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<09.06.18> 生命倫理会議 衆議院A案可決に関する緊急声明 <石塚正英>
<いしづか・まさひで:生命倫理会議>
本日(6月18日)の午後、衆院本会議で臓器移植法改正案の採決が行われ、A案(脳死=人の死)が可決されました。麻生太郎氏はA案に反対票を投じ、民主党の鳩山由紀夫氏、公明党の太田昭宏氏も反対票を投じました。自民党の小泉純一郎氏、民主党の小沢一郎氏は賛成票を投じました。
ところで、私は、生命倫理会議(代表:小松美彦)のメンバーとして、本日、厚生労働省の記者クラブで7名による緊急声明を行いました。その要点のみ、以下に列記します。
1)今回の採決は現行「臓器移植法」の法改定条件を遵守しなかった可能性がある。
現行の「臓器移植法」では、「法律の施行状況を勘案し、その全般について検討が加えられ」ることが法改定の大前提である(附則第二条、下線部引用者)。しかも、これまでの81人の脳死判定と臓器摘出には、法律・ガイドラインなどに対する違反のあった疑いが残る。この点を精査・検討しないまま衆議院は採決を行った。あまつさえA案では、法的脳死判定後の脳死者は死者となる以上、脳死者の生存権が守られる見込みはなく、そのことは幼い子供にまで及ぶことになる。
2)WHOの新指針に何が書かれているかが確認されず、虚報を背景にA案が可決された。
巷間で喧伝されているのとは異なり、WHOの新指針には「海外渡航移植の制限」や「移植臓器の自給自足」の方針は謳われていない。それどころかA案は、WHOが求めている「未成年の保護」や「法的に無能力な人の保護」に反する恐れがある。そのうえA案は、臓器提供の際の「本人同意」さえ不要としている。これは現行法の基本理念の改廃であり、もはや「見直し」ではなく「新法制定」と言わざるをえない。
3)そもそも「脳死=人の死」であるとは科学的に立証できていない、という事実が直視されなかった。
近年では移植大国のアメリカにおいてすら、有機的統合性を核とする「脳死=人の死」という論理は破綻したと認めざるをえなくなってきている。この点で、体温を保ち、脈を打ち、滑らかな動き(ラザロ徴候)を見せ、成長し続ける脳死者を「死人」とすることに、少なからぬ人々が違和感を覚えるのは、単なる感情の問題ではなく、非科学的なことでもない。A案を支持された国会議員諸氏は、この事実をいかほどに直視されたのか。
4)このままでは、「人の死」を国会議員だけが多数決で決定することになる。
従来の日本には、人の死を規定した法律は一切ない。しかも、長期脳死者とその家族の真の姿を知ることもないままに、また臓器移植の延命効果等に関する科学的なデータもないままに、いかにしてドナーを増やすかということばかりを考え、衆議院は「脳死=人の死」と規定したA案を可決した。参議院もこの姿勢を踏襲するなら、国会議員だけで全国民の生死を多数決で決定することになり、暴挙といわざるをえない。
5)ドナーを増やすことが国民全体への責務に反することにはならないか、という問題を熟慮されたのか。
「臓器不足」とは「脳死者不足」にほかならない。しかも交通事故が減り、救急医療体制が再建・整備されれば、「脳死者」もまた減ることが予想される。国民が安全に、安心して暮らせる社会を実現することは、政府および国会が果たすべき本来の務めであるはずだが、それは「脳死者=ドナー」を増やすこととは両立し難い。A案はこの矛盾を最も露呈したものに他ならない。
6)移植に代わる医療の存在が調査されず、国によるその援助が審議されなかった。
現在、移植適応とされる拡張型心筋症の乳幼児にペースメーカー治療が始められているという。移植をしなくても助かる道が開かれつつある以上、第一により多くの患者・国民がその恩恵に与れるような施策が講じられるべきであり、また「臓器不足の解消」という目標自体が再考される必要があった。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye630:090618〕
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