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≪就任8カ月見るものなし≫
この8カ月の麻生太郎首相の政治を見ていると、首相の資質、見識を疑うようなことばかりだ。小沢一郎氏の“西松事件”をきっかけに、政党支持率は逆転して自民党が民主党を上回ることになった。麻生首相はひと息ついた趣だったが、この間「次の衆院比例代表はどちらに投票するか」の設問では、常に民主が自民を10ポイントも上回っていた。このことは国民の政治改革願望がずっと続いていたことを物語る。しかし小沢氏の金権体質は許せないとの感情が勝って自民党支持を押し上げた。小沢氏が辞任し、鳩山由紀夫氏が新代表に選出されたとたん、政党支持率は逆転した。
小沢氏は代表代行として依然として選挙を仕切る役割を担っているのに、国民の支持は民主党に戻ってきた。国民は小沢氏の不始末は司直の問題であって政治の本質ではないと見抜いているのだ。麻生氏も含めて自民党は「カネと政治」の問題を衝(つ)くだけで態勢挽回(ばんかい)が図れるとでも思っているのか。実に情けない政党だ。
麻生内閣が8カ月やるならその間に歴史に残る大改革をやる時間はあった。安倍内閣に始まる公務員制度改革だ。この改革を出発点に渡辺喜美前行革担当相がまとめた公務員制度改革基本法は昨年の国会で自民、民主両党の合意の下で成立した。麻生内閣はそれを仕上げる使命があったのだ。
≪二転三転した人事局長職≫
国民の公務員に対する不満は極めて強い。最大の行政犯罪といわれる年金記録問題。3000人に及ぶC型肝炎患者の発生。農水省の事故米処理のインチキ。どれをとっても日本の官僚内閣制の耐用年数が尽きたと思わせるものばかりだ。現行制度の結果、天下り法人は4600、天下り官僚は2万8000人も存在する。
最近も公用車運転業務を談合で天下り法人に入札させていたとして、公正取引委員会が国土交通省に改善要求を出し、法人10社に30億円の課徴金を科した。この種の事件はここ二、三十年枚挙にいとまがない。官僚の肩叩(たた)きシステムを廃止しない限り、未来永劫(えいごう)続くのだ。
このため「基本法」は(1)キャリア制度をやめ、肩叩きもやめて定年まで勤められるようにする。そのためには年功序列の賃金制度を改める。(2)各省の幹部人事を内閣人事局に一元化して、省益至上主義を排除する−と決めた。
明治26年に高等文官試験が導入されて以来、116年ぶりの大改革だ。官僚は大反発したが、法案は衆院480人中450人の賛成で成立したのである。国会は国権の最高機関(憲法41条)であり、これに行政府の官僚が反対することは許されない。
ところが、賃金体系の権限を内閣人事局に移すことについて谷公士人事院総裁は反対し、首相が招集した会議をボイコットした。さらに基本法では「内閣人事局長は官房副長官級のポストを新設する」とあるのに漆間巌官房副長官は麻生首相に「ポストの新設は行革に反する」と進言し、自らが兼務する方針を打ち出させた。官房副長官は各省の政策を調整する大きな権限を持つ。この上に各省の幹部人事を左右する権限を持たせれば、確実に総理大臣を上回る権限を持つことになる。
甘利明行革担当相はさすがにまずいと思ったのだろう。「新設の国家戦略スタッフ(約30人)の一人に内閣人事局長を兼務させる」との妥協案を示した。ところが今度は宮崎礼壹法制局長官が「スタッフがラインの局長職を兼務することはできない」と妥協案をつぶし、漆間官房副長官の兼務に持って行ったのである。スタッフとラインの兼務などは防衛省では堂々と行われている。こうして安倍、福田2代にわたって仕上げてきた基本法は完全に骨抜きにされた。
≪「無責任体制」も糺されず≫
麻生首相はこの官僚制度の改革を「官僚バッシング」と断定しているが、勤務評定や昇給、降格なしに、どうすれば組織が活性化し、無責任体制が糺(ただ)されるのか。
一方で首相は厚生労働省を二分割する案に一旦は乗った。官僚は次官ポストが一つふえて喜ぶ。とすればなぜ内閣人事局長ポストの新設にあれほど反対したのか。2代にわたって進めてきたのは官僚制度(システム)の改革であって、首相が議論しようとしたのは器の話に過ぎない。首相は議論のすり替えをやろうとしたのだ。
政府は2009年度予算に15・4兆円の補正をつけてきた。このうち各省や独立行政法人の「施設整備費」を見ると、当初予算6500億円に対して、何と2兆9000億円も積み増している。この施設整備費というのは官僚の大好きなハコモノだ。職業能力開発協会に7000億円の基金を設けたが、この協会は傘下団体とともに会計検査院から「コンパニオン代など3500万円の不正支出があった」と指摘された団体だ。
鳩山民主党代表は(1)脱官僚(2)地域主権−を打ち出している。統治機構を変えるべき時期に、麻生首相の感度は恐ろしく鈍い。(ややま たろう)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090605/plc0906050309000-n1.htm
※補足
屋山太郎は渡辺喜美の応援団。
一部で「奥山は小沢寄りに転向したのか」なとど指摘されたが、
実際には「寄り」云々という次元ではなく、是々非々で善し悪しを判断してるだけだろう。
李明博大統領のように二項図式に捕らわれない、実用主義的な保守主義者といったところか。
そういう奴もいるさ。
「保守派=悪」とか「○○寄り=悪」とかいうのは、いい加減、止めよう。
小学校の学級会じゃあるまいし。
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