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http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20090628k0000m070099000c.html
社説:西松追起訴 民意が検察動かした
裁判だけでなく捜査も変わっていくことを予感させる異例の処分変更だった。西松建設が自民党二階派(会長・二階俊博経済産業相)の政治団体のパーティー券をダミーの2政治団体名義で購入していた問題で、東京地検特捜部は同社元社長、国沢幹雄被告(70)を政治資金規正法違反で追起訴した。特捜部は今月1日に不起訴にしていたが、東京第3検察審査会の「起訴相当」議決を受けて処分を変更したのである。
検察審査会は選挙権のある国民の中からくじで選ばれた11人の検察審査員が、検察官が容疑者を不起訴処分にしたことの当否について審査する。1948年に制度が始まってから計約54万人が審査員や欠員が出た時のための補充員に選ばれ、15万件余りが審査されてきたが、議決には法的拘束力がなく、あまり注目される存在ではなかった。しかし、今年5月21日、裁判員制度と同時に施行された改正検察審査会法では、審査会が「起訴相当」の議決を2度行うと法的拘束力が生じることになった。つまり、国沢被告に対する審査会の「起訴相当」の議決はまだ1回だが、再び「起訴相当」が出ると、裁判所が指定する弁護士が検察に代わって国沢被告を追起訴することになる。検察はそうなる前に審査会の意向を重視して処分変更したのであり、起訴権限を検察が事実上独占していた司法制度の壁に民意が穴を開け得ることを示した。
西松建設事件ではダミーの政治団体から多額の献金を受けていたとして小沢一郎・前民主党代表の秘書が起訴されたのに対し、同社のダミー団体名義でパーティー券を購入してもらっていた二階氏側の会計責任者らを不起訴にしたことに根強い批判がある。検察審査会は二階氏側について「不起訴不当」の議決を出していたが、今回も検察は再び不起訴とした。西松側だけを起訴したことについて公平性を欠くとの指摘もある。また、世論にあおられ「なんでも起訴しろ」という風潮が出てくることも懸念される。しかし、とかく「説明しない」「非を認めない」と批判される検察に対し、世論が検察審査会に注目する機会が増えていくのではないか。裁判員制度と同様、民意を司法に反映させる流れを変えることはできないだろう。
検察審査会は全国の地裁や地裁支部の中に165ある。それぞれの地域で選ばれた審査員は6カ月の任期を務め、犯罪の被害者や告訴した人からの申し立てを受けて審査するだけでなく、審査員が新聞記事などを読んで問題を感じた事件について自ら審査を始めることもある。国民一人一人が自覚と責任を持って司法改革の芽を育てていきたい。
毎日新聞 2009年6月28日 0時10分
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