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日本原子力研究開発機構は、海水中に溶けたウランを効率よく回収する技術の確立を目指す。すでに放射線グラフト重合法を用いた補集システムのコスト評価を終了しており、今後は実用化を視野に入れた技術開発を進めたい考え。政府は08年3月に海洋基本計画を策定し、自国の排他的経済水域(EEZ)内でのエネルギー・鉱物資源開発を積極的に推進している。日本発の技術でウランを自国のEEZ内で確保できる意味は大きそうだ。
海水の中には77の元素が溶け込んでいるといわれており、海水1トン中のウラン含有量は3.3ミリグラム。全世界の海水には鉱山ウランの1千倍にのぼる45億トンのウランが眠るとされている。日本海流(黒潮)が運ぶ海水中にもウランが520万トン含まれると推定され、この中の約0.2%を回収できれば、日本の年間需要量の約8千トンを満たせる計算になる。
海水ウランの補集技術の研究の歴史は古く、1960年代からに含水酸化チタンを用いた捕集材の開発が進められたが、捕集には一旦海水をくみ上げる必要があり、ポンプ動力のコスト高から実用化に至らなかった。
その後、80年代に従来の課題を解決する放射線グラフト重合法が開発された。ポリエチレン製の不織布に電子線を照射することで炭素と水素の結合を断ち切り、切れ目に反応試薬を加えることで、ウランなどの金属の補集機能をもつアミドキシム基を接ぎ木(グラフト)状に連ねるのが特徴だ。
むつ関根浜(青森県)で布状、沖縄県恩納村沖合でモール状の捕集材の性能評価試験を進めた結果、海水温が温暖な沖縄の方がウラン回収率が高いといった知見を獲得。沖縄での試験結果から、年間1200トンのウランを捕集した場合のコスト評価を実施した。補集材1キログラム当たりのウラン回収量は約4グラムで、捕集材は8回の繰り返し利用が可能とし、補集材製造をはじめウラン回収、溶離・精製コストを含めた総コストは3万2千円になるとした。
現在の1トン=約50ポンドのウランのスポット価格との間ではまだ大きな開きがあるものの、この技術を突破口にウランの自主開発の可能性を開く意味は大きい。原子力機構は一層の補集性能の向上や、バナジウムなど他の金属とのマルチ捕集技術を付与することで素材の付加価値を高める戦略を考えている。
原子力機構によると、海水ウラン回収の実用化研究には新規捕集材の開発および実証試験で90億円の費用が必要になるとし、実用化は研究開始後7年後を見込むという。
一方、政府の海洋基本計画では今のところレアメタルの宝庫といわれる「海底熱水鉱床」や、メタンハイドレートの開発が優先され、海水ウランの回収は重点テーマから外れている。同技術の進展は、国が施策として海水ウランの回収をどう位置づけるかがカギを握りそうだ。
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