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大久保隆規氏保釈実現と西松事件の本質(植草一秀の『知られざる真実』)
http://www.asyura2.com/09/senkyo64/msg/209.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 5 月 27 日 14:03:26: twUjz/PjYItws
 

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-11b1.html

2009年5月27日 (水)
大久保隆規氏保釈実現と西松事件の本質


すでに「カナダde日本語」様、「晴天とら日和」様などが詳しく伝えて下さっているが、3月3日に政治資金規正法違反容疑で逮捕された小沢一郎前民主党代表公設第一秘書の大久保隆規氏が昨日5月26日に保釈された。大久保氏は3ヵ月近くの長期間勾留からようやく解放された。


東京地裁の保釈許可決定に対して東京地検は準抗告して抵抗を示した。東京地裁が地検の準抗告を却下したことにより保釈決定が確定し、大久保氏は無事保釈された。


大久保氏は本当に巨大な理不尽、不条理によく耐えられたと思う。テレビカメラ映像は人権への配慮を欠いているが、それでも、お元気そうな様子を知ることができ、多くの支援者の皆様とともに保釈実現を喜びたいと思う。


日本の警察・検察行政の真実を実体験として知る方がまた一人増えたと思うが、このことにより数百万人、あるいは数千万人の方が、重要な「知られざる真実」に目を向ける機会を得たと思う。大久保氏の受難を日本刷新のひとつの原動力にしてゆかねばならないと思う。


身体の自由は基本的自由の最も根源的なものである。検察は「逃亡の恐れ」や「罪証隠滅(ざいしょういんめつ)の恐れ」を理由に、長期勾留を求めるが、一方で、法律の条文に照らして明らかに罪を犯しており、さらに本人も罪を認めている事案であるのに、逮捕しない、起訴しない、などの事例が散見される。


つまり、日本は厳密な意味での法治国家ではない。警察、検察当局に刑事事件の取り扱いに関する「巨大な裁量権」が付与されている。この「裁量権」こそ、警察、検察権力の「巨大利権」、「巨大権力」にほかならない。


拙著『知られざる真実−勾留地にて−』第一章「偽装」第7節「摘発される人・されない人」にもこの問題に関する事例を記述した。「摘発される人・されない人」を振り分ける基準に「政治的要素」が存在することは間違いない。


警察・検察権力に「巨大な裁量権」が付与され、この警察・検察権力が政治的に利用されるなら、日本は「秘密警察国家」、「暗黒警察国家」になる。


大久保氏が逮捕、起訴された事案は、政治資金収支報告書に虚偽の記載をしたということが摘発されたものだが、元長崎地検次席検事の郷原信郎名城大教授が指摘するように、完全に公正さを欠く摘発事例である。


要点を整理すると、


@政治資金規正法は「寄付行為者」を記載することを求めており、大久保氏は「寄付行為者」である二つの政治団体の名称を記載した。


A政治団体が「ダミー団体」で、実際に政治献金を行なったのが西松建設であり、政治団体名を記載したことが「虚偽記載」にあたるとするなら、多くの自民党議員の政治資金管理団体も摘発されなければおかしい。


B小沢氏の政治資金管理団体の受け入れた政治献金が突出して大きいと指摘されるが、摘発された政治献金額は3500万円であり、地検が内規としている1億円を大幅に下回り、小沢氏の資金管理団体だけを摘発する正当な根拠にならない。


C政治資金規正法が定めていることは、「寄付行為者」を収支報告書に記載することであり、大久保氏はこの規定に則った報告を行なっていた。「虚偽記載」であるとするには、その政治団体が完全に架空の団体であることが必要だが、当該政治団体は、事務所住所を持ち、パーティー開催の実績を持つなど、「架空団体」と認定することは難しい。


D検察は大久保氏が政治資金の実際の拠出者が西松建設であることを認識していたことを摘発理由に掲げると見られるが、自民党議員の資金管理団体が寄付行為者の所在住所を西松建設本社所在地としている事例があり、このことをもって摘発するのは、「法の下の平等」に反する。


 企業から政治家個人に対する献金は禁じられているが、企業から政党支部への政治献金は認められている。たとえば、森田健作千葉県知事は企業からの政治献金を森田氏が支部長を務める自民党政党支部で受け入れて、その資金を同じ所在地で届け出ている森田氏個人の政治資金管理団体に移し替える「迂回献金」を実行している。


 小沢前代表が記者会見で説明したように、政治献金の実際の寄付行為者が西松建設であったなら、政党支部に対する献金として事務処理を行なえば良いのであり、このような事例では、これまで修正報告によって処理されてきている。


 企業献金において悪質であるのは、(イ)裏献金、(ロ)収賄、(ハ)あっせん利得、などの「汚職」の範疇(はんちゅう)に分類されるものであり、小沢氏の事例に限って摘発するのは、公正性、「法の下の平等」に反している。


