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民意とのねじれ
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2009/05/post_190.html
最近の麻生総理は民主党の新体制を評して「民意とのねじれ」という言葉をしきりに使っている。マスコミの世論調査が「岡田新体制」を望んでいたのに、そうはならなかったことで、民主党は世論に背を向けていると国民にアピールしたいようだ。
しかし麻生総理がマスコミの世論調査を「民意」だと言うのなら、麻生政権は昨年末からずっと「民意とねじれっぱなし」である。世論調査で7割近い国民が麻生政権に「不支持」と答え、総理辞任を求めてきた。それを無視してきた事を麻生総理はどう説明するのだろうか。
私はマスコミの世論調査を「民意」と思うほどお目出度くはないので、7割の国民が「不支持」と答えても、それを鵜呑みに総理を辞める人間などこの世にはいないと思っていた。だから麻生総理が辞任せずにきた事を非難しようとは思わない。ただそういう状態を放置する事は日本の政治にとって好ましくない。何らかの手を打つ必要はあった。
何が最も必要かといえば、世論調査というインチキまがいの「民意」ではなく、選挙で示される本物の「民意」を聞くべきであった。ところが麻生政権は景気対策を理由に本物の「民意」から逃げ続けた。各国とも真面目に金融危機に対峙する中、日本だけは景気対策が選挙を先延ばしにする口実に使われた。「4段ロケット」とか言って景気対策をちびちびと小出しにしたため日本の景気は世界最悪となった。そのためかインチキまがいの世論調査でも不支持が圧倒的に大きくなり、政権交代が必至の情勢となった。
すると政権交代を阻止したい霞が関は「世論誘導」によって麻生政権の支持率回復を図る事を考えた。官僚権力には世論誘導に成功してきた数々の事例がある。戦前では自由民権運動の流れを汲む政党政治家、星亨や原敬に「金権政治家」、「利益誘導政治家」のレッテルを貼り、それを新聞に報道させて民衆の義憤を煽り、星も原も庶民によって暗殺された。
戦後にはロッキード事件がある。事件の中枢にいた自民党大物政治家は見逃され、総理を辞めたばかりの田中角栄だけが逮捕された。すると新聞とテレビは事件の真相解明を放棄して「田中的金権政治批判」に世論を誘導した。「田中角栄はアメリカの虎の尾をふんだ」とのデマがまことしやかに流され、一方で新聞とテレビは東京地検特捜部を「最強の捜査機関」と賞賛した。しかし検察の現場ではまともでない捜査に若手が不満を抱き、検事総長は「巨悪は眠らせない」と発言してなだめなければならなかった。ところが総長の発言とは裏腹に「巨悪」はその後も「眠ったまま」である。
いずれ歴史の審判を受ける事になるだろうが、ロッキード事件は官僚に都合の良い世論誘導には見事に成功した。それからは旧社会党を中心とする野党とマスコミ、学者らが官僚の意向を汲んで金権政治批判に力を入れ、政党政治の力を削ぐ事になる。政権交代を狙わない野党にとって政党が権力を握る必要はなかった。法案を議員が立法する力は抑えられ、政党は立法作業のほとんどを霞が関に頼るようになる。政治資金を集める事も難しくなり、政治家は官僚の力を借りて金を集めるようになった。
政治資金は透明性が大事で、金額の規制をしてはならないという民主主義の根本原理は忘れられ、金額の規制が正しいと考えられるようになる。政治資金規正法が次第に制約の大きい法律となり、大半の政治家は政治活動のために違法状態を余儀なくされ、首をすくめて摘発されない事を祈るような異常な状態となった。「大物政治家が一度逮捕されれば、次の逮捕まで10年は安全だ」などと言う政治家もいる。政界がまるでロシアン・ルーレットの世界になった。
「古い自民党からの脱却」と若手の政治家は言うが、昔の自民党政治家の方が官僚に対して力があった。その力を霞が関はひとつずつ削いできた。新聞とテレビが記者クラブという檻に入れられ、考える力を奪われたのと同じように、政治家も霞が関発の情報だけに頼って判断力を奪われてきた。最近の若手政治家は口では霞が関批判をして見せるが、本当に霞が関に頼らずに政治を続けられるかは疑問である。
政治の世界もメディアの世界も官僚の情報操作に従わざるを得なかったが、世の中は「平家物語」である。奢れる者は久しからず、諸行は無常である。成功体験はいつまでも続かない。これまで成功してきた情報操作の異常さが今では「あぶりだされる」ようになった。麻生政権の支持率回復のために打たれた乾坤一擲の「小沢秘書逮捕」が様々な「あぶりだし」を見せてくれている。
まずこの逮捕劇は、違法献金の捜査ではなく小沢氏の代表辞任を目的としていた。その証拠に政治家摘発に必要な検察首脳会議を開かず、小沢氏個人に対する家宅捜索も行なわれていない。そして逮捕直後から一斉に「小沢代表辞任」と「岡田新体制」を求める声が沸き起こった。代表さえ辞任すれば秘書の起訴は見送られるサインが出されたと私は思った。そして自民党と霞が関が小沢代表を嫌がり、岡田代表を歓迎した背景には政権交代を巡ってそれだけの理由がある事を示している。
当初権力側はこの工作を何人かの民主党議員にやらせようとした。それが思うようにいかないとマスコミの世論調査を利用して世論誘導を行ない、その影響で他の民主党議員をも動かそうとした。それでも岡田代表を実現する事が出来なかった。世論誘導が昔ほど上手くいかなくなってきた。そこで麻生総理に「民意とのねじれ」を言わせるようになった。しかし麻生総理に「民意とのねじれ」を言わせては元も子もない。それではせっかくの工作が逆効果になり、再び麻生内閣の支持率を下げる事にもなりかねない。とにかく麻生総理の「口は災いのもと」である。「漢字が読めない」のは大したことではないが、政治家が発する言葉は重いから、言葉で致命傷を負う可能性は充分にある。そして麻生総理にはこれまでも余計な事を言ってきた実績がある。党首討論を控えた時期に余計な事は言わせない方が間違いがない。
投稿者: 田中良紹 日時: 2009年05月21日 23:43
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