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内部告発:新銀行東京、オリコンが訴訟 告発者に露骨な口封じ
放送局や出版社の求めに応じて実名で内部告発したり、コメント取材に協力した人に対し、番組や記事で批判の対象となった企業が損害賠償を求める訴訟が東京地裁と東京高裁で係争中だ。2件とも報じたメディア側は訴えられなかった。識者らからは「内部告発行為を萎縮(いしゅく)させかねない」と批判の声が上がっている。【臺宏士】
◇通告なく訴状送付
経営再建中の新銀行東京(津島隆一・代表執行役、東京都新宿区)から昨年8月、東京地裁に提訴されたのは、元行員の横山剛さん(40)だ。横山さんは「事前の通告もなく突然、裁判所から訴状が送られてきた」と驚きを隠さない。
在職時に見聞きした新銀行東京が抱える問題についてテレビ朝日や週刊現代(講談社)の取材に述べた内容が、機密情報の漏えいに当たるとして1000万円の損害賠償などを求められている。
横山さんは、テレビ朝日の報道番組「サンデープロジェクト」で「東京都幹部が(銀行の)各執行役に迫ると申しますか、苦労しながら(都側に)答弁しているなと思われるような部分もあった」(08年6月8日放送)、週刊現代では「配属された経営企画部には当時、一つの命題が課せられていました。『マスタープラン』にどれだけ経営の実績を近づけられるか、ということです」(同6月28日号)などと実名、顔出しで証言した。
新銀行東京は新入行員に機密保持のための誓約書を提出させるが、その情報の範囲は「業務を遂行するにあたり知り得る一切の情報」と非常に広い。一般的な感想にも映る横山さんの証言も「機密情報」に当たるというわけだ。
横山さんは、大手生命保険会社などを経て、開業を半年後に控えた04年10月に同行に入行。同行幹部と、当時は都の新銀行設立本部長だった津島氏ら都幹部との会合の記録を担当し、内容を知り得る立場にあった。
1000億円に上る巨額の累積損失と400億円も追加出資せざるを得なかったずさんな銀行経営。原因となった無担保・無保証を売り物にした、コンピューター審査によるスピード融資は、都が04年2月に業務指針となる「新銀行マスタープラン」として打ち出した。しかし、石原慎太郎知事は都議会で「マスタープランは出来上がったモデルカー。どう運転するかは経営者の才覚」と述べ、プランの成否を銀行側に押しつけ、都の責任を認めようとしない。
横山さんは証言が同行の神経を逆なでした理由について「経営難に陥った新銀行東京の責任問題が知事にも波及するからだ」と指摘する。同行は、横山さんが所有している会合でのやりとりの録音やそれを文字に起こした「メモ」の返還も求めている。
訴訟問題は、昨年9月の都議会で取り上げられている。石原知事は「この訴訟は元行員の機密保持義務違反に対して提起したものだ。提訴したことをもって言論弾圧などという指摘は全く筋違いだ」と突っぱねた。質問した酒井大史都議(民主)は毎日新聞の取材に「内部告発を抑えることを狙った見せしめ的な訴訟だ。横山さんに対する不当な提訴を新銀行東京は取り下げるべきだ。この訴訟は、来月の都議選で追及する課題の一つだ」と話す。
横山さんは「都民に知らせる必要があると思って公のために証言した。内部告発者を狙い撃ちにした言論弾圧だ。都民の税金で訴訟を起こし、お金を浪費しようとしている」と憤る。
新銀行東京は、毎日新聞の出した質問書に対し「横山氏が守秘義務違反をして、経営や業務に関する情報を漏えいしたと判断し、提訴しました。詳細は、訴訟継続中のためお答えできません」と回答した。
◇週刊現代は「支援」
新銀行東京は、実名での証言を報じたテレビ朝日や講談社を提訴していないが、両社の対応には温度差があるようだ。
テレビ朝日は毎日新聞の取材に対し「メディアという立場上、弊社が当事者でない裁判に関して、原告・被告のいずれかに直接的な協力をすることはありません。番組に出演していただいたことを踏まえ、横山さんに対しては、適切な対応をしてきています」(広報部)と回答した。
週刊現代編集部は「金銭的な直接援助は難しいが、メディアなので、誌面で支援していきたい。『新銀行東京の卑劣な手口』という批判記事を掲載したほか、弁護団には訴訟に必要な資料収集などできる限りのサポートを申し出ている。裁判に加わってほしいという要請があれば検討したい」としている。
