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2009年6月23日 (火)
それでも日本郵政西川社長を解任すべき理由
依然として焦点は麻生首相が7月2日の衆議院解散を決断するのかどうかである。麻生首相が自分の手で信を問うタイミングはこれが最終期限であると思われる。麻生首相が解散を決断しない場合、自民党は総裁選の前倒しに動くだろう。
麻生首相側近の菅義偉(すがよしひで)氏は麻生首相による解散決断を阻止するべく行動していると考えられる。菅義偉氏は日本郵政西川社長続投と、麻生首相による衆議院解散封殺を至上命題としていると考えられる。
麻生首相は自分の手で衆議院を解散し、8月30日ないし9月6日総選挙の日程を想定していると見られるが、7月12日の都議選後に麻生おろしの突風が吹くことは確実だと思われる。
日本郵政西川社長更迭問題は結局、西川社長の続投で決着した。「かんぽの宿疑惑」で表面化した「日本郵政私物化疑惑」により、日本郵政取締役一掃が必要だったが、小泉純一郎氏−中川秀直氏−竹中平蔵氏−菅義偉氏−石原伸晃氏の「郵政××化ペンタゴン」の強引な横やりにより、事態は転覆された。
田原総一朗氏−竹中平蔵氏−大谷昭宏氏−高野孟氏−財部誠一氏の「サンプロペンタゴン」と「郵政××化ペンタゴン」が直結していることも、「かんぽの宿疑惑」が鮮明に映し出した。
副島隆彦氏が指摘されるように、鳩山総務相の主張を後押しした読売・渡邉恒雄氏の裏側にD.ロックフェラー=シティの意向が働いていたことは事実であると思われる。ロスチャイルドVSロックフェラーの代理戦争の側面が存在することを見落とすことはできない。
しかし、三井住友=ゴールドマンによる日本郵政私物化・米営化を容認することはできない。
「かんぽの宿」疑惑の本質を探る淵源は2002年12月11日の密会にある。5月23日付記事
「日本郵政西川社長続投論を覆う黒い霧」
の記述を転載する。
「二つの視点から問題を見つめる必要がある。
第一は、竹中平蔵氏と西川善文氏の個人的な接点において決定的に重要だと考えられる出来事が、2002年12月11日の密会であることだ。この日まで、西川氏は反竹中金融相の急先鋒(きゅうせんぽう)と言える存在だった。
ところが、12月11日の密会を境に、西川氏は竹中氏との蜜月時代に移行した。この密会こそ、秘密を解く鍵を握る。
第二の視点は、菅義偉氏が2005年11月に総務副大臣に就任し、その後、2006年9月に総務相に就任した事実である。2005年11月は竹中氏が総務大臣に就任した時期である。竹中氏は「郵政民営化」=「郵政私物化」=「郵政米営化」プロジェクトを実行するパートナーに菅氏を選任したのだと考えられるのだ。
第一の視点について内容を補足する。この会合は、米国投資銀行ゴールドマン・サックスのCEOであるヘンリー・ポールソン氏、同COOであるジョン・セイン氏と、西川善文氏、竹中平蔵氏の4名による密会であった。
この後、ゴルードマン・サックスは三井住友銀行に5000億円のファイナンスを実施した。三井住友ファイナンシャルグループは、このファイナンスを契機に、限りなくゴールドマン・サックスの影響を受けることになる。
このことについて、読売新聞の渡邉恒雄氏は『文藝春秋』2009年1月号に、次のように証言している。
「僕は竹中さんから直接聞いたことがあるんだが、彼は「日本の四つのメガバンクを二つにしたい」と明言した。僕が「どこを残すんですか?」と聞くと、「東京三菱と三井住友」だと言う。あの頃はまだ東京三菱とUFJは統合していなかったんだが、「みずほとUFJはいらない」というわけだ。どうして三井住友を残すのかというと、当時の西川善文頭取がゴールドマン・サックスから融資を受けて、外資導入の道を開いたからだと言う。「長銀をリップルウッドが乗っ取ったみたいに、あんなものを片っ端から入れるのか」と聞くと、「大丈夫です。今度はシティを連れてきます」と言った。今つぶれかかっているシティを連れてきて、日本のメガバンクを支配させていたらどうなったか、ゾッとする。」
(この部分は「文藝春秋」からの引用)
三井住友グループによる日本郵政支配は、その裏側にあるゴールドマン・サックスによる日本郵政支配の図式のなかで捉えなければならないのだ。これが第一の視点である。
