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伊サミット現地で改めて感じる、日本の首相の“存在感の薄さ”
上杉隆(ジャーナリスト)
【第85回】 2009年07月09日
サミット取材のため、イタリアにやって来た。昨年の北海道洞爺湖サミットに次いで2年連続、今回は「週刊文春」編集部からの依頼である。
開催地のラクイラは、4月に大地震に襲われたばかりのイタリア中部の都市、現在も復興作業の途にある。ベルルスコーニ伊首相が、当初の開催予定地であったマッダレーナ島から急遽、予定を変えてそこに移した。
わずか2ヵ月前の決定だったからだろうか、準備は間に合わず、結局、各国首脳の宿泊先も警察幹部学校の宿舎になってしまったほどだ。
ローマ・フィルミチーノ空港のテレビでは「サミットよりも、復興を」と叫ぶラクイラ市民の映像が流れている。夜の街を歩いたが、少なくとも、ここローマではサミット開催の盛り上がりはまったく感じられない。唯一、上空を飛び交うヘリコプターの音だけが、重要な国際会議の存在を知らせてくれる。
胡国家主席も欠席では
成果も期待できず
イタリアのニュースでは、オバマ米大統領のサミット初登場が大きな話題になっているくらいだ。核廃絶宣言などで欧州中から期待感をもたれている表れであろうか。イランや北朝鮮の核開発問題などで、オバマ大統領のリーダーシップへの期待は小さくない。
一方で、今回のサミットに限って言えば、政策的な話題の乏しさからか、冷めた見方も広がっている。
サミットの公式HPでも、その主ページには経済・金融危機からの克服を掲げているものの、具体的な展望を示すには至っていない。
http://www.g8italia2009.it/G8/G8-G8_Layout_locale-1199882116809_Home.htm
どうやら、世界経済の危機からの脱却は、9月に米ピッツバーグで開催予定のG20金融サミットに委ねられそうだ。
また、米ドルの基軸通貨の代替案を提示するとみられていた中国の胡錦涛国家主席も、ウイグルで発生している暴動に対応するため、サミット開始直前に帰国してしまった。IMF改革を含んだ世界金融の抜本的な改革の討議も、すでに開始前から肩透かしにあってしまったような感じである。
もはや、イタリアの青空とは対照的に、ラクイラサミットには暗雲が立ち込めている。
前回、前々回に引き続いて、今回のサミットでも、地球温暖化問題が、主要テーマにあがっている。G8各国は、それぞれ平均気温の上昇幅を縮める努力を約束し、洞爺湖サミットで決めた2050年までの温室ガス排出量半減を改めて確認しあうという。
だが、温暖化対策の取り組みについては、中国からの強い抵抗もあり、実現どころか、合意すらできないのではないかとみられている。
他にも、エネルギー、食糧、水資源など世界中に討議すべき問題は山積している。だが、そのどれもが熱いテーマになりそうもない。もはやサミットで話し合う内容ではないのかもしれない。
ここ数回のサミットでは、単に集まって、単に議論するだけの状態が続いている。テーマごとの討議は、金融サミットや水サミットが示すように、別の会議がイニシアティブを握るようになっている。
テレビで麻生首相の名前が
呼ばれることは無かった
こうした中で、日本の麻生首相はどのようにして、その存在感を示すことができるのだろうか。イタリアの報道に触れている限り、麻生首相の存在はないに等しい。だが、それは日本の政治が招いた結果であり、ある意味で、自業自得なのかもしれない。
小泉首相以降、4年連続で日本の首相は変わっている。当然ながらサミットに出席する首相も4年連続で変わっていることになる。そのためだろうか、麻生首相はイタリアでは、ほとんど認識されていないようだ。
「ベルルスコーニ首相が、日本の首相と会談しました」
ここまで書いたところで、たったいま(7月8日9:00現地時間)、「チャンネル5」に初めて麻生首相の顔が映った。ベルルスコーニ首相と会談している模様だ。
だが、麻生首相の名前が呼ばれることはなかった。ベルルスコーニ首相の名前が連呼されるのは当然だとしても、他の首脳、オバマ米大統領、サルコジ仏大統領、メルケル独首相、メドベージェフ露大統領、突然、欠席した胡・中国国家主席まで名前で呼ばれているのに、日本だけは「首相」という肩書きだけで済まされている。
繰り返すが、こうした状況は日本が自ら勝手に作り出したものだ。サミットが終わる度に、繰り返しリーダーが辞任し、国家としての信用を失っていったのは、誰のせいでもない。他国の首脳のみならずメディアが相手にしなくなってしまったのは、仕方のないことでもある。
まさか、麻生首相もそうなるとは思わないが、とにかく、無責任な政権投げ出しだけは御免である。
総選挙でも、総裁選でも、選挙に敗れての辞任ならば、政治的にも十分納得がいき、海外への説明もつくのだ。だが、不可思議な投げ出し辞任は、単に国内の政治不信を招くだけではなく、国際社会からの信用も失うことになるのだ。
安倍、福田のような首相の再登場を許す余裕は、もはやいまの日本にはないのだ。
麻生首相は「外交の麻生」と呼ばれている。誰が言い出したのか知らないが、現時点では、それほど外交巧者とは認めがたい。
にもかかわらず、サミットはもう始まっている。この2年間の悲惨な日本の政治リーダーのイメージを払拭するためにも、麻生首相には、その実態はなくとも、「外交の麻生」と誇れる存在感と成果をみせてほしいものだ。
(詳しいリポートは、来週発売の「週刊文春」誌上に)
http://diamond.jp/series/uesugi/10085/
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