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田中秀征の一言啓上
麻生おろしが不首尾に終わった本当の理由
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090722/168980/?P=1
2009年7月23日
今日(21日)、予告通り衆議院が解散され、日本列島は事実上、激しい選挙戦に突入した。
注目された自民党の両院議員懇談会も波乱なく終り、与謝野、石破両大臣も解散詔書に署名した。
なぜ「麻生おろし」が不首尾に終わったのだろうか。これでは反麻生派は選挙になりそうもない。
反麻生議員が怖がった公認取り消し
首相は、反麻生の動きが衰えるのを見て、機敏にも懇親会の公開に踏み切って得点した。いっそのこと、懇談会ではなく、正式の両院議員総会に切り替えても結果は同じことだったろう。もし首相がそこまでやれば、戦果はかなり大きかったに違いない。いずれにしろ、今の時点では首相の戦略が効を奏している。
なぜこうなったか。大きく二つの理由がある。
一つは「公認取り消し」に対する議員の恐怖感が強かったこと。
公認取り消しによって無所属で立候補すると、(1)公認料が入らない、(2)支持団体の支援がなくなる、(3)応援弁士が激減する、あるいは(4)刺客を立てられる。さらに(5)公明党の支持を失うし、(6)選挙公報が制限されることになる。特に(5)と(6)は手痛い打撃だ。
平均的な自民党候補は、小選挙区で約三割を公明票に依存しているように見える。個人票がほとんどない若手ならそれ以上になろう。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090722/168980/?P=2
統合する旗印もなく指導者もいない
もう一つは、反麻生陣営と言っても、それを統合する旗印がなく、また一致した指導者もいなかったことだ。
世論調査で示されたように麻生おろしに対する反応が意外なほどに冷たかったのは、主としてこの理由による。単なる「ごたごた」に映じたのだ。
「公認取り消し」を甘受するにしても、浮動層が歓迎しなければ何の意味もない。世論調査を見て一気に反麻生グループは四散することになった。
そうかと言うと、“官僚改革”などを旗印にしても、かなりの人たちが脱落しただろう。
また、特定の総裁候補の擁立を目指しても足並みが揃う状況ではなかった。
両院議員総会の開催に一人でも多くの賛同者を募るためには、一本の旗印や一人の指導者にしぼることはマイナスだったのだ。
受けて立つ麻生首相の個性も、今回の結末に影響している。ふつうの首相なら、あれほどの反乱が起きれば自ら辞職を選ぶはずである。少なくとも安倍晋三、福田康夫の両首相なら早々に退陣していただろう。
反麻生グループには、この点で誤算があったのではないか。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090722/168980/?P=3
長い選挙戦は決して平坦ではない
小選挙区から出てきた政治家には、中選挙区時代と比べて、政治家として強靭さにかなりの差があることをあらためて思い知らされた。
さて、これで収まるかと言われれば、そうではなかろう。
解散から投票日まで40日間。憲法の規定を目一杯使ったこの長い選挙戦は決して平坦ではない。自民党議員が、「どうやっても落選」となると、党内の雲行きが変わる可能性もある。マニフェストの内容をめぐる論争が、実質的な分裂選挙をもたらすことにもなりかねない。
一方の民主党も、自民党の「一致結束」が本物になったらあなどれない。今回の麻生主導の解散劇が自民党支持率の底離れにもなれば、自民党は勢いづき反撃に転じるだろう。士気さえ高まれば、兵数において圧倒する自民党の進撃は戦況を大きく変える。
この40日間で大きな社会的事件が起きるかもしれない。自民、民主両党の指導者から看過できない失言が出る可能性もある。特に、街頭演説では、慎重な人でも失言する場合が多い。
このままの流れで投票日まで経過するとこのほうがあり得ないことだ。ならば、少しでも有意義な総選挙の方向に向かってほしい。
田中秀征(たなか・しゅうせい)
1940年長野県生まれ。東京大学文学部西洋史学科、北海道大学法学部政治学科を卒業。83年衆議院議員に初当選。93年6月に自民党を離党して新党さきがけを結成、代表代行。自民党時代は宏池会(宮沢派)に所属。細川政権の発足に伴い首相特別補佐。第1次橋本内閣で経済企画庁長官。現在、福山大学教授。「民権塾」主宰。最近刊の「判断力と決断力」(ダイヤモンド社)をはじめ、「日本リベラルと石橋湛山」(講談社)、「梅の花咲く 決断の人 高杉晋作」(講談社)、「舵を切れ 質実国家への展望」(朝日新聞社)などの著書がある。
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