検察審査会の改革は政治家の摘発に役に立つか
検察審査会は、無作為に選ばれた市民一一人が、検察官の不起訴処分に対して申し立てがあった事件について、「不起訴相当」、「不起訴不当」、「起訴相当」を判断する機関である。
これまでは、検察審査会が、「不起訴不当」や「起訴相当」を決議して検察庁に通知して、検察庁において再捜査しても、再度、検察官が不起訴処分にしてしまえば、検察審査会としてはそれ以上何もできなかった。
これに対して、司法制度改革審議会が2001年6月13日にまとめた最終意見書で、検察審査会の改革も提言しており、それに基づいて、検察審査会法も2004年に改正され、2009年5月21日から、改正検察審査会法が施行されている。
今回の改正点は多数あるが、特筆すべき点は、以下の2点である。
第1に、検察審査会が行った「起訴相当」議決に対し,検察官が不起訴処分をした場合又は法定の期間内(原則として3ヶ月以内)に処分を行わなかった場合には、検察審査会は再度審査を行い,その結果,再び「起訴相当」議決をした場合には、裁判所が指定した弁護士が被疑者を起訴し、その弁護士(指定弁護士)がそのまま検察官役をして公判活動を行うことになる(起訴議決制度)。
第2に、検察審査会は,審査会議において,法律上の問題点等について,弁護士である審査補助員から助言を受けることができる(審査補助員制度)。2回目の「起訴議決」をする際には必ず審査補助員に委嘱することになっている(必要的委嘱)。
このように、改正検察審査会法は、弁護士の関与を増やすとともに、これまで、検察官が起訴するか否かの裁量を独占していたのに対し(起訴独占主義)、その例外を認めた点に大きな意義がある。
これは、起訴するか否かについて、国民の健全な常識を直裁に反映させるために設けられた制度である。
ところで、最近、検察審査会では、政治家に関わる事件について検察官が不起訴処分をしたことに対して、「不起訴不当」の意見を出すことが増えていたが、検察官はその意見に従うことはなかった。しかし、改正検察審査会法の施行によってその状況が変化する可能性がある。
西松建設が、ダミーの政治団体名義で二階俊博経産相が代表を務める政治団体「新しい波」のパーティー券を購入していた問題について、東京地方検察庁の検察官は、元社長の国沢幹雄被告について不起訴処分(起訴猶予)としていたが、東京第三検察審査会は、2009年6月16日、これについて、「十分な証拠があるのに納得できない。すべての部分を公の法廷で説明した方が国民全体が納得する」として、「起訴相当」議決をした。
東京地検は、これを受けて、2009年6月27日、国沢被告に対する不起訴処分を変更して、東京地方裁判所に追起訴した。
東京地検が異例な早さで対応したのは、公訴時効が迫っていたり、国沢被告の刑事裁判がその前に結審して判決を目前にしていたことなどの事情もあるが、それでも、東京地検が起訴すると判断したのには世論の反発等がありうることを考慮したためではないかと考えられる。
そして、今回の対応からすると(国沢被告自身は政治家ではないが、二階経産相の政治資金規正法違反の共犯的な存在である)、とりわけ、政治家の汚職案件を取り扱う特捜部の事件については、検察審査会が一度「起訴相当」議決をすると、検察庁が起訴する方向に傾きやすくなるのではないかと想像される。
なぜかというと、世論からの圧力もあるし、検察審査会が2度目の「起訴相当」決議をした場合には、裁判所から指定された弁護士(指定弁護士)に、一件記録を引き継いで、その弁護士が公訴提起や公判活動を行うことになることから、特捜部としては、弁護士に捜査の手の内を全部見られることには耐えられないと考えられるからである。
その意味において、検察審査会は、これまで検察庁が不起訴にしてきたような政治家についても、検察審査会に申し立てられて、一度「起訴相当」議決がされた案件については起訴される可能性が出てきたと考えられる。
これは、検察庁がどちらかというと時の権力と結びついて、とりわけ、与党の政治家に対して甘い判断をして、不起訴処分にしてきた慣行が否定されることを意味する。
これは、検察審査会の改正当時には必ずしも想定されたり意識されていなかった事態であるようにも思われるが、検察審査会の活用の仕方によっては、これまでの検察の起訴独占主義のあり方を大きく変える契機を持っている。
改正検察審査会法が、政治家の摘発に大きな効果をあげるかどうかを私たち市民は注視していきたい。
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フォローアップ:- ↑URLが抜けていました。 ヤマボウシ 2009/6/29 10:45:38
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