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奈良市長選 「風」のった青年、「小泉チルドレン」破る
2009年7月12日21時10分
無名の青年が追い風に乗り、「小泉チルドレン」を破った。12日投開票の奈良市長選で初当選を確実にした民主推薦の仲川元庸(もとのぶ)氏(33)。政治経験や知名度がないにもかかわらず、総選挙を意識して与野党対決ムードを盛り上げた戦略が奏功し、返り咲きを狙った前自民党衆院議員の鍵田忠兵衛(ちゅうべえ)氏(51)らを抑えた。
仲川氏は大学卒業後、東京でサラリーマン生活を3年送り、奈良に帰郷。子育て支援のNPO活動に取り組んできたが、関係者以外に知られた存在ではなかった。5月、両親に立候補の決意を伝えると、「奈良は古いまちだから、何も変わらないよ」と反対されたという。
立候補を勧めたのは馬淵澄夫・民主党衆院議員(奈良1区)。現職の藤原昭市長が1期での引退を3月に表明したのを受け、「政権交代への思いを共有してくれる人」を条件に候補者探しを進めていた。党県連内から「こんなに若くて無名じゃ勝てない」と不満の声が上がったが、「古いタイプの政治家ではだめな時代なんだ」と説得した。
駅前などに立って「ゼロから新しい奈良をつくりたい」と訴えた仲川氏は、付き添った馬淵氏から話し方や声の大きさなど演説のコツを伝授され、徐々に聴衆の心をつかんでいった。6月の千葉市長選で民主推薦の31歳の熊谷俊人氏が初当選すると、「いちど若い人に任せないといけない」と道行く人から激励を受けることが多くなった。
大型地方選で連勝するなか、民主党本部は「奈良も勝てる」と判断。続々と応援に駆けつけた鳩山由紀夫代表、岡田克也幹事長、河村たかし名古屋市長らは「東の千葉に西の奈良。奈良から政権交代の先駆けを」と訴え、総選挙の前哨戦ムードをあおった。
市民の反応は上々だった。告示直前に近鉄奈良駅前などで演説した岡田幹事長は「何度か同じ場所に立ったが、これだけ多くの人に来てもらったことはなかった」と驚き、仲川氏も「こちらが訴えると、聴衆から波のように反応が返ってくる。街とキャッチボールをしているようだ」と手応えを感じていた。
ただ、仲川氏が街頭で訴えた内容は「無駄ゼロ」「しがらみゼロ」といったキャッチフレーズが中心で、財政再建や観光振興策などの課題に対する具体的な政策は聞こえてこなかった。県連幹部が「今なら誰が出ても勝てる」と表現したように、勝因は若さと民主への突風だった。
一方、自民と公明の推薦を受けた鍵田氏は、元奈良市長の亡父・忠三郎氏と親子2代にわたって「カギチュウ」の愛称で親しまれ、知名度は抜群だ。04年の市長選で初当選し、税滞納問題で辞職。出直し市長選で敗れたが、05年総選挙で「小泉チルドレン」の1人として奈良1区に立候補し、比例復活当選した。
陣営は自民への逆風を意識して政党色を薄め、政治経験の豊富さを強調。仲川氏とは対照的に自民党幹部らの応援はいっさいなく、亡父から引き継いだ後援会「忠山(ちゅうざん)会」が運動の中心になった。しかし、任期途中に衆院議員を辞めて市長選に再挑戦した姿勢に理解が得られず、後援会員の高齢化もあって支持を広げられなかった。
http://www.asahi.com/politics/update/0712/OSK200907120070.html
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