第二の視点は、菅義偉(すがよしひで)氏の役割である。
菅氏は2006年9月に総務相に就任し、翌2007年3月に日本郵政公社総裁の生田正治氏を解任している。生田氏を排除して、西川氏による日本郵政公社支配を生み出した。西川氏は日本郵政公社総裁職を兼務したのちに、2007年10月に発足した持株会社としての日本郵政社長に就任した。
日本郵政はこれまで指摘してきたように、財界による日本郵政私物化を絵に描いたような人事を実行した。日本郵政プロパー職員、日本郵政サービス利用者、生活者が取締役に一人も登用されない、異様な姿での出立であった。
また、日本郵政公社時代の日本郵政保有不動産のバルク売却の不透明性も表面化している。旧郵政公社時代の所管大臣が竹中平蔵氏と菅義偉氏である。」
また、6月15日付記事
「内閣支持率急落・西川社長続投反対の世論調査」
に以下の記述を示した。
「2002年12月11日の密会は重要である。6月14日付記事から、重要事項を転載する。
「2002年12月11日、ゴールドマン・サックスのCEOヘンリー・ポールソン氏、COOジョン・セイン氏、三井住友頭取西川善文氏、金融相竹中平蔵氏が東京で密会した。
この後、ゴールドマン・サックスから三井住友銀行に対して、2003年1月に1500億円の普通株への転換権付き優先株出資、2月に3500億円の優先株出資が行なわれた。
ゴールドマン・サックスの1500億円優先株には4.5%の配当利回りが付与された。当時、みずほ銀行が実施した優先株資金調達での配当利回りは2%であったから、4.5%の利回り付与は法外なものだった。
三井住友銀行がなぜ、このような国辱的な条件を付与するのか、金融市場ではさまざまな憶測が飛び交った。
仮の話であるが、竹中金融相が三井住友を破綻させないことを保証していたとすれば、大筋の説明を付けることができる。
@三井住友は高いコストを払うが、銀行存続の確約を手に入れる
Aゴールドマンは三井住友の破たん回避を保証されるとともに、法外に高い利回りを確保する。
B竹中平蔵氏は両者から「感謝」される。
これを「三方一両得」と言う。
「郵政民営化」は、「ゴールドマン−竹中氏−西川善文氏−三井住友」の図式の中で推進されているプロジェクトと見るべきだろう。」
西川社長の行動は三井住友銀行に損害を与える行動であった可能性がある。
竹中平蔵氏がどのように「感謝」されたのかも問題になる。」
さらに、本ブログ5月1日付記事
「かんぽの宿不正売却で西川善文氏引責辞任へ」
などに記述したように、
@郵便局会社が取り扱う第三分野保険で、アフラックのがん保険とともに住友生命の医療保険が選ばれたこと
A変額個人年金保険で、住友生命、三井住友海上メットライフ生命が選ばれたこと
Bゆうちょのカード事業で、三井住友カードが選ばれたこと
C従業員持ち株会の幹事証券業務に大和証券SMBCが選ばれたこと
など、日本郵政が三井住友ファイナンシャルグループを優遇してきたとの疑いを裏付ける事実が明らかにされている。
これ以外に
Dメリルリンチ日本証券が不自然な選考過程を経てアドバイザーに選任された疑惑
E「かんぽの宿」売却に際し、社宅9件が簿価を下回って売却されようとした問題
F博報堂とのCM関連一括契約に関する疑惑
Gメリルリンチ日本証券が3回にわたって「かんぽの宿」売却凍結提案をしたのに無視された問題
などが指摘されている。
また、住友グループ企業関係者が日本郵政グループ幹部に多数配置されている。
日本郵政
執行役副社長 寺阪元之(元スミセイ損保社長)
常務執行役 妹尾良昭(住友銀行、大和証券SMBC)
郵便局
代表取締役社長 寺阪元之(元スミセイ損保社長)
専務執行役 日高信行(住友海上火災)
常務執行役 河村 学(住友生命保険)
ゆうちょ銀行
執行役副社長 福島純夫(住友銀行、大和証券SMBC)
常務執行役 向井理奇(住友信託銀行)
常務執行役 宇野 輝(住友銀行、三井住友カード)
執行役 村島正浩(三井住友銀行)
また、日本郵政取締役および指名委員会委員を下記に再掲する。
日本郵政取締役
代表取締役 西川 善文(にしかわ よしふみ)
代表取締役 高木 祥吉(たかぎ しょうきち)
社外取締役 牛尾 治朗(うしお じろう)
