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ネットを活用して政治腐敗の撲滅を目指すある取り組み （日経ビジネス：シリコンバレー通信・瀧口範子）
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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090618/1016105/?set=ml
シリコンバレー通信（瀧口範子）
ネットを活用して政治腐敗の撲滅を目指すある取り組み
2009年6月18日
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政治腐敗撲滅に、インターネットはどう使えるのか。そんなことに取りかかっている組織がある。「チェンジ・コングレス（CC）」だ。
CCはつい2年ほど前に設立された組織だが、先日ある快挙を成し遂げた。ネブラスカ州のある議員が受け取った政治献金が、彼の政治的立場を左右していることを突き止め、それをインターネットやダイレクトメールを使って有権者に広めて世論を動かし、ついにその議員が実質的に降参するところまで追いつめたのである。
ことはこんな具合に進んだ。
ネブラスカ州出身の民主党議員、ベン・ネルソンは、オバマ大統領が提出した公的医療保険オプションを盛り込んだ改革法案に反対の表明をしていた。法案は、現在のような保険会社が主導する保険では非加入者が増えるばかりで、それを政府による保険制度を作ることでカバーしようというもの。
だが、保険業界にとって公的保険は市場競争を起こして自分たちの立場を不利にするものでしかない。ネルソン議員は複数の保険会社から200万ドル（約2億円）の政治献金を受けていたことが判明したのだが、つまりは献金にすっかり取り込まれていたというわけである。
そこへ、CCが登場する。CCは1万ドル（約100万円）をかけてインターネット広告を展開し、このからくりを公開。さらにネブラスカ州内の民主党支持者ら3000人にダイレクトメールを送って、この事実を伝えた。
さらにこの動きは、AP通信やフォーブス誌、その他地元新聞などに広く取り上げられ、火はどんどん拡大。ついには、ネルソン議員側に「公的保険オプションに賛成することがあり得る」とまで言わしめたのである。しかも、そこまでかかった時間が10日あまり。インターネットはやっぱり速いのだ。
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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090618/1016105/?P=2&set=ml_a
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CCを創設したのは、元スタンフォード大学法科大学院教授のローレンス・レッシグと、政治コンサルタントのジョー・トレッピ。レッシグは、極度な著作権保護が革新を妨げるとして、作者が自分で著作権保護の形を選択できるクリエイティブ・コモンズ（こちらもCC）という枠組みを提案して、これをインターネットで広げた人物である。
ほぼ10年間、クリエイティブ・コモンズに携わってきたレッシグは、今度は矛先を政治に変えた。インターネットに集う衆智のテコの力を使って運動を起こし、政治の奥深くに巣食う腐敗をやっつけようというのである。そもそも、クレエイティブ・コモンズを推進していく中で、著作権が必要以上に長期間にわたって保護されているのは、利益団体から出る献金が政治家を動かすという腐敗を呼んでいるからだと知ったのが、活動の標的を次へ進めた理由である。
CCは、昨年の大統領選挙期間中は、全米の議員に呼びかけて、同サイトのフォーム上に不当な「政治献金を受けない」ことをひとりひとりに公言させていた。何よりも、レッシグ自身が議員として出馬するのではないかという、ぎりぎりのところにまで来たほど、すごい勢いで政治に取り組んでいる。彼は今秋から古巣のハーバード大学法科大学院に戻る。行動派教授のレッシグは、テクノロジーのシリコンバレーよりも、政治の求心地、東海岸を選んだというところである。
CCは、一般有権者からの寄付金で活動を成り立たせていて、そのためにもインターネットを利用している。すでに次の標的として、ルイジアナ州出身の民主党議員マリー・ランドリューを定めているが、何と彼女も同じ保険会社から政治献金を受け取り、公的医療保険オプションに反対しているのだ。
ウォッチドッグがインターネットへ移行して、速度も影響力もアップした。おもしろいことになってきたのである。
(瀧口 範子＝ジャーナリスト)
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