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http://www.the-journal.jp/contents/yamaguchi/2009/07/post_85.html
自民党が狙う! 鳩山「架空献金スキャダル」
天の神さまはそう簡単に政権交代を実現させてくれないようだ。
鳩山由紀夫民主党代表の「架空献金」問題は、本来なら(平時なら)それだけでも議員辞職に相当する事案かもしれない(詳細は後述)。ただ、現在の混沌とした政治状況と、これを追及し始めると政界全体の政治資金のパンドラの箱を開けることになりかねないので、今後この問題がどのような方向に発展していくかは未知数だ。
民主党の岡田克也幹事長は4月30日の鳩山代表の「謝罪会見」を受けて「説明責任は果たされているし、納得のいくものだった。(代表を)辞める話ではない」と党としての立場を説明したが、認識が甘いと言わざるを得ない。
西松献金事件の教訓から民主党は今回、政治資金問題第三者委員会の報告書の指摘に従い、鳩山氏の会見を党本部ではなく議員会館で行うなど、「鳩山代表個人立場」と「党の立場」をせっかく分離したにもかかわらず、「鳩山個人」の会見の直後に、その内容を党としての検証なしに受け入れてしまったからだ。岡田幹事長は少なくとも「現段階では……」という留保をつけるべきだった。
なぜそう思うのかというと、鳩山氏の説明にはかなり苦しい部分があるからだ。
今後もし、会見での説明と異なる事実が出てくるような事態になると、民主党が被るダメージは小さくない(実はすでに出始めている)。鳩山氏は個人として弁護士を雇い、検証結果を個人として発表した。この場合、弁護士には第三者性が求められていないから、検証結果はクライアントである鳩山氏の意向に沿うものだと思うのがふつうだ。なので、民主党は民主党で党として客観的な事実関係の調査をすべきだった。いまからでも遅くはない。
では、今回の鳩山氏のケースはどの程度の悪質性があるものなのか。わたしの知る限りで解説してみようと思う。みなさんはどう思われるか。
まず、収支報告書に寄付をしていない人の名前を使って寄付をしたかのように書いてあるので、違法であることは間違いない。政治資金規正法の趣旨は、政治資金のカネの流れを透明にすることだ。政治資金の拠出者がどのような人か、国民がチェックできるようにするという意味である。その拠出者を何年にもわたって偽っていたのだから、資金の透明化という法の趣旨を逸脱した悪質な行為であることは間違いない。
ところが、会見での説明を信用すれば、今回のケースでは真の拠出者が実は鳩山氏自身だったというからややこしい。
そもそもなぜ、政治資金の流れを透明化する必要があるかというと、資金の拠出者と寄付を受けた政治家の政治活動の関係をチェックできるようにするためだ。具体的には、寄付を受けた個人や企業・団体に政治力を使って便宜供与をしていないかなどの監視である。
拠出者がゼネコンであれば、公共工事の受注に便宜を図ったのではないかとか、拠出者に有利な質問や答弁をしていないか、とか。その意味では、経済閣僚を務めることが多い与謝野馨氏が商品先物取引業者から迂回献金を受けていたというと、かなり灰色っぽい印象になる。
それが鳩山氏の「架空献金」の場合は原資が鳩山氏自身の個人資金だったというのだから、その意味での悪質性はほとんどゼロに近いといってもいいかもしれない。
情報開示や透明性という意味では完全な「クロ」だが、カネの出自というか寄付の趣旨については限りなく「シロ」に近いというのが今回のケースではないかと思う。
誤解を恐れずにあえて言えば、小沢一郎前代表のケースは法的にはシロだと思うが、世間が疑いの目を持って見るのは仕方がない。ただし、小沢氏の場合は検察の必死の捜査にもかかわらず、便宜供与などの悪質性が発見できなかったというわけだ。
一方、鳩山氏の場合はこれとは逆で、立件されれば有罪になる可能性が高い。だが、肝心のカネの趣旨に悪質性がほとんど感じられないというものだ。
以上は、あくまでも会見の内容を信じればという前提の話である。だが、本当に額面通り信じてよいものなのか。
政治資金が不足したときの補充や鳩山氏個人の支出のために預けていた鳩山氏個人のカネを、秘書が勝手に他人名義で資金管理団体に寄付していた―――鳩山氏の説明を要約するとこうなる。これを信じる人がどれくらいいるだろう?
