「無風国会」を突破し麻生政権打倒へ大衆運動の再組織化を「西松献金」に 蓋をした代表選 小沢一郎代表が西松建設の政治献金問題で辞任に追い込まれた民主党は、五月十六日に衆参両院議員による党首選を行い、ほぼ事前の予想通り鳩山由紀夫幹事長が岡田克也副代表を破って党首に選出された。鳩山新代表は、翌十七日に小沢前代表を選挙担当の代表代行に、代表選で敗れた岡田前副代表を幹事長に据えるという「挙党体制」の新人事を発表した。 小沢の公設第一秘書の逮捕は、支持率一〇%前後という決定的な窮地に追い込まれていた麻生・自公政権が息を吹き返す契機となった。依然として不支持率が過半数を超えているものの麻生政権の支持率は三〇%台を回復し、早期解散・総選挙に追い込んで政権交代を実現するとしていた民主党の国会での意気込みは急速に萎えてしまった。国会は異常な無風状態が支配し、十四兆円もの規模を持つ「緊急経済対策」としての〇九年度補正予算、さらにはグアム移転協定や「海賊」対策新法などの「米軍再編」・沖縄の新基地建設・海外派兵関連の法案の審議も与党ペースで進んでいくことになった。 五月十一日の小沢の辞任表明は、四面楚歌となった小沢が民主党への自らの支配的影響力を維持したまま、総選挙での「政権交代」の可能性をさぐるための追い込まれた最後の決断であった。このシナリオはすでに小沢秘書の起訴前の三月二十日に、小沢・鳩山・菅の三者の会合で、菅から持ち出されたものであった。菅はその時点で「選対本部長をやったらどうですか。党内で立場を確保する形で辞めたらいいと思います」と迫ったと報じられている(4月2日、毎日)。 実際、鳩山も岡田も、代表選においては西松建設献金問題における自民党田中派以来の小沢の政治家としてのあり方に蓋をしたまま、小沢の「功績」をたたえ、民主党内における小沢の支配的影響力に依拠することによってしか総選挙に臨むことができない、という判断を示すことになった。五月十七日の鳩山体制の新人事は、まさにそれ以外にありようのない民主党の姿を示したのである。 抵抗闘争の基盤 を拡大しよう 五月十六、十七両日に行われた毎日新聞の緊急世論調査によれば、この「小沢辞任効果」が一定の功を奏していることをも示している。五月十二、十三日の前回調査に比して総選挙で勝ってほしい政党は、との問いに民主党と答えた人は前回の四五%から五五%に上昇し、自民党は三四%から二九%に後退した。首相にふさわしいのは、との問いに鳩山民主党代表と答えた人が三四%に上ったのに対し、麻生との回答は二一%にとどまり、その差は一三ポイントにも達している。朝日新聞でも比例区の投票先は民主党が三八%(前回比6%増)、自民党二五%(前回比2%減)、麻生と鳩山のどちらがの問いでは麻生二九%、鳩山四〇%と、鳩山民主党に有利な結果が出ている(「朝日」5月18日)。 もちろんこうした世論調査の反応は、メディアの報道が民主党代表選にスポットライトを浴びせたことによる「ご祝儀相場」(自民党・細田幹事長の言)という側面もある。しかしこの民主党代表選の結果が、総選挙へのシナリオに一定の影響をもたらすことも確かだろう。 われわれは、国会審議の「空白の二カ月」を生み出した小沢・民主党の責任を改めて批判すると共に、この事態の中から浮き彫りになった「すべてを先送り」することで、結局のところ新自由主義や派兵国家と改憲という自民党の設定したレールに追随するしかなかった民主党のブルジョア政党としての現実を多くの人びとが認識していくための努力を強めていく必要がある。それと共に、二階俊博経産相への「西松献金」問題を結局のところ不問に付して小沢にターゲットを絞った恣意的な検察捜査とその政治的役割を追及していかなければならないのは当然である。 しかし、今まさに問われていることは、派遣法抜本改正を突破口にした戦後最悪の世界的大不況の中での貧困・失業・生活破壊に抗する闘いや、「米軍再編」と海外派兵の常態化、さらには憲法審査会の始動阻止などの改憲阻止の闘いを再組織していくことであり、こうした運動の積み重ねの中から資本主義の危機と正面から立ち向かうオルタナティブな左翼政治潮流の形成を手元に引き寄せていく意識的な努力である。 この困難な闘いを再度、一から掘り起こし、拡大する抵抗の機運と結びつきながら、総選挙での自公政権打倒を実現しなければならない。自公政権の打倒を労働者・市民にとっての新しい自立的な政治的空間の拡大に転化していくためにこそ、底辺からの運動の組織化と連携が必要であり、自民・民主の二大ブルジョア政党ブロックへの収れんにクサビを打ち込む新しい左翼政治潮流をめざす多角的な討論を作り出していく必要がある。 (5月18日 純)
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