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自民党凋落の真因を推測する―(神州の泉 Jul.13,2009)
http://shimotazawa.cocolog-wbs.com/akebi/2009/07/post-acc0.html
次期衆議院総選挙の先行的な指標とみなされた東京都議選は、自民党が過半数割れを起こし民主党が圧勝を占めた。自民党が第一党から外れるのは44年ぶりだそうである。評論家は自民党の凋落を、麻生政権の内紛やぶれが招いた結果だとあっさり言うが、この捉えかたは表層的だ。麻生首相のブレには二つの側面があって、ひとつは麻生氏の個人的な資質によるものと、もう一つは自民党内を牛耳る小泉一家と反小泉一家とのヘゲモニー(勢力争い)があり、この二つは峻別して考えなければ政治の現状把握を見誤ることになる。
もしこのまま、来る衆院選でも民主党圧勝という同様の結果を得るとすれば、我々はこの状況を見て、1955年から続いた自民党一党独裁体制が、歴史的な終焉を向かえることを目の当たりにすると思い込みやすいが、それはまったく違うことを言っておきたい。日本は大東亜戦争に敗北した後、極東国際軍事裁判をいやいやながら受け入れたところから出発した。
古代カルタゴとローマ帝国には、ポエニ戦争という三度にわたる戦争があった。カルタゴはローマに敗北し軍備を完全解除された。両国は安全保障条約を結び、事実上カルタゴはローマの庇護国となったが、軍備費撤廃の分を経済浮揚に向けて成功した。庇護国というと護られているという意味に聞こえるが、その実態はローマの完全属領であった。属国政治はやがて行き詰って深刻な状況にいたる。カルタゴが他国から戦争を仕掛けられ、やむなく軍備を整えてこれを打破したところ、ローマはこれを再軍備とみなし、カルタゴを滅ぼした。不正確だが簡単に言えば、これがカルタゴ興亡史である。
時代背景や国家構造は異なるが、現代日米関係もこのローマ・カルタゴ関係とかなりの類似的様相を持つ。戦後政治の国政デザインは吉田茂によって方向が固定化された。吉田ドクトリンである。簡単に言えば吉田ドクトリンとは、日米安保条約という属国協定条約であり、日本は武装せず、米国駐留軍を置いて極東アジアの共産勢力の防波堤となることだったが、軍事をアメリカに任せて日本は経済復興に邁進するという基本路線だった。自民党保守政治の本質は、アメリカ・アングロサクソンの覇権意志と衝突せずにうまく取り入って、コバンザメのように経済的利得を得るというスタイルだった。これは岡崎久彦氏の対米感覚に近い。
自民党55年体制とは、東京裁判史観を下敷きに吉田ドクトリンをアイデンティティとして保った属領政治であった。戦後のインフラ復興と高度経済成長を経て、自民党政治は国民に受け入れられてきた。その流れの中で田中角栄型の政治路線が定着した。しかし、これには冷戦構造という国際環境が幸いし、吉田ドクトリン体制は偶然にも上手く機能していた。政官財の癒着と田中型金脈政治が融合して、修正資本主義はかなり機能不全を起こしていたにせよ、再配分はきちんと行われていた。
修正資本主義の悪弊を正し、良い方向に修正して行ったのなら、半属国日本でも、まだ余裕はあったのだが、小泉政権は郵政民営化という国家インフラをアメリカの言うがままに民営化し、構造改革という、一部の層に特定利権が傾斜してしまう間違った国策を行った。ここでは吉田ドクトリン・ポリシーにわずかに残っていた面従腹背の要素は雲散霧消し、完全な属国体制に切り替えられていた。これによって、富の公平配分は消失し、極端な傾斜配分に切り替わった。
つまり、今回の都議選の結果は国政選挙の予型にはなっているが、保守対革新のイデオロギー的要素はまったくなく、小泉政権が行った新自由主義政策への怒りととらえていいものだと思う。国民の生活感情が自民党に対する敵意として出たものだ。戦後55年体制の自民党政治に対する総決算として噴出したものではない。そこは勘違いして欲しくないのである。
もちろん国民には従来の自民党政治に対する鬱屈した不満はあるが、一党独裁を許してきたのも国民だったことを思えば、すべての悪を自民党に押し付けることはできない。許せないのは修正資本主義の顔をして国民を騙し、完全なネオリベ政治を行った小泉政権である。これが国民生活を破壊したまま、ほったらかしなのである。麻生氏の主導権を内部から潰したのが、小泉政権の残存勢力である偽装CHANGE勢力である。
日本は大きく言えば、古代カルタゴ化していて風前のともし火になっているが、矯激な属国政治を行った小泉政権がきちんと裁かれない限り国の再生はない。民主党も凌雲会勢力と自民党シンパを駆逐しないとけっして安心できない。
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