信じてもらうには、それなりに説得力のある「理由」が必要だろう。
鳩山氏の説明によれば、秘書は弁護士のヒアリングに対して「本体、当該秘書が直接、これらの方々に寄付をお願いすべきであったものを怠ったことから事実でない記載をし、それを繰り返してしまった」と話したという。加えて鳩山氏は、「私に対する個人献金があまりに少ないので、そのことがわかったら大変だとの思いがあったと推測している」と述べ、同席した弁護士も「(担当者の)自己保身だと思う」と強調した。
推測としては確かに成り立つ。「企業・団体献金より個人献金」と主張している手前、あまりに個人献金が少ないとかっこうがつなかいという動機もあり得る。鳩山事務所では秘書に対して個人献金を集めるノルマがある、などの事実があればより説得力は増すだろう。だが、そのような事実は鳩山氏の説明の中には出てこなかった。
さらにもし、鳩山氏が個人献金が少ないことを気にしていたとしたら当然、政治資金の管理状況などについても関心が高かったはずだ。すべて秘書まかせで、何年間も不適切な処理に気づかなかったということと矛盾する。そもそも政治家が個人献金の多寡を気にするという話はあまり聞いたことがない。
要は、秘書が虚偽記載を続けていたことに関する説得力のある動機が思いつかないということだ。鳩山氏の「〜と推測している」、弁護士の「〜と思う」という発言も曖昧だ。自分の公設秘書なのだから、「どうしてこんなことやったんだ」と一言聞けば済むはずだ。国民が知りたいのは、推測ではなく事実である。鳩山氏の秘書はなぜ、何年にもわたって不適切な処理を続けていたのか。そこには明確な意図があった、と考えるのが自然だろう。
問題発覚のきっかけは、わが親会社の朝日新聞が「故人献金」の存在を指摘したことだった。それを週刊新潮がさらに深堀りをして、複数の「架空献金」があることをスクープした。
会見での説明によれば、年に400万円から700万円、05年からの4年間で193件2177万8000円にのぼり、名前を使われた人が約90人いたという。だが、「架空献金」はこれだけでなかった可能性も出てきた。
7月2日付の産経新聞に、〈議員献金も個人資産?〉という記事が掲載された。与党プロジェクトチーム(PT)の調べとして、鳩山氏が支部長を務める民主党の政党支部に03年から07年までの間に選挙区内の道市町議会議員42人(元職含む)から、総額約1650万円の個人献金があったことがわかったという。
〈献金はすべて毎年12月25日にそろって行われており、金額もほぼ同額で計画的に行われた可能性がある。PTでは「献金は鳩山氏個人の資産を原資としていた可能性があり、政治資金規正法違反や詐欺の疑いもある」(自民党幹部)とみている〉というのだ。
これは会見後、新たに出てきた新事実である。
一般に国会議員が系列の県市町村会議員に寄付をすることはよくあるが、地方議員が国会議員に「上納」するという話はあまり聞かない。自民党幹部が指摘するように、鳩山氏個人の資産を原資としていた、つまりこれも「架空献金」だった可能性がある。「一連の架空献金には何らかの意図があった」との疑いがさらに強くなったと言わざるを得ない。
それはいったい何なのか。先の週刊新潮の記事では、日大法学部の岩井奉信教授が「マネーロンダリングが、真っ先に疑われますね」として、以下のように解説している。
「大口の献金を貰ったが、法廷上限を超えていた。それを完全に裏金扱いするのもさすがにマズいと考え、適当に支援者名簿の中から名前を借りて小口に分散させた」
これはかなり説得力がある。では、その大口献金の拠出者とは誰なのか?
