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http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090724/169746/?P=1
2009年7月24日
縛りのない相互信頼など世界では誰も守らない
世界はもともと略奪主義であり、それがまだ抜けていない。略奪された人が文句を言えば、それは「自己責任」とする。世界は実態としてそういうふうに動いている。
「相互信頼が理想だ」などというのは、だましの手段でしかない。何らかの縛りがなければ、相互信頼を守る人は皆無である。縛りというのは、国連の規程で言えば、国際社会から外れたことをする国には国連の軍隊が罰を与えに行くということである。
しかし、国連はいまだに独自の軍隊を持っていない。国連常任理事国は、まずそれぞれの軍隊を派遣しなければいけないと決められている。そして、日本やドイツがまた侵略をすることがあれば、みんなでつぶすと決められている。
ところが、それは発動されたことがない。国連が何を決めても、常任理事国が守らない。守るのに熱心なのは小沢一郎さんだけだろう。
それが世界の現状である。世界は、多少は文明化しようと思ってまだ努力中で、日本はもう文明化が完了している。完了しているがゆえに、日本は世界ではお人よし国家になっている。
日本がこれだけ大きな国になってしかも文明化されているのを、分かる人は分かっている。だから、日本には「国徳」がある。徳によって外国を感化している。最近ではそれがだいぶ進行している。しかし日本人の方が分かっていない。もう一息だと思ってお人好しを続けるべきか。それとも少しはごねてみるか。どちらにせよ、単なるお人好しでは世界をスポイルする。
日米の違いが、次第に小さくなっている
世界がようやく日本の恩に感謝するようになりかけたら、今度は日本人が「もうやめた」と言い始めた。そして今、日本は主体性を発揮し始めている。麻生外交がそうだ。麻生外交がやっていることを、テレビや新聞は、自分たちが主張してきたことと違うから褒めない。たとえ褒められなくても、麻生首相は主体性のある外交を行っている。
米国は日本の徳に感じたのかどうか、米国人は日本人そっくりになりつつある。まず米国人は貯金をするようになった。かつて、米国人は貯金をしない、借金で暮らすと言われたが、最近では貯蓄率が2%になっている。日本の貯蓄率は、ピーク時は10数%まであったが、最近は2%で、今や、米国と並んでいる。
それから、米国はかつて豊かで月給が高いといわれたが、今は低賃金国になった。今回の大不況とドル安でもっと低賃金国になるだろう。日本もかつては月給が高いといわれたが、今は、同じように低賃金国になった。それを「格差」と言っているが、「米国並みになった」と喜んではどうか。
これから米国人は勤勉になるだろう。不景気になってどんどん首を切られるのだから、勤勉になるしかない。月給はどんどん下がってローンが圧縮されれば、昔の日本のように質素倹約の国になる。
ドル安のため輸出が伸びれば、米国人は外国人の好みを謙虚に学ぶようになる。財政赤字のため、もう軍事力は使えない等々の諸条件が進むというのもある。貯金をする、質素倹約する、勤勉に働く、低賃金でも頑張る等々を合計すれば、米国人はこれから、かつての日本人のようになる。来年の統計が出れば、はっきりするだろう。
日本は戦争国家になり、米国は平和国家になる
では、日本人はどうなるのか。貯金はしない、借金はする、若い人はぜんぜん働かない、勉強もしない、遊んでばかりいる。かつての米国人にそっくりである。日本と米国が逆転しているが、長い間付き合っていると、そうなるものなのだ。
米国は今や平和国家になってきた。もう戦争はしない。北朝鮮に喧嘩をふっかけない。もうアフガニスタンの話などしない。オバマ大統領は世界から核兵器を廃絶しようと言い始めた。
日本は逆に、戦争国家になりかけている。田母神俊雄さんが人気者となり、「日本人は戦争をするくらいの覚悟を持て」などと言っている。それを聞いて大拍手が起こる。日本は戦争国家になり、米国は平和国家になる。日米すれ違いである。
米国は、時価会計の基準緩和も進めている。米国が導入を進めた時価会計が行き詰まり、米国は基準を緩和して、日本は時価会計を厳しく適用するという逆転現象が起きている。
世界宗教のいいところを取り込んだ「日本教」
日本はどうして立派な国になったのか。それは、世界宗教を取り入れて、真面目に勉強し、真面目に実行したからだと思う。世界中を見回しても、そんな国は他にない。普通に言う世界宗教は、仏教、キリスト教、イスラム教、それから儒教、道教である。日本の神道は違う。
日本の神道は、いいものは何でも取り入れてしまう宗教である。日本は何でもいいところを取る。悪いところは取らない。すべてを総合して飲み込んで、丸く角が取れた日の丸にする。
仏教や儒教、キリスト教など、世界宗教にはいずれも変な「角」が付いている。そういう「角」は取り入れず、日本は「日本教」ともいうべき思想をつくった。それをきちんと実行している。世界宗教のあとに出てきた世界思想、たとえばギリシャ哲学やローマ哲学、ドイツ哲学、フランス哲学、イギリス経験論哲学などについても、日本人は真面目に勉強して、いいところは取り入れて実行している。
神道、あるいは俗信、民間信仰など、文字で遺されていない日本人特有の思想は、1万年くらい前からあった。そこに、外国から伝わってきた儒教や道教、仏教、キリスト教などの思想が、みんな取り込まれた。
日本人は、赤ん坊のときは神社にお参りして、結婚するときはキリスト教で、死んだときは仏教で葬式を行う。そんな日本人を「おかしい」「曖昧だ」と批判する向きもあるが、批判する人は、外国かぶれの人である。日本人は、多様な思想を吟味して、それぞれのいいところを取り込む。首尾一貫が尊いという考え方は、日本教にはない。
日本では、融通無碍のほうが尊い。首尾一貫していないからあの総理大臣はおかしいとか、日本人はいいとこ取りをするからダメだとか、そんな批判の方がおかしいのである。世界ではだまし合いばかりやっているのに、他国には首尾一貫を要求している。
日本人は英語を勉強する必要がなくなった!?
日本の思想は、日本語の会話の中に自然に入っている。「すまない」とか「もったいない」とか、そういう日本語の中に、日本の思想が全部入っている。それらをきちんと取り出して英語にすれば、外国人は感心する。
もっとも、別にわざわざ英語にしたものを伝えて、感心してもらわなくてもいい。知りたければ外国人が日本語を勉強すればいいのである。米国は本当に日本語の勉強を始めた。CIAや各地の大学が、コンピュータの自動翻訳ソフトで日本語の論文を翻訳している。
日本のメディアに載っている注目すべき論文・タイトル・著者、あるいは反米主義者の論文などを、片っ端から英語に翻訳して、会員限定で配っている。それを読んだ人から反響がある時代になった。
日本人はもう英語を勉強するより、自分の文明・文化・思想をいっそう磨いた方がよい。向こうが日本語を勉強してついてきてくれる。
日下公人氏のコラム「現実主義に目覚めよ、日本」は、09年4月1日まで「SAFETY JAPAN」サイトにて公開して参りましたが、09年4月17日より、掲載媒体が「nikkeiBPnet」に変更になりました。今後ともよろしくお願いいたします。また、日下氏の過去の記事は、今後ともSAFETY JAPANにて購読できますので、よろしくご愛読ください。
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