民主党代表代行とたびたび衝突した。小沢氏が党首を務めた自由党は、内閣法制局廃止法案を提出したこともある。法制局幹部は「民主党にはうちは官僚主導の権化と映るのでしょうね」と語る。
内閣法制局長官は政治任用の特別職公務員だ。時の内閣が人事を決める建前だが、法制次長が昇格する内部登用が慣例となってきた。民主党政権が慣例を見直すのかどうか、この幹部は心配顔だ。
官僚の政治任用は昭和の初期、政友会と民政党の2大政党が政権交代を繰り広げた時代に盛んに行われた。政権が代わるたび、当時は内務省から派遣されていた県知事や県庁幹部などの大規模な人事異動があり、政党色に染まった官僚は許認可権を党勢拡大のため露骨に行使した。道路や港、学校などを造ってもらおうと村民全員が時の政権党に入党する「全村入党」も各地で見られたという。
戦後の国家公務員法が「公務員の中立性」を強調したのはこの時の反省によるものだ。
いま霞が関の官僚の間で話題のテレビドラマ、城山三郎の小説を原作とした「官僚たちの夏」は1960年代の通商産業省が舞台だ。主人公の「ミスター通産省」風越信吾は国の将来は官僚が背負っているという強烈な自負を持ち、「国家の経済政策は政財界の思惑や利害に左右されてはならない」と信じている。政権交代に翻弄(ほんろう)された戦前の記憶がまだ残っていた時代の官僚の心意気を表しているのだろう。
民主党は政策集で「与党議員100人以上が大臣、副大臣、政務官等として政府の中に入り官僚の独走を防ぐ」とうたっている。社会保険庁のずさんな年金記録管理や自衛隊の装備購入を巡る前防衛次官の逮捕など相次ぐ不祥事を見ると、霞が関が制度疲労を起こしているのがわかる。
政治に求められているのは官僚が燃えるような使命感をもって仕事をする制度と環境をどう整えるかだ。
その方向を決める政権選択選挙に固唾(かたず)を呑(の)む「官僚たちの夏」である。(政治部次長 高木雅信)
(2009年7月26日08時07分 読売新聞)
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