実は、今週号の週刊朝日(マイケル・ジャクソンの表紙)で、
与謝野「迂回献金」発覚でも検察は動かない―――
違法献金「Xファイル」全調査
という大特集を組んでいる。興味のある方はぜひ読んでいただきたいが、そこに鳩山氏の「架空献金」問題について「鳩山(邦夫)氏に近い関係者」のコメントとして、次のような解説を掲載している。
「弟の邦夫さんが07年には母と姉からそれぞれ計600万円ずつの献金を受ける際、同一の政治団体への個人献金の上限が150万円であることから、超過分を別の三つの政治団体を迂回させていることが報じられた。常識的に考えて由紀夫さんにも同じ額が献金されているはず。由紀夫さんは資金管理団体と政党支部しか受け皿がないので、超過分を故人などの名義を使って割り振ったのでしょう」
鳩山家は言わずと知れた超大金持ちで、兄弟の母・安子さんの名義になっている東京・音羽の「鳩山御殿」は土地の評価額だけでも約50億円になるといわれる。弟の邦夫氏は先の「迂回献金」が発覚した際、「母の愛だ」と釈明した。
兄・由紀夫氏の架空献金も実は「母の愛」ではなかったか。
もしそうだとしたら、カネの趣旨(ワイロ性)としては限りなく「シロ」に近いと言えるかもしれない。だが、別の問題が新たに生じる。
千葉大法学部の新藤宗幸教授は週刊朝日の取材にこう話した。
「(前略)仮に政治活動にきちんと使っていなかったとしたら、非課税の政治資金を利用して相続税を脱税する形に……(後略)」
実はこの政治団体を使った「課税逃れ」こそ、政界全体に広がる「パンドラの箱」なのだ。
自民党は現在、総選挙に向けたマニフェストもろくにつくれない状態で、幹部たちは「ネガティブキャンペーンで乗り切るしかない」と話すありさまだという。その先兵とされているのが産経新聞に出ていたPTだ。もともとこの問題も出元は自民党の事務当局だといわれている。複数のメディアに「ネタ」が持ち込まれていたとの情報もある。きっかけとなった故人献金問題が報道された直後には、官邸周辺から「これで民主党に回復不能な打撃を与えることができる」と喜び≠フ声が聞こえてきたという人もいる。
だが、結論からいうと、自民党がこの問題を徹底的に追及できるかどうかはかなり微妙だ。なぜなら、この政治団体を使った贈与税、相続税の「課税逃れ」は世襲議員を中心にかなり広く行われる政界のタブーだからだ。
週刊朝日6月26日号で、ジャーナリストの高瀬真実氏が小渕優子少子化担当相の課税逃れを指摘したばかりだった。高瀬氏はかつて週刊現代誌上で安倍晋三首相(当時)の「脱税」を指摘して話題となったことがある。鳩山氏のように架空の名前を使う手口は珍しいが、どこが悪いのかという本質的な部分では同じこと。いずれにしても、やりだしたら「あいつも」「こいつも」ときりがない案件で、いつか浄化しなければならないが、与野党ともなかなか手がつけられない日本の政界の宿痾のようなものなのだ。
もちろん、だからといって鳩山氏の架空献金が許されるわけではない。
ただ、今回、取材してみてあらためて政治資金の問題は根が深いと感じた。報道ベースで最近、発覚したケースを拾っただけでもかなりの数になってしまう。それは与野党議員を問わない。たまたま発覚した案件をそのたびごとに追及していてもきりがないと、正直思った。だが、放置すれば国民の政治不信につながることは間違いない。
いまは選挙前なのでとくに自民党は藁にもすがる思いで、せっかくのネタをネガティブキャンペーンに使いたい気持ちもわかる。だが、やはりこれは政界全体の問題として与野党を超えて浄化に取り組むべきではないかと思うのだ。
(といっても、ドロボーに警察官をやらせるような話なので、なかなかむずかしいかもしれないが……)。
自民党のPTも、調子に乗ってやっていると「天にツバ」になることを忘れないほうがいいだろう。
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