訴訟は、昨年10月からこれまで口頭弁論を2回開いたが現在は地裁の提案を受けて和解協議中だ。
◇編集部側が記事掲載を強行 取材協力者が名誉棄損問われ
「編集者が勝手にまとめたコメントで、なぜ名誉棄損に問われないといけないのか。編集部に直接行って掲載しないよう求めたのに」。ジャーナリストの烏賀陽(うがや)弘道さん(46)は「取材協力者を狙い撃ちした口封じ目的の恫喝(どうかつ)訴訟だ」と憤る。
06年3月、月刊誌「サイゾー」編集部から音楽ヒットチャートのオリコン(小池恒社長、東京都港区)が公表するチャートの集計方法について電話取材を受けた。しかし、編集部がまとめた、集計方法に疑問を投げかけるコメント内容は、烏賀陽さんの意図に沿ったものではなかった。このため、実際に編集部にまで赴き掲載中止を訴えたが「編集部が締め切りを理由に掲載を強行した」といい、コメントは4月号に掲載された。06年11月、オリコンはサイゾー編集部を訴えずに烏賀陽さんだけを相手に5000万円の損害賠償と謝罪広告掲載を求める訴えを東京地裁に起こした。
東京地裁の綿引穣裁判長は昨年4月、「編集権は出版社にあるが、コメントがそのまま掲載されることに同意していた場合は、取材に応じた側も例外的に責任を負う」などと判断し、烏賀陽さんに100万円の支払いを命じた。「同意などない」とする烏賀陽さんの主張は通じず、控訴した。
控訴審では、サイゾー編集部が姿勢を明確にしたことで、状況を変える可能性がある。烏賀陽さんにコメントを求めた副編集長(退職)は弁護団に「一貫して載せてほしくないと言っていた。無理やり載せてしまったことに責任を感じていた」という趣旨の証言をし、この記録は東京高裁に証拠として提出された。
揖斐(いび)憲・同誌編集長は「コメント内容について烏賀陽さんから同意を得る手続きに過失があった」と認める。1審は同意を認定したが、2審では前提が崩れたことになる。オリコンは06年12月に「事実誤認に基づく誹謗(ひぼう)中傷があったことを認めてもらい謝罪すれば提訴を取り下げる」との見解を発表している。
当事者のサイゾー編集部が控訴審で不手際を証言したことで矛先を烏賀陽さんに向けるのは、筋違いだという格好になる。東京高裁での審理は、昨年11月の2回目の口頭弁論を最後に高裁の提案を受けた和解協議が始まり、10回を超えた。
毎日新聞がこうした状況の変化について質問したことに対し、オリコンは「控訴審で係争中なのでコメントはできない」と回答した。
◇不正暴けなくなる−−青山学院大(メディア倫理法制)大石泰彦教授
新銀行東京やオリコンによる内部告発者や取材協力者を狙い撃ちにした今回の訴訟は、組織防衛を図るため、不利な情報を抑えるための見せしめだと批判されてもやむを得ない。これらの公共的な企業は指摘について説明責任があり、企業倫理を逸脱した反公共的な恫喝訴訟だ。ただちに取り下げるべきだ。
企業社会では、内部情報を外部に出すのは恐れ多いのかもしれないが、特に新銀行東京は多額の税金の投入を受けており、内部で起きていることに関する情報は公共性があり、知る権利の対象だ。ずさん経営の要因を解明しようとする告発は、知る権利に奉仕する行為で、守秘義務違反という小さな倫理違反に矮小(わいしょう)化するのではなく、経営責任を隠そうというより大きな倫理違反こそ問われるべきだ。
公益通報者保護法では、こうした内部告発者を守ることができないという問題点も浮かび上がらせた。不当な訴訟から告発者を守る基金の設置など社会全体で保護する仕組みを考えていく必要がある。そうでないと社会は不正を暴く力を失いかねない。
メディアも実名での内部告発者を保護する責務がある。そうでなければ安心して情報提供ができない。横山さんに実名での内部告発をお願いしながら、訴訟になると「原告・被告のいずれかに直接的な協力をすることはありません」とするテレビ朝日の主張は、形式的で恣意(しい)的な倫理論で、間違いだ。内部告発者のメディア不信を招くだけだ。
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毎日新聞 2009年6月22日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/biz/news/20090622ddm012040025000c.html
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