 「カナダde日本語」の美爾依さんが、「日刊サイゾー」2009年4月16日号での鈴木宗男氏と青木理氏の対談を紹介しているが、このなかで、二つの重要事項が示されている。


 第一は「迂回献金システム」に対する検察の捜査姿勢に関する指摘だ。鈴木宗男氏による以下の指摘を「カナダde日本語」様から転載する。


「検察は今回、西松建設から政治団体を経て小沢サイドに献金されるお金の流れが、ダミーの政治団体を使った一種の「迂回献金」に当たるとしている。しかし過去、「日本歯科医師連盟(日歯連)事件」などで自民党の大規模な迂回献金疑惑が持ち上がった時、検察はメスを入れませんでした。「なのに今度は、それをなぜ今やるのか?」という疑問です。」


「日歯連事件では迂回献金先として、国家公安委員長である佐藤勉氏らの名前が挙がりましたよね。この件については、朝日新聞記者である村山治氏の著書『市場検察』(文藝春秋)に詳しく書かれています。同書の268ページには、「特捜部は、迂回献金システムを使って資金提供を受けた政治家をターゲットに据えた。その結果、浮上したのが、元厚生労働政務官の自民党衆議院議員、佐藤勉が国民政治協会経由で受け取ったとされる500万円の迂回献金をめぐる受託収賄疑惑だった。」


(ここまで転載)


 日歯連事件の場合は、「迂回献金システム」が「贈収賄」につながる、より悪質な事案だったが、検察は贈収賄の立件を見送った。


 第二の指摘は、西松建設をめぐる「迂回献金システム」に関して、かつて小沢氏の秘書を務めていた高橋嘉信氏が関与しているのではないかとの疑惑である。この点についての鈴木宗男氏の発言を同様に転載する。


「現在、私の知り得ているところでは、西松建設からの献金の枠組みは、大久保秘書の前任者である高橋嘉信氏(元衆議院議員/小沢氏の秘書を約25年間務めた)が作ったとされている。高橋氏は現在、岩手県自民党第4選挙区支部長で、次期衆議院選の立候補予定者でもあります。小沢代表の秘書だった人が、同じ選挙区で小沢氏と戦うというのだから、これは尋常な関係ではないでしょう。彼が検察に上申書を出しているという話もありますが、だとすれば、どのような情報を上げているのか。それが客観的な事実であるとは限らないはずです。」


 この点については、ジャ−ナリストの横田一氏が詳しく、『週刊朝日2009年5月29日号』に「今回の検察捜査はありえない」と題する記事を掲載されており、今回の事件報道で、報道各社が高橋嘉信氏の存在についてまったく触れないことの不自然さを指摘している。


 高橋嘉信氏は、かつて25年間も小沢氏の秘書を務めながら、次期総選挙で自民党公認候補として小沢前代表の地元である岩手4区から立候補することが予定されている人物である。この高橋氏が「迂回献金システム創出」に深く関与しているとの疑惑が存在するのである。高橋氏の関与につては、本ブログでも3月6日付記事
「国策捜査と情報操作がまかり通る暗黒国家日本」
をはじめ、繰り返し指摘してきた。


「迂回献金システム」が「悪」だとするなら、企業が政党支部に献金し、その資金が個人の資金管理団体に還流するのも、紛れもない「迂回献金システム」である。


また、内閣改造があると公共事業受注企業から新任大臣への献金が表面化するが、こうした献金も、献金を返却することなどによって事務的に処理されている。


つまり、法律は存在するが、その運用があまりにも不透明なのである。


制限速度60Kmの公道で、多くの車が60Km以上のスピードで走っていたとする。スピード違反の取り締まりに際して、80Kmや100Kmのスピードで走る車を見過ごしつつ、51Kmで通行する車を摘発する不自然さが存在するのだ。あるいは、40kmで走っているのに、55kmだと事実を捻じ曲げて摘発することすらあり得るのが現状である。


「摘発される人・されない人」の区分基準が「政治目的」であるとすれば、これは重大な問題である。


フランス人権宣言第6条、第7条から、該当部分を転載する。


第6条 法律は、保護を与える場合にも、処罰を加える場合にも、すべての者に対して同一でなければならない。


第7条 恣意的(しいてき)な命令を要請し、発令し、執行し、または執行させた者は、処罰されなければならない。


 フランス人権宣言の時代から、この問題は存在し、重大視されてきたのだ。


 「日本の民主主義の危機」は、
@警察・検察権力の「巨大な裁量権」
A政治権力による警察・検察権力の不正使用、
B政治権力によるマスメディア支配=「情報操作」
によって、もたらされている。


 野党が主張する取り調べ過程の全面可視化などの制度改革も急務である。西松事件では「立件の可否」ではなく「法の下の平等」、「適正な法の運用」の視点から問題を捉えることが不可欠である。

 

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