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錯覚だらけの自民党
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2009/07/post_197.html
投稿者: 田中良紹 日時: 2009年07月01日 15:55
自民党の伊吹元幹事長が6月27日のテレビ番組で「自民党が問われているのは、人気がある人を旗に立てた事だ」と述べ、国民の人気度に比重を置いて麻生氏を総裁に選んだ事が政治を混迷させているとの認識を示した。昨年の自民党総裁選挙直前に既にその事を指摘していた私は、「小泉純一郎氏の登場以来まともな政治を見失い、錯覚だらけに陥った自民党がようやく気づいたか」と思う反面、「大半の議員を入れ替えない限り錯覚は続くだろう」という気になった。
昨年の9月10日に私は「総裁選挙は未熟すぎる民主主義の証明」というコラムを書いた。「『政策を競い合う』と称して『開かれた総裁選挙』を行なう自民党が民主主義的で、代表選挙をやめた民主党は民主主義的でないと公言する政治家やメディアは、民主主義を全く理解しておらず、この国の未熟さを証明しているだけ」という内容のコラムである。
そもそも政党内の選挙は国民が参加していないのだから、やろうがやるまいが民主主義とは何の関係もない。民主主義国の政党が党首選挙を行うのは基本的に国政選挙に敗れた時で、国民の支持を失った党首を交代させる。反対に国政選挙に勝利した党首を党の都合で交代させれば民意を無視する事になり、それこそ民主主義に反する。サッチャーもブレアも10年以上も党首選挙などやらずに党首を続けた。従って参議院選挙で勝利した民主党が代表選挙をやる事は民意無視の意味になる。未熟な政治家やメディアにはこの原理が分からない。
自民党は福田総理が辞任したから選挙は必要だった。しかし「政策を競い合う」と称して華々しい選挙をやれば、党内に亀裂が生じ、決して好ましい結果にはならない。それを理解出来ないのは、自民党が小泉総理を誕生させた01年の総裁選挙の思い出に浸っているからだ。あの選挙は田中真紀子と小泉純一郎という希有なキャラクターと橋本龍太郎と野中広務という希代の悪役が存在したから成り立った。それが内輪の選挙を国政選挙と錯覚させる程の効果を生んだ。しかしその再現などありえない。実際に町村派は総裁選挙のおかげで深刻な分裂に突入した。
そうした事を理解できないのが政治未熟児に退化した今の自民党である。候補者を乱立させれば国民の関心を集めるという錯覚で、とても総理の器とは思えない面々を候補者に並べた。まともな国民は自民党に人材がいない事を痛感した。さらに馬鹿馬鹿しいのが「政策の競い合い」と称する茶番である。同じ政党の中で何が「政策の競い合い」か。政治のリーダーに求められるのは「政策」ではない。状況を的確に判断する能力、人心を掌握する能力、社会の隅々にまで目配り出来る能力、そして何事にもたじろがない胆力、そうした力を持つ人間こそがリーダーにふさわしい。世界はそういう目でリーダーを選んでいる。日本は「政策」を重視するからリーダーが政権を投げ出す。
「これじゃ自民党の支持率は下がるだけ」と思って見ていると、天罰が下ったのか米国のリーマンブラザースが倒産し、世界的な金融危機が始まった。往年のまともな自民党なら即刻総裁選挙を切り上げて全員が政治の現場に戻ったと思う。ところが政治の使命を忘れた自民党は仕事よりもパフォーマンスを重視する。国家の危機を前に阿呆らしい茶番を止めなかった。
だから総裁選挙を終えて麻生新政権がスタートしても、ご祝儀どころの話ではなかった。世論調査は厳しい数字を突きつけた。即刻解散に踏み切る筈が解散すら出来なくなり、政治の迷走が始まった。全ては錯覚だらけの総裁選挙に起因している。伊吹元幹事長はその事に言及した。しかし本当に自民党は錯覚に気付いたか。とてもそうとは思えない事が続いている。
一つは総裁選挙の前倒しである。これは理屈が成り立たない。自分たちで選んだ総裁を自分たちの都合で勝手に代える話だが、自民党の総裁は内閣総理大臣となって日本国の最高責任者である。すでに自民党の私物ではない。自民党の都合だけで代える事など許されない。代えるなら総理としての権力をいったん国民にお返しし、間違った総裁を選んだ事を国民に詫びてから総裁選挙をやるべきである。
一方でもし麻生総理が政治の混迷に責任を感じて辞任するなら、去年の総裁選挙で2位につけた与謝野馨氏が臨時の総理となり、直ちに解散総選挙を行って国民の信を問うべきなのである。それがこうした際の政治の常道ではないか。このところ報道されている桝添、石原、小池氏らによる総裁選挙など錯覚にも程がある。ひたすら馬鹿馬鹿しい話だ。
もう一つが東国原宮崎県知事の担ぎ出しである。自民党は東京、大阪、宮崎の3人のタレント知事の応援を得ないと選挙が危ない。そこで国政に移りたくてじたばたしている東国原氏に狙いを定めた。大臣ポストや政策の受け入れをちらつかせ、橋下大阪府知事共々囲い込みを図ったが、これも大いなる錯覚である。田中真紀子・小泉純一郎コンビに比べたら、東国原・橋下コンビなど所詮は三流テレビ芸人である。役者の格が違いすぎる。森元総理や古賀選挙対策委員長らがシナリオを練り上げたのかもしれないが、役者の演技が下手すぎて、もはやシナリオ通りには運ばない見通しになった。錯覚はこうして自民党の屋台骨を蝕んでいく。
自民党がやるべき事は早く錯覚から目を覚まし、古い自民党こそが憲政の常道を歩んできた事を思い出し、この際は野党となって切磋琢磨と研鑽を積み、党の体質を一から鍛え直す事なのである。
(転載終わり)
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