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http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090703dde012010011000c.html
特集ワイド:新市長は33歳新人 ルポ・ここは横須賀
◇保守王国に今、何が
小泉純一郎元首相の地元、神奈川県横須賀市の市長選で、33歳の無所属の新人候補が当選した。自民、公明、民主が支持し、小泉元首相も応援した現職市長を破っての勝利。保守王国に何が? 横須賀に向かった。【國枝すみれ】
京浜急行の北久里浜駅、午前7時半。「おはようございます。これからもよろしくお願いします」
先月28日に当選した後も駅に立つ吉田雄人さん。通勤客の20人に1人くらいは目礼し、30人に1人くらいから「がんばって」と声がかかる。
握手を求めた一人、鹿野明子さん(70)は「これからは若い人の時代よ」ときっぱり。丸井勝一さん(64)は「彼は雨の日も風の日も立っていた。日ごろどこで何しているのかわからない人に選挙前だけお願いされても困るけど……」。
吉田さんは1975年生まれの33歳。千葉市、三重県松阪市に次いで全国で3番目に若い市長となる。早稲田大学雄弁会の出身で、小説家志望だったが挫折。コンサルタント会社に2年間勤め、大学院に戻った。03年に横須賀市議に初当選、07年に再選。昨年末に市長選出馬を決意した。
駅立ちを終えた吉田さんに喫茶店で話を聞いた。「若い」と騒がれるのは嫌ですか?
「別に。事実と受け止めましょう。でも、私の年齢で若いといわれるのは政治業界ぐらいですよ」
勝利できたのはなぜ? 「勝因分析はマスコミの方々の仕事ではないですか?」という答えが返ってきた。メディアが市長選の結果と小泉元首相の影響力低下を結びつけるのが心外らしい。
「強調したいのは、小泉さんに限らず、国政のビッグネームや政党組織が地方政治を作ったり、変えているわけではない、ということです。横須賀では36年間も官僚出身の市長が続き、閉塞(へいそく)感があった。市民一人一人がそれを変えようと行動したのだと思う」
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吉田さんは今回、マニフェスト(政権公約集)を作った。政策には「す」「2」「4」「長」という印がある。「すぐにやる、2年目までに実施、4年ぐらいかかる、それ以上かかる改革」という意味だ。市長と副市長専用の公用車廃止は「す」。年3100万円節約できるという。
マニフェストの表紙には「チェンジ。やればできる!」。これはもしかして?
「米国のオバマ大統領とキムタク(木村拓哉)のドラマからぱくりました」。笑うと、選挙運動中の演説で連発したというギャグやダジャレを披露してくれた。「外見ではキムタクに負けるが中身では負けない」「チェンジはオバマさんからとってます。まねふぇすと」
ノリが若い。しかもリラックスしている。一方の蒲谷亮一市長は東大卒、旧自治省出身の64歳。好きな歌は「時代おくれ」(河島英五)、「人生しみじみ」(天童よしみ)、「北へ」(小林旭)。
吉田さんは宣伝カーを使わず、自転車で選挙運動をした。「3月末の時点では泡沫(ほうまつ)候補扱い」だった。だが、選挙運動を手伝うボランティアは日増しに増えた。自転車の後をついてくる支援者も出現した。1000円、2000円という少額の寄付が集まって1000万円を超えた。
「金がない者が選挙に勝つ時代になったんだ」。応援した地元ケーブルテレビ役員の服部真司さん(76)が笑った。「それに国政で自民党か民主党か政権選択という時期に相乗り。これでは選挙民はばかにされたと、そっぽを向くよ」
42人の市議のうち30人は負けた現職を支持した。その一人、伊東雅之市議(57)は誰もが組織を100%まとめきれなかったと明かす。「千葉市長選で若い候補が勝ったらつらい、という話はしていた。うちの後援会も若い連中の一部が吉田氏の応援にまわった。抑えきれない風だった」
神奈川新聞の出口調査によると、無党派層の60・9%、自民党支持者の38・0%、民主党支持者の58・2%が吉田さんに投票した。
横須賀といえば、ペリーが来た浦賀、そして米海軍の基地だ。基地正門前にあるハンバーガー屋でつなぎなしビーフ100%のヨコスカ・ネイビー・バーガーをほおばる。
市長選で基地問題は大きな争点とならず、反基地の立場をとった候補は落選した。基地には米兵2万人が駐留し、日本人5000人が働く。国から市への基地交付金は年21億円以上。2年前からは原子力空母の寄港と引き換えに10年間で70億円が支払われる。「横須賀には戦前から日本海軍の基地があった。戦場となり戦後に米軍に基地化された沖縄とは違う」(市基地対策課)という事情もある。
市の人口は3年間で1万人減り、現在は約42万人。雇用も減っている。市内従業員数は91年から15年間で約1万8000人減った。高齢化による所得減少、地価の下落などで市の税収も下がり気味だ。市債残高は約3100億円超。市民1人あたり約75万円分の借金がある計算だ。
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三浦半島は山あいにへばりつくように集落が点在する。住民はおっとりしていて、保守的だ。「ここは半島、いきどまりなの」。60歳の女性が言った。
横須賀は小泉王国だ。逓信相を務めた又次郎、防衛庁長官を務めた純也、純一郎元首相とすでに3代続いている。次の衆院選では4代目となる進次郎さん(28)が出馬を予定する。
めったに地元に戻らない小泉元首相がこの市長選では4回横須賀入りして、現職を応援した。だが、ある演説会では500人の参加者を集めるはずが280人しか集まらなかった。伊東市議は「(後援会が)油断しただけ」と説明するが、小泉王朝にそろそろ陰りが出てきたという見方もある。
商店街で意見を求めると、「日本人ってこんなに率直だったっけ」と思うほど、はっきりと小泉批判をする人が多かった。レストランの経営者(65)は「小泉さんで横須賀の何が変わった? 格差がついただけ。このあたりでも店は7、8軒つぶれたよ」。書店勤務の女性(54)も「純也のころから応援していたお年寄りさえ、旧態依然としていたらだめ、はたして世襲でいいのか、という雰囲気になっている」。「小泉さん、影薄いよ。進次郎? 品質に裏打ちされていないブランドはただのメッキだよ」と話した64歳男性もいた。
自民党の横須賀支部への取材申し込みは、丁重だけど断固とした口調でお断りされた。「どうしたって進次郎の話になりますから」
進次郎さんは今のところ当選は堅いとうわさされる。だが、現職市長も数カ月前までは圧勝すると思われていた。
横須賀に再び黒船はやってくるのだろうか?
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ファクス03・3212・0279
毎日新聞 2009年7月3日 東京夕刊
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