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日経新聞（２３日付）の調査によれば、無党派層の４４％が比例代表の投票先を「まだ決めていない」という。
だったら、どっちに投票すべきなのか。各界の有識者に聞いてみた。
麻生首相65鳩山代表2評論家の佐高信氏はこう言った。
「自民党には入れません。自民党はこれまで下半身が公明党、上半身が自民党といういびつな政党だった。最
近は下半身が公明党、上半身は自分党。それぞれの議員が勝手に走り出し、もはや、政党とはいえません。そ
んなところに誰が投票しますか？自民党は、民主党の政権担当能力を問題にするが、自分はどうなのか。この
一言で黙っちゃうんじゃないですか」
筑波大名誉教授の小林弥六氏（経済学）の意見はこうだ。
「今度の選挙はこの国の構造を変える天王山的な意味合いを持ちます。焦点は政権交代。となれば民主党とい
うことなる。小泉改革以来、自民党の失政で日本の経済は完全に壊れてしまった。とりわけ地方の疲弊は激し
い。経済だけでなく、社会もおかしくなり、凶悪犯罪が急増している。沈没寸前の日本を救うには、担い手を
代えるしかありません」
保守派の論客も今回は反自民を鮮明に
作家の麻生千晶氏はこう言う。
「私は政治的立場を鮮明にしてこなかったが、今回は言います。民主党に入れます。自民ではもう、硬直化し
た官僚制度を改革できない。確かに民主党は烏合の衆だし粗製乱造の候補もいます。１年たてば元の木阿弥か
もしれない。しかし、かつての野党連合とは違い、よく勉強をして力を付けてきている。何より、小沢さんも
鳩山さんも目先の私利私欲ではなく、この国の遠く未来を見ている。トップに立つ人は、国民に夢を与えなけ
ればダメだと思います」
佐高信氏は「比例は社民党に入れる」と言う。
「社民党は豆腐のにがりのような存在。社民がいないと、危うい」と語った。とはいえ、有識者の共通項は反
自民だ。もともと左的スタンスの人は当然だし、保守本流の有識者の中にも反自民を標榜している人は多い。
政治評論家の屋山太郎氏は、今週の「週刊ダイヤモンド」で、＜自公政権は公務員制度改革を事実上葬りまし
たが、民主党は本気です＞＜民主党の教育基本法改正案は自民党案よりまともでした＞と言っている。今どき
「自民支持」を探す方が難しいくらいなのである。
自民と民主ではプライオリティーが決定的に違う
鳩山代表3民主党の支持が自民を圧倒しているのには理由がある。まず、自民党との違い「国民の生活が第一」
の政策を掲げていることだ。自民党も「安心社会実現」とか言うが、選挙前の方便だ。小泉政権以来、財政危
機を錦の御旗に福祉切捨て、地方切捨て、すべては自己責任の社会を押しつけてきたのは誰だったか。官邸に
「安心社会実現会議」ができたのは、ついこの間の４月のことだ。
同じように「国民生活の安心」を掲げても、自民と民主ではプライオリティーが違う。自民はまず大企業など
の業界優遇がある。社会保障費の自然増を２２００億円抑制することを撤回するのに、スッタモンダしている
政党だ。民主党の大胆な予算組み替えとはレベルが違う。
法大教授の五十嵐仁氏（政治学）は、「私も民主党を支持します。勝ちすぎて有頂天になっては困りますが」
と、こう指摘する。
「民主党の政策には評価できる点が多い。月２万６０００円の子ども手当のほか、高校授業料の無償化などの
教育支援策を打ち出している。農家への所得補償もそうですが、必要な人に直接支援が届く点で、天下り法人
などが中間で吸い上げてきた自民党とは決定的に違います。高速道路の無料化も評価できます。自民党は財源
の問題を言うが、国庫を空にする業界バラマキ政策をやってきたのは自民党です。そんな政党が『財源がない』
『民主党は無責任だ』と言う。おかしなことです」
少子化対策に同じ１００億円を使うにしても、自民党は効率性などを理由に、事業に予算をつける。そうやっ
て業界に恩を売る。高速道路で料金を取り、それで道路を造って票にする。これが自民党だ。予算配分こそが
自民党のレゾンデートルで、だから国民にダイレクトに恩恵が届かない。
※「レゾンデートル」とは、哲学用語の一つでフランス語で「存在理由」あるいは「存在意義」という意味
常に財源がなくて大増税が待っている自民党
ETC助成こういう自民党政権では常に財源が足りなくなる。
これは自分のせいなのに。「消費税増税の議論をしない民主党は無責任」と批判する。自民党政権が続けば、
永遠の大増税が待っているだけなのだ。
予算編成方法も一変する。民主党は経済財政諮問会議を廃止して、首相直属の「国家戦略局」を設置する。似
たような組織に見えるが、大きく違う。経済財政諮問会議は経財相が仕切る。ちょっと前まで与謝野が財務大
臣を兼務する。何のことはない、財務官僚に予算編成権が戻っていたのだ。
こうして見ていけば、民主党の政権はおもしろいし、賭けてみたくなる。
５０年以上も民主主義が機能していない異常な国
加えて、何より重要なのは、日本を政権交代可能なマトモな国に変えられることだ。北朝鮮じゃあるまいし、
５０年以上も一党独裁が続いた国なんて先進国で例がない。それがようやく変わるのだ。
「絶対的権力は絶対的に腐敗するという言葉があります。永田町ではずっと、主権者である国民の意思とは反
対のデタラメがまかり通ってきた。本来、民主主義とは政権交代を何回も繰り返す過程で成熟していくもの。
そうやって、政党は切磋琢磨するのです。民主党がダメなら、また自民党に戻せばいい。それでダメなら、違
う野党に託せばいいのです。これからの政治は国民が決める。ようやく普通の国になるチャンスです」
（立正大教授・金子勝氏＝憲法）
７月１５日付の朝日新聞朝刊で、ジャーナリストのビル・エモット氏はこう書いていた。
＜民主党に政権担当の準備は整っているのか。と誰もが問う。間違った質問だ。そんな用意ができていた野党
など、どこの国にもない。議会での野党の仕事が、政権担当のための訓練や経験につながることは決してない。
（中略）だが政権交代により、日本が変わるというはっきりしたシグナルを他国に示すことができる。日本の
民主主義がきちんと機能していると訴えることができる＞
英国では１０年ごとに政権交代がある。しかし、混乱はない。これが民主主義のダイナミズムなのである。
麻生自民党の継続か、この国の再生か。選択の余地はない。
（日刊ゲンダイ 2009/07/25掲載）
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