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21日の和歌山カレー事件最高裁判決について。この判決を言い渡した第三小法廷は、1週間前の14日、東京の痴漢事件で、検察の立証に合理的な疑いがあるときは無罪を言い渡すという原則を適用し、逆転無罪判決を言い渡しました。『愛媛新聞』22日付社説は、直接証拠がない、動機も不明なままの事件での死刑判決には「わだかまりが残る」として、「刑事裁判の『疑わしきは被告人の利益に』という基本原則からすれば疑問がぬぐえない」「冤罪の可能性を完全に否定しきれない危うさも残る」とまで指摘し、また、『北海道新聞』社説も「なお不透明感は残る」、『東京新聞』社説は「釈然とせぬ動機未解明」としています。 今回注目されるのは、各紙ともの22日付が総合面を使い、「一審、裁判員制度だったら?」(『朝日』22日付)あるいは「裁判員制度で審理迅速化 立証に課題』」(『毎日新聞』)という形で、裁判員制度発足と関連づけた検証記事が目立ったことです。 実際、カレー事件一審の公判回数は95回。判決まで3年7カ月かかり、検察が提出した証拠は1154件、証人はのべ171人にのぼります。『読売』は、「裁判員で審理すれば、公判回数は20回を超す」、特に公判前整理手続で、「簡潔で効率のよい証人尋問が裁判員の負担軽減のカギだ。特に尋問内容の重複は避けるべきだ」という裁判官の声を紹介しています。他方、『中国新聞』23日付社説は、「迅速化を重視するあまり、真相解明が十分に果たせなくなっても困る。広島市の『あいりちゃん事件』で、公判前整理手続などに不十分な点があったとして、地裁に差し戻されたことも記憶に新しい」として、迅速化・効率化に懸念を表明しています。重要な指摘だと思います。 この事件では、川崎英明関西学院大教授の『読売』22日付のコメント、「偶発的か、確定的殺意があったのかもわからず、量刑には議論の余地があると感じる。刑事事件では、世論は有罪の予断を持つ傾向があり、被告人の一審での黙秘で、『悪いことをしていないなら正直に語るべきだ』と考える人も多かっただろう。無罪推定の原則や、黙秘権の意義などを定着させなければならないと思った」、が印象に残りました。各紙検証記事でも、裁判員の負担ばかりが心配されていましたが、刑事事件では、被告人の無罪推定原則がきわめて重要です。迅速化や裁判員の負担軽減が、この原則を揺るがせないかどうか。司法への「市民参加」も、被告人の権利保障を前提としたものでなければなりません。本件のように、被告人が最後まで無罪を主張するようなケースの場合、裁判員制度ではどうなるのかなど、この判決が投げかける問題は大変重いと言えるでしょう。 |
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