ウシオ電機株式会社代表取締役会長
社外取締役 奥田 碩(おくだ ひろし)
トヨタ自動車株式会社取締役相談役
社外取締役 西岡 喬(にしおか たかし)
三菱重工業株式会社相談役
社外取締役 丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)
伊藤忠商事株式会社取締役会長
社外取締役 奥谷 禮子(おくたに れいこ)
株式会社ザ・アール代表取締役社長
社外取締役 高橋 瞳(たかはし ひとみ)
青南監査法人代表社員
社外取締役 下河邉 和彦(しもこうべ かずひこ)
弁護士
日本郵政の指名委員会メンバーは以下の通り。
委員長 牛尾 治朗(うしお じろう)
委員 西川 善文(にしかわ よしふみ)
委員 高木 祥吉(たかぎ しょうきち)
委員 奥田 碩(おくだ ひろし)
委員 丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)
「かんぽの宿」売却先決定は、西川社長直属の特命チームが担当した。このラインは以下の通り。
日本郵政取締役代表執行役社長 西川善文
同専務執行役 横山邦男
同執行役 伊藤和博
「かんぽの宿疑惑」は2400億円を投じ、時価が1000億円規模の国民財産を不正な方法で、オリックスに100億円で横流ししようとした巨大経済犯罪疑惑である。
田原総一朗氏は、「27社による価格競争入札」であったかのような主張を展開するが、実態は「27社による価格競争入札」とはかけ離れたものであった。国会審議でこの点は明らかにされている。国会審議で明らかにされている事実を「27社による価格競争入札でオリックス不動産が最高値を入れた」かと思わせるように説明するところに、田原氏の説明の「歪み」が表れている。
「かんぽの宿」の簿価引き下げは2006年3月期決算から始まった。2005年10月の立法で「かんぽの宿」売却が決定されたことを受けての措置であったと考えられる。
「週刊ポスト2009年3月13日号」に掲載された「かんぽの宿79施設」の簿価の推移を以下に記載する。
2003年4月 1726億円
2004年3月 1620億円
2005年3月 1535億円
2006年3月 672億円
2007年3月 326億円
公社閉鎖時 129億円
2008年3月 125億円
2008年9月 123億円
オリックスへの売却に向けて、簿価を1500億円から強引に129億円に引き下げたとの疑惑が濃厚に存在する。
簿価を129億円に引き下げた「承継財産評価委員会」では、オリックス出資会社の取締役を務める奥田かつ枝氏が中心人物として関わったことも明らかにされている。
「かんぽの宿」79施設は固定資産税評価基準が857億円、時価では1000億円を下らない物件と見られている。
安値入札の最大の根拠とされているのが「年間40〜50億円の赤字」なのだが、この数字の「怪しさ」が明らかになっている。「かんぽの宿」が2009年に10億円の黒字になるとの日本郵政資料が発見されているのだ。
また、3200人の雇用維持条件があり安値落札になったと言われるが、雇用維持条件は、3200人の中の620人の正規社員のなかの550人について、1年だけ雇用条件を維持するというものだった。施設の転売規制にも抜け穴条項が用意されていた。
1000億円の資産を100億円でオリックスに横流しするプロジェクトが進行していたと見なさざるを得ない状況証拠が数多く浮上している。
「サンプロペンタゴン」はこれらの疑惑に対して、まったく説得力のある反論を示していない。
西川社長一派を日本郵政から追放し、国民の視点から日本郵政を適切に運営する新経営陣を日本郵政に送り込まなければならない。その際、重要なことは日本郵政プロパー職員から清廉潔白で有能な人材を幹部に登用することである。
これは「天下り」ではない。組織の幹部への人材登用は、基本的に「プロパー職員からの登用」を基礎に据えるべきだ。外部からの色のついた民間人を登用することが今回の日本郵政のような事態を招く原因になる。
政権交代実現後の新しい人事体制について、いまから準備を進める必要がある。
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